【Visions #01】 shizaiの考える「何年も戦い続けるためのVision」とは
グローバル・ブレインの投資先企業が目指すVisionについて、そこに込めた想いや背景、言語化に至るまでのプロセスなどを聞くシリーズ。第1回としてご紹介するのは、オリジナルパッケージを低コスト・高品質で作れるプラットフォームを展開する「shizai」です。今年に入り新たにVisionを策定したとのことで、鈴木CEOにお話を伺ってきました。
shizaiの「Vision」
──まず、先日の資金調達おめでとうございます。これからどのような展開を考えてらっしゃいますか?
ありがとうございます。目先1〜2年は、2つの動きが重要です。
1つは、現在ノンプロモーションながらグロースしているマーケットプレイス事業に対して「しっかりとアクセルを踏み、またそれに耐えうる体制を創る」ことです。採用が最重要になりますのでたくさんの方とお話できたらと考えています。
もう1つは二の矢、三の矢の種植えです。すでにshizaiでは包装資材や加工容器の販売にとどまらないビジネスの芽が複数みえています。どの角度からどう着手することが資本効率、市場原理の観点で適切であるかを考え抜き、正しく投資を進めていきたいと考えています。こちらは特にPdM、エンジニアなどプロダクト開発メンバーの拡充が急がれます。ステルスでソフトウェアプロダクト開発も推進中です。
──今年(2022年)の始めに会社のVisionを新たに言語化されたそうですが、それぞれについてお聞かせください。
こちらです。以下の英語&日本語で1セットとなります。
──Visionを言語化するまでには紆余曲折もあったと思いますが、最終的にこちらに定めた理由、込めた想いなどはどのようなものでしょうか。
Visionの定義について調べると「実現を目指す、将来のありたい姿のこと」と出てきます。この定義に基づいて私たちが今回のVisionを定めた理由は、創業時からの想いに起因しています。
「DXによる効率性」で終わらないものにしたかった
私と共同創業者の油谷は前職の同僚で、以前から「大きな産業にテクノロジーを充当し、構造をかえる」ことにトライしたいと考えていました。産業をディスラプトするというよりは「残すべき部分と変えるべき部分に分解し、後者をテクノロジーを起点にかえていく」ことへの探究心をもって起業をしています。
例えば包装資材・加工容器の領域では製造サイド(サプライヤー)が多重引受構造となりコストが過剰に発生するケースや最適なサプライヤーを発見するコストが極めて高いという課題があり、ここにはテクノロジーの充当余地があります。
また、顧客サイドをみてもEC運営社や小売事業者の調達作業、在庫管理や配送ロジ管理は非常に煩雑で、「ただでさえエンドユーザー対応で忙しいのに、バックエンド作業に多大なコストがかかる」といった課題があり、同様にテクノロジーによる課題解決余地があります。
こうした大きな産業の構造に起因する課題に、長期的に取り組んでいきたいという思いを「Make true value for any industries with technology」と表現しています。
他方、あらゆるスタートアップが「XXX産業のDX」を標榜しており、どこかで”巨大産業×テクノロジーによる効率性”という旗の掲げ方に物足りなさを感じていたことも事実でした。
この物足りなさとは何か、具体的に言語化したところ、「社会課題・地球課題への実質的な寄与」に行き着きました。
働く人が熱狂できるための「Vision」
再び前職の話となりますが、私たちが在籍していたスタートアップはテクノロジーを起点としながら「移動」にまつわる社会課題解決を目指す会社でした。
在籍当時は国会議員・官僚・大学教授・メディア、など様々なステークホルダーの方々とも意見をかわし、「目の前のN=1のユーザー」のみならず、「数十年後の、大勢の人」を想定した議論もありました。この時間軸の長さや対象者の多さが「自分が10年かけてやる価値のある、深遠で、解くことが難しい問題設定」に繋がり、結果熱狂することができていたと振り返っています。
事業成長の延長に、社会課題・地球課題との交差点が存在しうる領域にこそ自分たちの熱狂点が存在し、私たちが起業して取り組むべきテーマはこの交差点を生み出す領域にあると認識しました。
スタートアップとして急成長し経済性を突き詰めることは大前提としながら、その延長に地球社会が抱える課題に実質的にヒットする価値を生み出したい、この二兎を追いたいという思いからこのVisionを設定し、市場選定もこのVisionのもとに行いました。
──なるほど、非常に解像度高く整理されていますね。Visionの言語化までの議論の濃密さを感じます。shizaiは創業1年半ほどになりますが、このタイミングで策定することに至った背景について教えてください。
創業時より、私と油谷は「10人がみえてきたらカルチャーを詰めよう」と決めていました。 前職で100名規模の組織を見てきて、いわゆる「○○人の壁」といわれるものや、チームビルディングにおいてつまづくポイントをある程度経験し、カルチャーの設計がいかに長期的なレバレッジを産むかを実体験として理解していたためです。
ある程度の人数になれば出自も価値観も異なるメンバーが増えますし、自分にとっての当たり前が他者にとってはそうではない、というケースも出てきます。組織として目指すべき方向の言語化(vision)やそこに向かうための行動規範/価値基準(value)が明確化され、ここに各人がコミットする状況をつくることが組織の求心力を維持する上でとても重要だと考えます。
結果、全社メンバーが7名、次回の資金調達も目処がついたタイミングで設計をスタートしました。
「何年も戦い続けられるか」で考えた
──策定にいたるまではどのようなプロセスを踏まれたのでしょうか
「①背景から最終的な言語化までCEOが責任をもつ」、「②メンバーには意見をもらい、CEOが最終言語化をする時に活かす」という進め方をとっています。
まずVision言語化に至る前の創業者の経験や思いを、文章にまとめて事前にチームメンバーにみてもらうところからスタートしました。Visionは創業者が体重をのせて語れる言葉であるべきだと油谷より当初インプットをもらい、そのもとに2人で議論をしました。
これは非常に重要な部分だと考えておりますが、大勢の意見を集約してできたものが良いVisionかというとそうでもありません。個としての強い意志が宿っている方が歯切れのよいものになると思いますし、創業者の「決め」こそが大事です。
その言葉で、これから先何年も戦い続けられるかという目線で設定するのが適切だと考えていました。
事前の創業者のメモは丸一日ほどかけてツラツラと書き、オフサイトミーティングでチームメンバーから3〜4時間ほどコメントをもらい、後日また数日かけて最終言語化をしてFixとしました。
──策定から2ヶ月ほどですが、策定してみての変化などはありますか?
中長期の経営目標をより具体化させたと感じます。私たちは現在包装資材や加工容器のマーケットプレイス事業を起点としていますが、Visionを策定したことで5〜10年スパンで見たときに、どういった経営体制でなければならないか、それを実現するには直近1〜3年でどういったステージにあがらねばならないか、グローバルも見るべきなのか、といった論点がクリアに整理されていきました。変わりうるものではありつつ、長期的な舵取りの方向を策定できたことは大きな収穫です。
──これからますます拡大していかれると思いますが、今後どういう人と一緒に働きたいですか?
Visionに共感いただける方・Valueの体現に抵抗がない方と一緒に、というのが理想です。特にValueはリトマス試験紙としての機能を持っていて、shizaiとして大事にしている仕事への向き合い方が表れています。
例えばDisagree & Commitという意思決定に関するValueや、「小さく、早く」というValueは面談の過程でもよくみる部分ですし、好き嫌いも分かれる部分だなと感じています。どちらが良い/悪い、ではなく相互の相性だと思いますが、VisionやValueの観点でフィットがある方がお互いにハッピーだとおもいます。
あと全く別角度ですが、ハードな局面でも爆笑しながらやり過ごしていきたいので(笑)しんどい時に「仕方ないか!」とカラっと割り切れる方と働けたら最高です。
──最後に未来のshizaiメンバーとなるかもしれない方へのメッセージをお願いします。
Vision/Value以外でも、shizaiが発信する情報のどこかに少しでも興味をお持ちいただけましたら、是非カジュアルにお話させてください!