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スカッとジャパン

それは、私が働いているコンビニで起こった出来事でした。

「いらっしゃいませー」

いつも通りレジの対応をしていると

「えーと、429」
「429?」
「429番。...タバコ。」
「あっ、すみません。かしこまりました。」

私は後ろを振り返り、タバコが陳列された棚に手を伸ばしました。
しかし、429番のタバコはありませんでした。
それもそのはず、この店にあるタバコの番号は2ケタまでしかないのです。

「申し訳ありません。当店に429番のタバコはありません。
銘柄はどちらになりますでしょうか?」
「はぁ、じゃあ君いいから。店長呼んできて」
「...はい。少々お待ちください。」

お客様の横柄な態度にたじろぎつつ、
私はバックヤードで売り上げを打ち込んでいた店長を呼びました。

「すみません、お客様が店長を呼ぶようにと」
「え?何かあったの?」
「いえ、429番のタバコが欲しいと」
「ああ。了解了解。大丈夫。」

店長は椅子から立ち上がって、私の肩をポンと叩きました。

「そろそろ休憩でしょ。勤勉なのは助かるけどさ。」

そう言ってレジへ向かった店長の顔がやけに朗らかなのが妙でした。

そのわずか数秒後のことです。
鼓膜をはち切るような銃声が2発、店内に響きました。

刹那に浮かんだのは、さっきの笑顔でした。

「店長!!」

レジへ走りながら、私は何か合点がいったような気がして、
同時に気がつくのに遅れた自分を呪いました。

「店長!!」

そこには、店を埋め尽くすほど大きな蛇がいました。

「イニシエーションだよ」
「・・・?」
「熟れた洋梨が枝木から落ちるのを、君はどうして見過ごせる?」

先ほどの客はそう言って、血まみれた体を引きずるように店の出口へ向かいましたが、大きな蛇の口がかぱりと開き、その男をまるごと飲み込んでしまいました。

大きな蛇はぐるりと首を回し、私の方を向きました。

「私も連れてって」

私は大きな蛇の上にまたがり、ゆっくりと店を後にしました。

いやに空気の澄んだ、寒い夜の話でした。



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