人材獲得の「Acquhire」は意味あるの?

最近では、Acquire(買収)とHire(採用)の造語として、「Acquhire(アクハイヤー)」という人材獲得を目的とした買収も増えています。

有名なのは、Googleが2014年にAIのDeep Learningの会社「Deep Mind」を4億ドルで買収したケースがあります。約150人の世界トップクラスの計算神経科学者や機械学習の専門家、数多くの技術者を集めて、どこまで人工知能が行けるか見極めようという会社でした。

※Deep Mindは実は株式の約1/4を著名投資家のピーター・ティール氏が持っており、またイーロン・マスク氏も株主に連ねていました。株式数から考えると、ティール氏が仕込んでAcquireを仕掛けた可能性もあります。

経済産業省の「我が国企業による海外M&A研究会」報告書でも、人材獲得を目的としているケースが、成功企業の29%で、失敗企業の13%であります。

この点をもう少し深く考えていきます。

Acquhireが成功しているのはエンジニアの方

Googleの例を見ればわかると思いますが、Acquhireが成功しやすいのはエンジニアなど特殊スキル・技術を持った人達です。

よく、経営陣をAcquhireだと称して買収するケースがありますが、彼らは買収のロックアップ期間が終われば、条件のいい会社に移る可能性は高いです。彼らにとって条件のいいところに移ることそのものがキャリアアップなのです。

そういう点では、Googleは他よりもいい条件や職場環境、そして社会的インパクトといったやりがいを提供しているわけですが、日本企業の場合、特に米国ではそうもいきません。

また、処遇ではグローバルで日本本社や他の米国社員との横並びも気にしますので、格段にいい条件を出すのも難しい場合が多いです。

結論として、技術や専門性を獲得するための買収以外は、「Acquhire」と位置付けるのはかなりリスクの高いと言えます。

結論:専門会社を買う以外、「Acquhire」との名目でプレミアムを払うのは避けましょう。

Global PMI主宰:山並 憲司 | マッキンゼー&カンパニーで多数のM&Aに従事後、楽天で執行役員として楽天市場の成長に貢献。その後、米国の買収先に赴任し、PMI及び事業変革を担当。楽天USAに移り、戦略及びM&Aを担当し、買収により米国事業の黒字化を実現。現地での買収及び買収後のPMI経験に基づき、シリコンバレーからGlobal M&Aを支援。経済産業省出身。M.I.T. Sloan School修士、Duke Law修士、東京大学工学修士、シリコンバレー在住

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