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キューバの通貨

中南米と冷戦

スペイン語を話す Cuba(キューバ) は、いままでスペインやイギリス、ライバル同士であったアメリカとソ連など、外国の影響を大きく受けてきた国です。

中南米の国々の歴史を紐解くときには、
アメリカとソ連のライバル対決の影響を考えることが大事で、スペインが植民地支配していたキューバも例外ではありません。

独立後

1902年にキューバはスペインからの独立を果たすのですが、その時にキューバの味方としてスペインと戦ったのがアメリカで、
アメリカは戦後の安全保護を条件に、戦争に勝って独立したキューバにおける影響力を手にします。

独裁政治をへて民主的な政治が行われていくなか、Fulgencio Batista という人が共産主義政党の支援をうけてキューバの大統領になります。

しかし、アメリカの影響力を強く受けたまま、彼による共産主義の厳しい規律と独裁的で不安定な政治情勢が続いたために、国民の不満が高まっていきます。

キューバ革命

こういった状況の中で、Fidel Castro という人が1953年に "打倒Fulgencio Batista" として立ちあがります。
これはキューバ革命と呼ばれていて、”アメリカの影響力を取り除いた独立国家キューバを手に入れよう” と考えたわけです。

この革命によって Fidel Castro という人がキューバの新しいリーダーとなり、共産主義に基づいた政治を始めました。
これはアメリカにとって ”共産主義が世界に広まる脅威” であったため、キューバに厳しい対応をとるのですが、ここでアメリカのライバルであったソ連が キューバの支援をはじめるんです。

1962年にはソ連が核兵器をふくむキューバの軍事強化をすすめたため、第三次世界大戦や核戦争になりうる不安定な状況が続きました。(これは The Cuban Missile Crisis と呼ばれています)

今どうなっているの?

1991年にソ連が崩壊したことで大惨事は避けることができたのですが、その後もアメリカとキューバのあいだでの緊張感が続きます。

キューバと諸外国の関係は改善の兆しが見えつつも、社会主義や共産主義に基づく国々 vs 民主的な国々の対立構造は現在までキューバの不安定な政治情勢に影響しているのです。

ソ連との関係

ソ連崩壊前、共産主義に基づいた政治を行っていたキューバは、同様の政治体制をとっていたソ連からサポートをうけていたり、ソ連との貿易に頼っていました。

しかし、1991年にソ連が崩壊したため、キューバは大国に頼らずに安定した国家体制を作る必要がでてきました。

解決策

国の経済が安定していないと海外からの信頼も得られないために、海外からの投資をえることや外国からお金を借りることが難しくなるんですね。

そこでよくある解決策として、”安定した海外のお金を自国のお金として使う” という方法があります。
たとえばアメリカドルやユーロは価値が安定しているため、海外からの信頼度が高いんですね。そのため、そういったお金を自国の通貨として使うことで、経済の安定を図るわけです。

新制度

キューバ)では CUP または the Cuban peso と呼ばれるお金をもともと使っていたのですが、1994年に CUC または the Cuban Convertible Peso と呼ばれるお金を新たな自国の通貨として使い始めます。

この新しい the Cuban Convertible Peso(CUC) を発行することで、足りないお金を補おうとしたわけですが、それでもお金が足りなかったため、いままで所有することすら違法であったアメリカドルもキューバのお金として使えるようになります。

新しい the Cuban Convertible Peso(CUC) と アメリカドル は同じくらいの価値で、
もとから使っていた the Cuban peso (CUP) はその 1/25 くらいの価値。

新しい the Cuban Convertible Peso(CUC) と アメリカドル は観光業や貿易、
もとから使っていた the Cuban peso (CUP) は国内の買い物や国家公務員の給料、に使い分けられました。

結果

この通貨の価値の差により、

価値の高い the Cuban Convertible Peso(CUC) を給料として得るタクシー運転手などの観光業が、

価値の低い the Cuban peso (CUP) で給料を得る医者よりも高い給料を得ている、
といった状況が生まれたんです。

さらに、アメリカドルを使うということは、”お金の政策や方針をアメリカのやり方に従わなければいけない” ということを意味しています。安定した通貨と引き換えに、通貨の使い方の自由を失うわけです。

こういった状況に加えて、共産主義が広まって欲しくないアメリカはキューバに対して厳しい対応を続けていたたこともあり、2004年にキューバは国内でのアメリカドルの使用を禁止したうえに、アメリカドルに両替するときに10%の税金をかけたんですね。
ちなみに、この時期にキューバはヨーロッパとのつながりを再開していて、ユーロなどアメリカドル以外は税金がかからずに両替ができました。

今どうなっているの?

そして2021年1月にキューバは価値の高い the Cuban Convertible Peso(CUC) の使用も年内6月までにやめることを発表しました。
二つの通貨をやめて、もとから使っていた the Cuban peso (CUP) の一つにする方針は2013年から掲げられていたのですが、それがやっと実現されるわけです。

参考: BBC news, Al Jazeera English, Office of the Historian, Vox, OANDA, The Guardian

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