私にとっても鏡「鏡の孤城」(ネタバレあり)
2018年出版の本書をやっと読めました。
とはいってもこの小説を知ったのは映画化してからなのですが(笑)。
ストーリー展開は予想を良い方に裏切られて驚きでした。
あと、映画化の時のCMを見て、ファンタジーな内容が主となっているのかと勝手に思っていましたが、設定こそファンタジーですが、内容はとても現実的でした。
そして、1番印象的であったのは、主人公が登校拒否となったきっかけである人物の世界観と主人公の世界観がずっと平行線であったことです。
この小説では明らかにその人物が悪いのですが、その人物の価値観では、
「自分に非はない、なのに相手が私を侵してきたから攻撃しているのだ」
という認識なのです。ずっとそうなのです。
明確な罪悪感というものがないのです。
この人物の描写が恐ろしく、とても印象的でした。
しかし、同時にこういう人いるよなあと妙にリアリティーを感じてしまいました。
主人公はその悪意なき悪人に学校生活を奪われます。
悪い事をする人って世の中にはいろいろいますが、悪人って悪意に対して鈍感な人なんだということが、この人物描写では伝わってきました。
いろいろな映画や小説でヴィランは出てきますが、この人物はその中でもかなり上位の悪レベルです。まだ、バットマンのヴィラン、ジョーカーの方が精神構造はマシだと思います。
加えて、担任教師は教師という立場でありながら判断の客観性に欠けるのです。無知なのです。
あくまでも、その人物の主観にのみ視点を据えて主人公とその人物の関係性を判断するのです。
まるで悪と無知の最強タッグです。
なぜ、このような悪や無知が存在してしまうのでしょう。
私は、人が物事を判断する時にシェイクスピアの次の言葉をよく思い出します。それは、
「人は見たいことしか見ない」
です。
そうなのです。現実をありのままに見るというよりは、自分にとって都合の良い事に意識が行きやすいですし、都合の良いように解釈しやすいです。
・・・私もそうです。
今回のような登場人物が沢山出てくる小説の良いところは、同じ時間、同じ場所を共有した不特定多数の人々が、それぞれ感じ方や考え方が違うという事を再認識させてくれるところです。
ついつい、自分中心の認識になってしまうところを修正してくれます。
一方で今回のこの小説は、それと同時に「あなたの人生を生きろ」とも言ってくれます。
ちょっと医学的に言うと、
認知のズレを修正して、交感神経の「闘うor逃げる」の「闘う」の方にスイッチを入れてくれます。
やっぱり、小説って、物語って、自分で気付かせてくれるから良いなあと思いました。
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