企業ブランドが一瞬にして崩壊:「連絡メール」の皮を被った お粗末な「釣りのメール」
先日、定期的に案内メールを送ってくる某社から、いつもとは感じの違うメールが届いた。普段あまり気にしなかったのだが、冒頭の書き出しが一斉メール風ではなく、筆者個人宛てかのような書き方だったこともあり、気になって読んだ。そして、ガッカリした。
それは、いわゆる「釣り」のメールだったからなのだ。
NYではNY PAUSEと呼ばれる自宅待機令が発令されたのが1年前の3月22日。その日から1年たつ。この1年でNYだけでなく、日本もそして世界の多くの国も経済的打撃を受けた。業種によっては致命傷の大打撃だったことは確かだ。
しかし、このような非常時にこそ、その企業・人の本質と性質が露見する。ギリギリに立たされた時、人も企業も本性が出るのだ。そして誤ったやり方をたった一つしたことによって、長年かけて作り上げてきたブランドやその信用は、いとも簡単に地に落ちる。
そんなことを思った釣りメールの内容はこのような感じだった(著作権の関係上文面を少々変更した)。
Real Cosmopolitan Inc.
日野 江都子様
いつも大変お世話になっております。
株式会社●●○○のAと申します。
以前より弊社との情報交換をさせて頂いておりましたが、
一定期間時間が経過しておりました。大変申し訳ございません。
▲▲△△を成長戦略の候補としてご検討されておりましたら是非一度改めて
情報交換とともに貴社に引き続き案件のご紹介をさせて頂けたらと存じます。
"000-0000-0000"までご連絡もしくはメールにて返信をいただけますと幸いです。
突然のご連絡で大変恐縮ですが、ご検討何卒宜しくお願い致します。
いやはや、全てにおいて失格だ。
まず、この企業と筆者の関係性における事実誤認。
この企業とは、先方がNYに研修でいらした際に、この企業のトップと上層部を知る知人から誘われて、その方々と食事をご一緒し、名刺交換をした。当然サービス提供者と客の繋がりではない。
彼らが再びNYを訪れ、とあるレセプションを開催した際にも招待され参加した。これも客としてではなく、NYにいるビジネスでの繋がりのある人(関係者)としてだ。
その後、筆者の日本出張時に、先方を訪問して社長と面談をした。
そして何より、NY在住の筆者および筆者の会社は、こちらが望んだとしても、先方が提供しているサービスを受ける対象にはなり得ない。
以上のことからして、先方の担当者との情報交換はおろか、サービスを受ける可能性があるやりとりなど一切していないのだ。
受け取った名刺の連絡先管理は、受け取った本人がしていないケースは多々ある。だから、一斉送信の広告宣伝メールが届くのはよくあること、別に何の問題もない。活動報告の一貫と思えば、それは頑張っていらっしゃる証とも取れて嫌な気はしない。なので、今までそのままにしていた。
しかし、今回のこれはどうだろうか?
明らかに個人的にやりとりをしていて、(こちらが連絡をせずにいたために)しばらく時間が空いてしまったため、先方から「どうでしょう?」と聞いてきている前提の文面にも受け取れる。
今回このメールを受け取って思い出したことがある。この手のものを以前も何度か受け取って嫌な経験したことがあったのだ。今回のメールと同様の方法で連絡を受け、こちらがびっくりして対応したら釣りだったことがすぐわかった。全て某出版社からのものだった。
その最初の内容は「出版の打ち合わせの約束をしていたのだけど」というメールが届いたり、弊社の東京オフィスに「先日出版のご依頼の件で手紙をお送りしていたのですが、ご覧いただけましたか?」という電話がかかってきて、「折り返し連絡が欲しい旨をことづかった」と東京の担当から連絡があり、急いでこちらから電話をすると自費出版の話。しかも、東京オフィスに確認をしたら手紙など届いていない。さも、こちらがうっかりしていたかのように思わせて、向こうの陣地にこちらから入っていくように仕向ける手口だ。その後も同じような手で出版社から連絡があったが、最初の経験を生かし、自費出版であることを自白させて手短かに終わらせた(苦笑)
元の話に戻ろう。今回筆者の元に届いたメール。この前述の某出版社のやり口と同様のペテンなやり方にもガッカリだが、何より文章が全くなってない。中でも「情報交換」、この言葉を一回でも使う企業もしくはその担当は、筆者の中で一気に要注意扱いになる。特に今回のように情報を交換するようなコミュニケーションは一度もとったことがない関係であり、筆者は何も提供していなければ、何も得ていないのだから尚更。しかも「情報交換」という言葉をこんな短いメール文の中に2回も使用するだけで要注意もダブル。
そして、文法がとんでもなくおかしい。この企業、一応上場している。そして中小企業相手のビジネスを行っている。担当者であっても、接する相手は社長ということが多々あるはずなのだ。なのにこの未熟な文章。これが許されるビジネスってなんだろう?
気になって仕方がなかったので、おかしい部分を書き換えてみた。太字部分が修正した文章だ。
Real Cosmopolitan Inc.
日野 江都子様
いつも大変お世話になっております。
株式会社●●○○のAと申します。
以前より弊社からの一方的なご案内をお送りしており、申し訳ございません。また、フォローアップもせずに時間ばかり経過しておりましたことをお詫び申し上げます。
もし、ご案内を差し上げておりました▲▲△△を御社の成長戦略の一候補としてご検討くださるようでしたら、是非一度改めてご説明差し上げ、貴社に案件の紹介をさせて頂けたらと存じます。
"000-0000-0000"へのお電話、もしくは本メール宛に直接返信を頂戴できましたら、早急ご対応申し上げます。
突然連絡を差し上げまして大変申し訳ございません。ご検討の程、何卒宜しくお願い致します。
直しながら気づいたことがある。メールの送り主は筆者と「情報交換」をしていたという前提で文章を綴り始めていたはずなのだが、締めくくり部分で「突然の連絡」と書いてしまっている。こんな短い文章にも関わらず、すでに辻褄が合わない。騙すなら、こちらがコロッと気持ちよく騙されそうな文章をしっかり作ってから送るくらいの準備と努力をして欲しい。これではあまりにお粗末。
それにしても、随分とペテン的なやり方をし始めてしまったこの企業の行末が心から心配である。