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[個人の意見]ミャンマーで起きてる混乱と解決案

ロヒンギャ民族とは?

多くのイスラム教徒が、ミャンマーで長い間迫害をうけていて、Rohingya(ロヒンギャ)という人たちはそのイスラム教徒の中の一民族です。

Rohingya(ロヒンギャ) の人たちは主に、Rakhine(ラカイン) というパングラデシュに近い地域に暮らしていたこともあって、
バングラデシュに多くのロヒンギャ難民が逃げ込んでいるんですね。

しかし、バングラデシュの難民キャンプはすでに人であふれかえっていて、マレーシアなど他の国々にも船を使って多くの人が安全をもとめて逃げています。

問題の起源

2017年から悪化したこの状況ですが、ミャンマー国内でのイスラム教徒に対する迫害は昔から続いていました。

ミャンマーの大半の人が仏教徒でビルマ語を話すのですが、
ロヒンギャの人はイスラム教徒でバングラデシュ語を話します。

ちなみに Myanmar(ミャンマー) はもともと国名が Burma(ビルマ)で、1989年に現在の Myanmar に改名しました。そのため国内で使われる言語名はBurmeseと呼ばれます。

言語や宗教の違いを理由に,、ロヒンギャの人たちをミャンマー政府は国民として認めてこなかったんです。

そのためロヒンギャの人たちは ”国家に属さない民族" という扱いを受け、パスポートも作れなければ、教育や医療機関へのアクセスもままならない状況におかれてきたわけです。

反撃を開始

そこで2017に反撃に出たのがArakan Rohingya Salvation Army (ARSA)という組織で、ミャンマーの仏教徒に対する軍事攻撃をはじめます。

しかし、ミャンマー政府はArakan Rohingya Salvation Army (ARSA) を "イスラム過激派のテロリスト" としてとらえ、イスラム教徒の住む地域や難民キャンプを燃やすなどの過激な対応にでたんです。

こうした政府と反政府の争いが、今現在の難民であふれかえる状況を引き起こしているのです。

問題の裏事情
ここで注目なのが、ミャンマーの政治体制です。

Aung San Suu Kyi(アウンサンスーチー) という人は2015年に、ミャンマーに民主主義をもたらしたことで評価を得たわけですが、そのうらで政府内では軍部の勢力が強く残っているんですね。

1948年にミャンマーがイギリスから独立してから民主主義が導入されるまでの長い間、ミャンマー国内では軍事独裁政権が続いていたんです。

そのため、アウンサンスーチー氏による民主主義の導入は軍部の勢力を弱めることでもあったんですね。いままで国を仕切ってきた軍部からしたら都合が悪いわけです。

そういった軍事勢力が強く残るミャンマー政府では、ロヒンギャの人たちに対する過激な対応を民主的に止めるのが難しくなっているのです。

ちなみにアウンサンスーチー氏の父親は、ミャンマーの軍部を設立した人です。

民主主義をのぞむ風潮

これまでにもミャンマー国内では、軍事政党以外の政党形成を禁じたり、特定の産業を国有化するなどして、軍部の勢力は国政における影響力を強めてきました。

しかし不況になると、民衆も我慢できなくなって抗議などを起こしていくんですね。1988年には民主化を望むプロテストがおき、軍部は軍事力で制圧することで対応しました。

一時的に制圧は成功したものの、このプロテストをきっかけに "民主政治にするべきだ" という風潮がミャンマー国内で出てきて、民衆は軍部に反発するようになっていったのです。

この時に出てきたのがアウンサンスーチー氏で、 the National League for Democracy (NLD) という政党をつくって民主化の動きを促進し始めます。

今ミャンマーで起きていることの概要

2020年の終わりにミャンマー国内で行われた選挙で、the National League for Democracy (NLD) というアウンサンスーチー氏率いる民主主義政党が、軍部政党をおさえて勝ちました。

この結果に不満をもった軍部勢力は、”選挙に不正があった” と主張して今も続いている軍事行動にでたんです。

その結果、アウンサンスーチー氏を含むミャンマーの政治リーダーたちや民主化をのぞむ活動家などが続々と逮捕されました。
さらに、軍部勢力が所有するメディアでは "軍部が国の統治を獲得した" と報道され、大統領や各政府機関には軍部の人々が新しく任命されました。

the Tatmadaw と呼ばれる軍部勢力は、選挙に不正があったことを前提にして、”公平な民主主義に基づく選挙をやり直す” ために、今回の軍事行動は必要であると主張していました。

民主主義 vs 軍部勢力

これまでにも軍部勢力と民主化をのぞむ政党(NLD) は対立しあってきて、
軍部勢力が選挙に負けた際には、軍部勢力が選挙結果を拒否して、アウンサンスーチーさんを逮捕するなどの事態が起きていました。

この時の名目も今回同様、”公平な選挙をやり直す” ことだったんですね。

2008年に軍部は新しい憲法を独断的に作っていて、軍部勢力が議会における25%の議席を保てるようにすることで、都合の悪い事柄に関しては拒否できるようにしたんです。この憲法は今でも施行されています。

なぜミャンマーの軍部勢力はこんなに強いの?

軍事勢力はミャンマー国内の炭鉱、石油や天然ガスの産業への影響力を保持しているため、国の資源や財源をコントロールできます。

外部に依存しない資金源を持っていることは強く、海外や政府の要求などに従わなくても活動を維持できるわけです。

ロヒンギャ問題では、ミャンマー政府は少数派ロヒンギャ民族の反撃を "テロ行為" とみなして対抗するのですが、この時にミャンマーの軍部勢力はロヒンギャ民族に対して過激な制圧を行い、ミャンマー国民の多数派の身を守ることで支援を得ようとします。

民主主義に基づいた "平和的" な対応ではなかなか改善されない状況の中、民衆は非人道的ではあるものの自分たちの身を守ってくれる軍部勢力に希望を見出したりすることもあるんですね。

いずれにせよ誰かの犠牲に成り立つ改善策は長期的には持続できないので、軍部勢力とミャンマー政府、ロヒンギャ民族を中心としたアクターのなかで交渉が行われる必要があります。

海外諸国とミャンマーの関係

これまで海外諸国はミャンマーのインフラ整備などへ積極的に投資をしてきたため、ミャンマーは経済成長が予想されていた国でした。

しかし、今回の騒動をうけて現地ビジネスの停滞や海外からの制裁によって経済がガタガタになっています。

実際、アメリカがミャンマーの軍部勢力に対する経済制裁を行い、ニュージーランドはミャンマーの新しい軍事政府成立を拒否して、政治的なつながりを一時的に停止するなどの制裁を加えています。

一方、ミャンマーへ投資している国のメインはアジア諸国で、シンガポールと香港からのインフラや工業への投資だけで投資全体の6割を占めているんですね。

貿易でも、2018年の世界銀行データによるとミャンマーは主に、

工業製品(4割)、農産物(3割)、石油や炭鉱物(3割)を、
中国(30%)、タイ(20%)、EU(15%)、日本(10%)、アメリカ(5%)へと輸出しています。

また、ミャンマーは主に、

工業製品(6.5割)、農産物(2割)、農産物(1.5割)を、
中国(35%)、シンガポール(20%)、タイ(10%)、マレーシア(5%)、インドネシア(5%)から輸入しています。*数値はおおよその値

こういった経済的なつながりから、アジア諸国は経済制裁に慎重になっているんですね。それでも、コロナウイルスの影響ですでに投資は減少傾向にあったため、今回の騒動は投資減少の傾向に追い討ちとなっているのです。

日本とミャンマー

1940年代に日本はミャンマー軍の設立を助けることで、ミャンマーのイギリス支配からの独立を支援した歴史があります。

こういったミャンマーの民主化への経済支援をしてきた日本は、ほかの諸外国に比べてミャンマーとの政治的経済的なつながりが強いため、今回のミャンマー騒動において重要な位置にいるんです。

今回の騒動のもとにある2020年のミャンマーの選挙では、インド、日本、シンガポールは民主化を望む政党が勝ったことを祝福していたのですが、すでにミャンマーの軍部勢力に制裁を加えているアメリカとの関係をふまえ、日本がどのような対応にでるのかが大事になってきます。

個人の意見!ミャンマー問題へのアプローチ

「軍事行動は許されない」ことが前提とされているので、ミャンマー軍部が軍事行動を起こすコストを上げるために海外諸国からの制裁が行われてきました。

しかし、ミャンマー軍部が欲しいものは、「権力を手に入れること」であり、制裁だけでは状況が泥沼化になってしまいます。

日本はミャンマー軍との交渉を行ってきましたが、日本が厳しい制裁に出たりすれば、ミャンマー軍は中国に助けを求めるであろうと予想されます。

アジアにおける中国の影響力を強めたくない日本は、mediator(仲介役)として軍部と民主政府のあいだで交渉をリードする必要があるんですね。

交渉には解決案の提案が重要になってくるので、

「軍部、民主、ロヒンギャなど各種マイノリティで議席を分けて勢力を分配することを目指す」

という案もあるかと思います。これはイラクの政治の仕組みから引っ張ってきたもので、民主的でオープンなアジアコミュニティを目指す日本にとっては検討しても良い案かと思います。

参考
Al Jazeera English, BBC News, World Bank, a the Japan times, Vox, United Nations

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