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つみたてNISAってどうなの? – メリット・デメリットとその落とし穴

こんにちは。

今回は、iDeCoに続き日本で流行りの「つみたてNISA」について。「つみたてNISAってどうなの?」と言われることが多いので、そのメリット・デメリットとあまり語られることのないその落とし穴についてお話していきます。


つみたてNISAの概要


2018年1月からスタートした「つみたてNISA」は、特に少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度です。ちなみにイギリスで既に実施されている類似の投資制度ISAにニッポンの頭文字「N」をつけてNISA(ニーサ)制度がつくられました。

iDeCoと何が違うの?とよく聞かれるのでその制度の概要を比較をしていきましょう。

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非課税投資枠の取り扱い


つみたてNISAの投資可能期間は2018年~2037年ですが、非課税期間は20年なので、2037年に投資した分は2056年まで非課税で保有することができます。

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メリット


20年間は非課税で少額から積立ができる
主なメリットは、投資から得られた利益に対してかかる、通常20.315%の税金(所得税+住民税+復興特別所得税)が、年間40万円の投資額の枠内で、むこう20年間ゼロになることです。

毎年20%課税されるということはその分翌年の運用原資が減りますから、当然その分運用効率は悪くなります。これが一部なくなることによって運用効率が良くなるということですね。

手数料の安い投資先が用意されている

つみたてNISAは現在、日本国内で販売されている投資信託約6,000本のなかから金融庁が厳選した、投資信託・ETF約180本のみを対象としており、かかる手数料も低い商品選定がなされているので、投資初心者がはじめの一歩として踏み出すにはとっかかりやすい商品とも思えます。

ここまで、制度発足の背景やメリットをみる限り、国民(投資初心者)にとってはメリットが大きいように思えますが本当にそうなのでしょうか?巷では証券会社が売りたいからこそ、そのメリットの情報ばかりが溢れかえっているため、ここではあえて、つみたてNISAのデメリットや注意点について解説していきます。

デメリット


年間40万円という少額の非課税投資上限額
つみたてNISAの非課税投資枠(年間40万円)は、一般NISAの年間120万円と比べると3分の1であり、月々になおすと最大約3万3千円。毎月この額を積み立てた場合、ボーナス時に追加投資をしようとしても既に枠を使い切ってしまっています。

繰越控除ができない
今年の投資枠(年間40万円の投資額の枠内)が余っていても翌年に繰り越すことはできません。投資初心者向きではありますが、年間の投資額にしては少なく、ある一定の投資家にはメリットが少ないといえます。

損益通算できない
通常、複数の証券口座を使って投資している場合は、それぞれの証券口座の1月~12月の利益と損失を合算して、税負担を軽くすることができます。しかし、「つみたてNISA」の損失は損益通算ができないため、場合によっては、余計に税金を支払う可能性もでてきます。

リバランス(ファンドにおける投資割合の見直し)が難しい
iDeCoなどの確定拠出年金がリバランスや商品入替が随時可能であるのに対して、NISAは、1年の途中で投資した商品を売却しても、売却分の非課税枠は復活しません。そのため、

・長期投資で徐々にリスクを減らしていきたい
・当初の資産配分の偏りが大きくなったのでリバランスしたい
・購入したインデックスは中長期的に上昇が見込めなくなったので変更したい
・新しく入ったファンドが自分に適しているので乗り換えたい

など、運用成績にプラスが働くような途中変更がかなり制限されてしまいます。

課税口座移管後の状況では課税対象
非課税期間の20年間が終了したときには、NISA口座以外の課税口座に払い出されます。なお、つみたてNISAでは翌年の非課税枠に移すこと(ロールオーバー)はできません。例えば

つみたてNISAで投資した800万円の投資信託が、非課税期間の終了時にマーケットが下落し600万円に下がっていたとします。この場合損をしている状態のため解約はせず、投資信託はそのまま保有することになり、つみたてNISA口座から課税口座(特定口座)へ移管することになります。

このとき、その投資信託は600万円で取得したものとして扱われます。その後、価格が800万円に再上昇し売却した場合、本来は元の価格に戻っただけで利益は出ていないにもかかわらず、取得価格である600万円から800万円への値上がりで200万円の利益が出たとみなされてしまい、約40万円の税金がかかってしまうのです。

投資先が限定される
ここはメリットでも上げた部分ですが、反対にデメリットとも取れます。これは「金融庁が厳選した」ことによる弊害と言えるでしょう。投資対象商品は3種類、計180本あり、それぞれの本数は以下の通りです。(2020年7月1日時点)

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インデックス投資信託( = 特定の指数と同じ値動きをするように設計された投資信託)は、上記のように本数さえ多いのですが、その内容は運用会社が異なるだけで同じ運用方針の投信信託ばかりです。大きく分類すると、国内2種類、海外8種類と、投資信託の本数と比較すると大幅に減少します。つまり、本数が多くとも実質的な選択肢は少ないのです。

運用戦略が異なるアクティブ運用投資信託は少なく、多くの方が似たようなインデックスの投資信託数種類から選択をすることになるため、こうした選択肢の中で国が提唱する「効果的な分散投資」ができるのか?非常に疑問が残るところです。

また、ファンドの選定基準において、金融庁は一定の安い信託報酬で足切りしていますが、やや高めの信託報酬を支払っても、インデックス等のベンチマークを継続的に上回るようなパフォーマンスをあげている優良ファンドが対象に入っていません。

さらに、なぜ信託報酬が安いのか?それはインデックスのものは指数に連動するだけなのでファンドマネージャーの手を入れる必要がありません。またインデックスではないものも日本国内の多くのファンド(投資信託)は優秀なファンドマネージャーが運用しているわけではなく、たいていはそこに責任のないサラリーマンが運用をしているため運用にコストを掛けていないというだけなのです。運用にコストを掛けていないということはそのファンドは資産を増やす気がないとも言えます。

こうした単純な選定基準を見ても、本当に国民にとっての安定的な資産形成の支援といえるのかどうかも疑問ばかりなのです。


NISAとつみたてNISAはひとつしか選べない
NISA制度には、年間120万円までの投資による収益が、最長5年間非課税になる「一般NISA口座」という選択肢もあります。

つみたてNISA口座の枠は年間40万円までですから、一般NISA口座とつみたてNISA口座は同時開設できそうな気がしますが、現状、2つのNISA口座を同時に保有することはできません。新規にNISA口座を開設する人はどちらかを選択しなければならなく、すでに一般NISA口座を開設している方も、つみたてNISA口座を利用したい場合は、どちらかを択一しなければなりません。

複利効果が大きく効き始める頃に課税され始める
つみたてNISAを利用する目的の一つに「複利運用ができること」が挙げられます。資産を築いていく段階では複利運用を使うことは資産形成の鉄則です。しかし複利運用の効果は時間をかけることでようやく得られます。

下の図を見ていただくとわかるように初めの数年間は大してその効果を実感することはありません。しかし15~20年あたりから複利効果が目に見えて実感することができるようになってきます。

「つみたてNISAは20年間非課税」ということを反対側から見てみると、20年後資産が大きくなったところからは毎月課税しますよという制度にも見えてくるのです。今までは国民資産の大部分が銀行預金にあったことで政府は預金に税をかけることはできませんでしたが

預金から投資へ

という謳い文句で、国民にそのお金を預金口座から運用口座に移管してもらい、運用してもらうことで税をかけることができるようになったのです。

こう考えると、20年間は税を見逃すことで運用資産が大きくなってきたところから多くの税を取る制度にも見えてきませんか?

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まとめ


世間に流されない
老後2,000万円問題をキッカケに「つみたてNISA」や「iDeCo」などを急に始める方が増えてきました。投資をすることはとても大切なことなのですが、

“なんか良さそうだから”
“話題になってるから”
“周りも始めたから”

といって何でもかんでも飛びついて契約するのは辞めましょう。金融資産を作ることや事業の成功についても、世の中の少数派がそれを成し遂げているという事実を考えると、大多数の常識についていって果たして正しい資産形成なんてできるのか?という視点で考えることも非常に重要です。

それは、いついくらになるのか?
資産形成は入り口より出口です。その正しい考え方は、いついくらの資産を形成したいのか?に対して逆算でやっていくものです。

とりあえず始めてみることも大事だという考え方もありますが、多くの方がそれがいついくらになるのかわからないままにとりあえず投資しつづけている、少し増えたことに対して一喜一憂していることは甚だ疑問です。

“節税” より “どれだけ増えるか?”
もちろんNISAが非課税だということは利点ですが、それはあくまでも増えた利益に対して非課税なだけです。利益がでる投資先でなければその恩恵を受けることすらできません。

”資産を増やす”ということが本来の目的であって、節税をしたり非課税の枠で投資するのが目的ではありませんよね。

最終的に売却をして、利益を作らない限りいくら非課税であっても意味がありません。ご自身で判断できる方にとっては良いのですが、投資初心者の方でこれをするのは非常に難しいことです。

以上のことをしっかりと理解し、いついくらの資産を作りたいのか?また他の方法と比較して最初から最善の方法で資産形成をしていきましょう

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