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太陽のテノール

『パヴァロッティ 太陽のテノール』
ロン・ハワード監督
アマゾンプライムでロン・ハワード監督の『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK ‐ The Touring Years』を見たばかりだということもあって、同じ監督作品でジャンルは違えど「音楽物」、またデビューもビートルズと同じころのでもあるため、全体の年譜も含めて、並べてみるような気分で見れたので面白かった。
私はクラシックオペラの世界に詳しいわけではなく、3大テノールコンサートとパヴァロッティ&フレンズコンサートを見て、この太っちょ親父の声と表現力に面食らったのがきっかけで時折聴くようになった「にわかファン」なもので、オペラについての詳しいことはわからない。
ただ、パヴァロッティが世界のスターになってゆくさま、アメリカの1970年代以降のショービジネス、コンサート、エンターテイメントビジネスが、イタリアのオペラまで飲み込んで世界に向けて巨大化していく、その様子は見ていてため息が出る。
それでも、今年に入って新型コロナウィルスのパンデミックで時代が恐ろしいスピードで変化しているからなのか、巨大化したエンターテイメントビジネス、巨大化したコンサートビジネスの様子を、とても懐かしんでいるように見てしまっている自分がいることも気づく。
この映画のロン・ハワード監督は、調べてみたところアメリカの映画ビジネスの世界で生まれ育った人のようだ。
だからなのか、制作の現場の状況や現場の人たちの状況を大切に、常に愛情を持って見ている気がする。
そして、対象に対して斜に構えず映像を「楽しみ」ながら、既存のフィルムを選び、言葉を選び、整理整頓して、美しく穏やかな視線で組み立てているよう。
『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK』の時もそうだったけれど、なんとも穏やかな気分で見終わる。
このでは最新録音技術を使い、アビーロードスタジオで再録音したというパヴァロッティの歌声は、映画館でも声として「体感」できるような音に仕上がっていた。聞いててドキドキする。
デジタル技術というのはいろんな境界線をあやふやにしてゆく....
パヴァロッティは己に与えられた「歌声」と「歌う」ことですべてを許されてきた人
一度、聴いてみたいなって思っていた人には、おすすめの映画です。
この映画の中ではパヴァロッティ&フレンズのコンサートの映像はピックアップはされてはいなかったのだけど、制作で活用した最新録音再生技術で、パヴァロッティ&フレンズのコンサートで共演したジェームス・ブラウン御大との共演を聴いてみたい、と思いながら映画館を後にしたのであります。


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