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中東生:【特別インタビュー】グラスホッパークラブチューリッヒ 川辺 駿選手


川辺駿選手 ©︎中東生

創設1886年という長い伝統を誇るチューリッヒのサッカークラブ、グラスホッパーで今季から日本人選手が活躍しているという情報を得て、本拠地のNiederhasli まで取材に行って来ました!

彼の名は、川辺駿(はやお)、26歳。サンフレッチェ広島の頭脳と言われた男。やっぱり実際にお会いしてみると、落ち着いた好青年。チームメイトが彼の側を通り過ぎながら、「みんなハヤオを愛してるって書いて!」などとアピールする仲の良さ。でもここに到達するまでには苦労もあったようだ。

「広島に生まれて、サンフレッチェ広島の選手を見ながら育ち、物心ついた時には、プロのサッカー選手になりたいと夢見るようになっていました。そして、いつかはヨーロッパの、誰もが注目するチームでプレイできるようになりたいと思いながら頑張っていたので、日本代表に選ばれ、今回グラスホッパーからオファーをもらった時は率直に嬉しかったです。 

 チューリッヒというと、治安が良くて自然や街が綺麗というイメージがありましたが、実際は想像以上の綺麗さで、結構大好きになりました。両親や家族、友人に来てもらいたいお勧めの場所となり、この街でヨーロッパへのファーストステップを踏み出せるのも嬉しく思います。

 それでも最初の1〜2ヶ月は難しかったです。7月の第1週目に初顔合わせがあったのですが、緊張しました。こちらも相手も、両方が手探り状態でした。ハイタッチの時にあっさりした印象を受けましたが、日本ではクラスの席替えに例えられるほど、ヨーロッパのチームは入れ替わりが激しいと言われているので、選手の出入りに慣れているからなのでしょう。

 それはほんの一例で、文化、食事、言語、サッカーまで全てが違うので、もがいていました。サッカーでは「共通点がない」と言えるくらい違うことばかりです。例えばスイスでは、チャンスがあればすぐにゴールにトライしますが、日本ではボールを持ったら、なるべく繋いでいくことを重視するので最初は戸惑いました。体の大きさも全く違い、1対1のシーンが多いので、そこで負けない必要性を感じます。それには身体的パワーも必須です。

 練習までの習慣も違います。日本では皆、朝食を済ませて練習場へ集まり、そこでシャワーを浴びる人もいます。スイスでは練習前にシャワーを浴びる人はいないので、家で済ませ、練習場に来たら、皆で朝食を摂ってすぐに練習に臨むのです。

 移籍後、8月4日まで労働許可が降りなかった時期があり、焦りはなかったですが、日本でシーズンを半年終えてからの渡瑞だったので、そのコンディションを眠らせているのはもったいないなあとは思いました。結果的には、出られなかった2試合を見て良く解析し、自分が何をしたらいいかが解ったので有意義な時間になりました。

 そしてそのうち「違いに慣れて活躍したい」という気持ちが良い方向へ向かわせてくれたので、時間が解決してくれたと言える部分もあります。この苦しさは、日本にいれば味わわなかったことですが、折角ヨーロッパ行きのチケットを手に入れたのだから、挫折して帰ってしまってはもったいないと、自分は思います。今とても楽しいと思えるようになったのは、チューリッヒという街で、そしてこのサッカークラブだからかなと思います。」

 そのグラスホッパーとはどんなチームなのだろう。

「アットホームで、チーム全体で戦っていくという意識が強い、熱いサッカーをするチームです。なるべく易しい英語で話しかけてくれて、輪の中に入れてくれようとする優しさも感じます。若いチームで、26歳の僕より年下の選手が多いです。サポーターも熱心で、今までのリーグ優勝回数の多さ(国内最多27回)が長い歴史に刻まれたクラブです。去年は2部に落ちてしまっていたのですが、スイス・スーパーリーグは10チームしかないので、上り詰めるのも、落ちるのもあっという間です。それだけ毎試合が大切なのです。今のメンバーの中には2部優勝時の選手もいて、現在1部で5位につけているので、できれば優勝して名を刻みたいと思います。また、次の日本人との契約にも繋げたい、という思いもあります。

  自分の目標としては、まずはこのチームでより上の順位を狙うことです。そして、それを果たしたら、もっと上のチームでもプレイしたいです。そしてヨーロッパでのサッカー体験を日本へ持って帰ると共に、成長した自分も見てもらい、小さい子達に、プロになりたいと思わせられるような選手になりたいです。

 もし観に来て下さることがあれば、目立つ応援をもらえたら嬉しいです。」


掲載元 EDELWEISS 2021年 11月号
#スイス
#サッカー
#グラスホッパー
#サンフレッチェ広島


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