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VRChatと、Unityと、知性の限界。

本記事は、「VRChat Advent Calendar 2020」の20日目の記事です。

本記事では、「VRChatと、Unityと、知性の限界」と題しまして、VRChat日本人界隈におけるアバター文化の技術的特殊性に触れながら、VR人口爆発の時代に求められると考えられるものについて、自分の考えを書き連ねていこうと思います。

はじめに - 自己紹介など

GlinT Frauleinです。Twitterは @GlinTFraulein です。

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著者近影。かわいいですね。

VRChat上で「大安吉日集会」という集会を主催していたり、168時間VR体験実験をしてみたり、「VRCUnity勉強会」の管理人だったりします。
Unity力に関しては、1年とちょっとVRCに関わることだけやった程度です。Avatars3.0については一応一通り理解していたり、パーティクルライブを制作してみたり、よくUnityプロジェクトを破壊していたりします。C#が書けたりとかはしないです。UDONもわかりません。

最近(というか12月19日の朝)、「続・初心者Unity備忘録」という書籍を無料配布し始めました。詳しくは後述しますが、Avatars3.0に強くなれる本です。

Avatars3.0公開講座

Avatars3.0のリリースが今年8月上旬でしたね。読者の皆様におかれましては、当たり前のように使っている方も多いかと思われます。それから1ヶ月半後の9月下旬に、VRCUnity勉強会にて「最速で移行するAvatars3.0(講座A)」「最速で"完全に理解"するActionMenu入門(講座B)」の両講座を開催させていただきました。
VRChat内で実際に教壇に立ちながら説明し、講座を受けている方に実際に作業してもらう流れを取りました。アーカイブはVRCUnity勉強会のDiscordから見ることができます。

講座Aに関しては、みんなで2時間でAvatars3.0への移行を完了することを目的としました。Discord/VRC両会場に私以外のサポーター(私より知識豊富)を配置していただき、大方流れに乗って作業ができている人はよし、つまづいた人はそれぞれサポートに入るという形で進行しました。

講座Bに関しては、「ActionMenuで物の出し入れをする」ことを目標にしつつ、将来的に様々なギミックをアバターに導入できるようにその仕組みを理解してもらうことに主眼を置きました。よって、前半はプレゼン資料を見ながらの座学、後半はそれを実際に実装するという形を取りました。
実際にVRChatにいる状態で講座を行ったので、実装に先んじて成功するとどのように動くのか、を実際に講座を受けている皆さんにお見せすることもできました。

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前半で最も重要な1枚。この1枚にAvatars3.0の概念を詰め込みました。

この公開講座を行って感じたことの中で大きな意味を持ちそうなことは、
・多対1であるため、多くの人に一度に伝えることに向いている
・多対1であるため、一人ひとりに対して個別のアプローチはしにくく、反応も分かりづらい
・「公開講座」という大きな舞台形式を取ったため、それにつられて始めてみよう、という人もいる

という3点です。

・多対1であるため、多くの人に一度に伝えることに向いている
文字通りの意味です。さながら学校の教師のような立場として講座を行うことになるので、できる限り多くの人に分かりやすい解説をするための準備は必要ですが、その努力の分だけ間違いなく多くの人へ伝えることができます。
特に今回はAvatars3.0の情報がしっかり出揃いつつ、需要も伸びてきたタイミングであったことも重なり、非常に多くの人に講座を受けていただけました。良いことですね。

・多対1であるため、一人ひとりに対して個別のアプローチはしにくく、反応も分かりづらい
こちらは逆に公開講座形式の弱点です。先ほど"さながら学校の教師のような立場"と述べましたが、この立場のデメリット面とも言えます。また、講座を受けている側の人がどうしても発言しにくい環境であるとも言えます。
私は「DiscordやVRCでマイクミュートにしなくていい、むしろどんどん反応してほしい」と声をかけたので、数名ほど声を出してくれました(嬉しかったです)し、声を出せない人もDiscordの反応ボタンで積極的に参加していただけました。実際は数名ほど声を出していただけただけでも多い方で、講師からの一方的なものになってしまう場合もザラにあります。
また、尺の都合や全体の進行の都合上、一人がつまづいた際にそちらのサポートに全力を出せないのも惜しい点です。これや発言しにくい点は、どちらかというと教育における"バグ"のようなものだと思っています。

・「公開講座」という大きな舞台形式を取ったため、それにつられて始めてみよう、という人もいる
これが公開講座最大のメリットだと思います。VRCUnity勉強会を例に挙げると、たとえば「相談部屋テキストチャンネルで質問をする」「作業部屋ボイスチャンネルに入る」などは極めて能動的な動作であり、勇気がいるものです。そもそもある程度満足のいく改変が終わると、それ以上のことは結構やる気が要ります。「改変でこれまでやったことのない新しいことをする」のも、とても能動的な動作ですね。
一方で、公開講座の場合はどうでしょうか。もちろん、「公開講座を受けに行く」のは能動的な動作ですが、一度始まってしまえば主導権は講師側にあります。「講座の話を聞く」ことは受動的な動作といえます。加えるならば、一度に多人数(50~60人くらいだったはず)が同時に聞いているので、一人あたりで考えればそこまで気負う必要がないはずです。そうであってほしい。
公開講座という形は、幾分か能動性が低い状態で知識を手に入れることができる手段だと思います。よって、0から頑張るよりも敷居がかなり低いと言えるのではないでしょうか。



VRCUnity勉強会にて

時は変わりまして、VRCUnity勉強会における通常の作業部屋のお話をします。

VRCUnity勉強会では、平日はだいたい18時くらい~明け方まで、休日はだいたいいつでも人がいることが多いです。アバター改変していたり、ワールド作っていたり、Blenderしていたり、テクスチャ作っていたり、やっていることは様々です。突然アイデア交換したり、「わからん」って言うと突然「こうすればいいよ」って呟きが飛んできたりします。私もBlenderに関しては初心者なので、非常に助かっています。

たまに人が多いと突発でプチ講座が開催されたりします。「VRChat Advent Calendar 2020」17日目担当のエスニヤさんの「ライティングの基礎を理解してワールドをエモエモにする」講座なんかは涙なしには見られませんでしたね。

普通の作業と雑談に加え、分からない人へのサポートも行っています。最近だと、
「アバターアップロードしたから今度は髪型を調整したい」→「アバターに付いているシェイプキーに良さげなのがある」
「専用服が上手く動かない」→「Prefix/Surfixなどを使い慎重に作業してみる」
「専用服じゃないけどこの服が使いたい、何でもする」→「Blenderを開くのが一番手っ取り早いね」
などのやり取りが行われました。概ね1対1の講座みたいな感じです。ついでにより良いやり方とかがあると他の人からツッコミが入ったりします。てんやわんや。

VRCUnity勉強会での個別対応を行って感じたことの中で大きな意味を持ちそうなことは、
・1対1orそれ以上なので細かいところまで対応できるし、対応すべき
・1体1orそれ以上なので人数に負担が比例する
・質問側のモチベは基本高い

辺りでしょうか。

・1対1orそれ以上なので細かいところまで対応できるし、対応すべき
最も根本的な部分ですね。ここでいう「対応する」とは、ただ実装できれば終わりではなく、実装がしやすいように個々人に合わせて説明を変えるなどの工夫を含めて「対応する」という意味です。
人によってはHieralcyやInspectorの場所が分からず迷子になるならば、画面のどの辺(右、左など)に該当する項目があるかを指示したり、Unityの文字が読みづらいために作業が難航するならば、色情報で認識させるなどの工夫をしていきたいですね。これに関しては完全に教える側の経験と技量です。
こういった情報を引き出すためにも、作業の合間に軽く雑談をしてやるのは割と重要です。気を引き締め続けても疲れてしまいますし、そこから「実は文字が読みづらい」「実は色覚特性持ち」などの情報が引き出せればとても美味しいです。
更に、質問側は理想をストレートに叶えようとしてくるので、それが実際に叶った時の嬉しさを一番近くで共有できるのがいいですね。中毒性すらあります。

・1体1orそれ以上なので人数に負担が比例する
単純に、違う日で同じ質問を3人にされたら、答える側は3回答える必要があります。答える人が同じではないかもしれませんが、組織全体として質問者が増えるほどに回答側の負担は増します。回答側もリソースは有限なので、辛いときは辛いです。
どれくらい辛いかというと、テンプレで「初心者Unity備忘録に目を通しましたか?」と聞く程度です(元々初心者Unity備忘録サポートサーバーだったし……)。
もちろん、いっぱい質問があるのは嬉しいし勉強会としても健全だと思うのですが、それはそれ、これはこれ、という感じです。ミクロとマクロ、と言った方が伝わりやすいでしょうか。

・質問側のモチベは基本高い
そもそもなんですけど、通話に入ってくる多くの人は目標実現へのモチベがめちゃくちゃ高いです。マジで驚くくらい食らいついてきます。アバター改変系が多いのでそれを指して言えば、それこそ自分自身の姿となるわけですから、理想に近づけたいという意思がすごい強いのが伝わります。
「○○がしたい!」→「つまづいちゃった……」→「聞きにいこう!」が質問側の一連の流れなので、やりたい事のためなら手段を問わない人もまぁまぁいます。「そこでBlenderを開きます。」と言っても全然平気。
たまにUnityに裏切られて意気消沈している人もいます。これはUnityが悪いので、フォローしながら一緒に格闘しました。寝て起きたらまだやってて執念を感じたこともありました。Unityのバグをピンポイントで引き当てていた人とかもいて、逆に驚いたこともありました。



続・初心者Unity備忘録

11月くらいから計画して、12月の頭くらいから書いていたのが、冒頭でも紹介した「続・初心者Unity備忘録」です。こちらはこれまでに培ったノウハウを文字情報として残し、読者の方々に広く理解してもらうことを目標にしています。
講座のアーカイブ等は残っていますが、どうしても文章と比較した動画や音声の情報の弱点として「振り返りにくい」という点が挙げられます。文章は自分のペースで早く読むも遅く読むも自由であることが利点として挙げられます。

また、内容の順序も編纂し、公開講座では理論→実践だったのを、備忘録では実践→理論の順に修正しています。備忘録では章ごとに区切られているため欲しい情報へのアクセスが容易なのと、初心者には理屈は難しすぎる(後述)ことに気が付いたからです。
実際のところまだ完全には完成していないのですが、少なくともそれなりに読める状態でBoothに置いたはずです。もしお時間ある方がいらっしゃいましたら、備忘録の読みにくい点等を指摘していただけると嬉しいです……

執筆を行って感じたことの中で大きな意味を持ちそうなことは、
・同じ内容を多くの人に伝えることに向いている
・反応を確認することが極めて困難
・本だけではサポートしきれない部分がある

辺りですね。

・同じ内容を多くの人に伝えることに向いている
公開講座と似ていますが、こちらの強みは「時間に左右されないこと」だと思います。繰り返しになりますが、公開講座やそのアーカイブは自分のペースと合わないことがあります。その点、本として出したものは理解が難しければいくらでも立ち止まったり戻ったりすることができるので、情報伝達という点に関しては公開講座よりも優秀かもしれません。
この点は特に意識して執筆していて、はじめての部分は細かすぎるくらいにステップ分けをして解説し、前の章で出た部分は説明を軽めに行う、といった使い分けをしています。加えて、解説編と名付けた4章6章はAnimatorの解説とギミックの「本質」に焦点を当てて応用のための解説を行っています。知識としては難しいものですが、情報として(特に文章化して残すものとして)価値のあるものだと考えています。

・反応を確認することが極めて困難
本は執筆したら基本的にそれっきりです。実際の読者が読んで、内容を理解していることを確認する術が基本的にありません。よって、公開講座よりも一方的なものとなってしまいがちです。
それだけではなく、情報が間違っていた場合や読みにくい場合も筆者がそれを認知することが困難となっています。たとえツイートされたとしても全てを拾えるわけでもないし、そもそも「情報が間違いだ」と分かる人がどれだけいて、その中で誰かが伝えてくれるのか、ということを考えると割と絶望的です。ついでに、バージョン更新をした際に伝える術も実はあんまりなかったりします。
この辺に関して、「本は一度手を離れたらどうしようもないもの」と割り切るしかないかと思います。それだけ、推敲などには気を配る必要があるはずなのですが、時間がなさすぎて(どれくらい時間がないかというと、この文章を12/20の22:45に書いているくらい時間がない)全くと言っていいほどできませんでした。ここは反省。

・本だけではサポートしきれない部分がある
一応サポートサーバーとしてVRCUnity勉強会を提示していますが、そもそも本来は本で完結すべきなのです。しかし、実際にはちょっと特殊なことをしようとすると「実は例外的にこうしなきゃいけない」とか、「実はそもそもアバター側が一般的ではないから難しい」とか、どうしても壁にぶつかりがちなのです。
特に今回に関してはある程度改変初心者(SDK2でエモートスイッチが実装できる程度までが前提)向けということもあり、本は基本的で王道的なことを中心に編纂しています。むしろ、不用意に手間を増やさないために一部省略している部分すらあります(Write DefaultsとかHas Exit Timeとか、解説編の章では取り上げています)。
もちろん例外を取り上げてまとめることもできますが、そうすると一般的には不必要な文章が増えてしまい、汎用的に読みやすいかと言われると首を傾げる結果となってしまうと考え、少なくとも今回に関しては不適という判断を下しました。



人に教えるということ

そもそもなのですが、人に教えることは想像以上に奥深い難しさを持っています。様々な教え方に一長一短があり、加えて場合状況に応じて教える側の取るべき対応とかも変わってくるので、一筋縄ではいかないなぁ……という想いです。学校の先生なんてマジで尊敬モノですよ……

これは教える側のエゴなのかもしれませんが、「私が教えた人がいつか、その人一人でも成功体験を積んでくれると嬉しいなぁ」と思っています。できなかったことができるって、根本的に物凄く楽しいはずなんです。ただ、そこに至るまでのハードルってめちゃくちゃ高いんですね。

それとは別に、VRChaterって「共有することの楽しさ」をよく知っている人が多いはずです。フレンドと一緒に新しいワールドへ行く、一緒にゲームしたり、もしかしたらホラワに行ったりするかもしれません。青ユーザー以上になればそのような共有を行うフレンドが多かれ少なかれいることが多いはずです。

私が取った方策は「教える過程で共有することの楽しさを取り入れる」ことです。特に作業部屋での対応をしている時。相手の話を最後まで聞く(相手始点の共有をさせる)、完成したら大袈裟なくらい褒める(成功体験の共有)、といったことを意識しています。VRC内では押しつけにならない程度に(そういう話題になった時に出す程度)自著である「続・初心者Unity備忘録」を勧めるようにしてます。それこそ私がサポート窓口になれるというのもあります。

また、共有の過程では相手に心を開いてもらうことも無視できない要素です。時と場合、そして相手との相性によってどのようなアプローチをすべきかは変化します。説明した論理を府に落とさせた時に信頼感が生まれる場合もあれば、相手と同じ視点に立って感情から組み立てた方がうまくいく場合もあります。相手が発する些細なサインも見逃さないようにしたいですね。私はまだまだできませんが。



人間の限界

人間は限界を超えることができる生き物です。まさかとある惑星に住む一種の生命体が、ものすごく広く深い知性を持ちここまでの文化を構築することになるとは、神がいるならば流石に驚くでしょう。そう、種族としての人間は限界を超えることができます。

では、個としてみた時はどうでしょう。個人個人に与えられた素質はバラバラで、私にできることが全然できない人だっていますし、あなたが当たり前に行っていることが私にはできないかもしれません。各個人の持つ力や知性にはばらつきがあって、限界だってあります。

でも、それを認知することはとても難しいです。不器用な人や頭の悪い人を見て「どうしてこんなに簡単なことができないのだろう」と思ったことや思われたことが人生で一度くらいはあると思います。めちゃくちゃ簡単なことで、「当たり前」って人によって全く違うんですね。それどころか、同じ人でも時間をかけるとまた違ってくるという非常に厄介なものです。

この文章を読んでいる多くの人は日本人VRChaterでしょう。我々の多くの間では、Unityを使ってアバターをアップロードして使うのが「当たり前」ですよね。凝った改変はできなくても、色やアクセサリーで個性を演出するのが「当たり前」ですよね。
でも、一度海外Publicを覗けはそちらの世界はアバターワールドに置いてあるペデスタルを使うことが「当たり前」の世界です。UnityのUの字すら知らないのが「当たり前」なのかもしれません。

これはまだ目に見える例ですからとても分かりやすい差です。しかし、これが個々人の能力の差だったらとても分かりにくいのではないでしょうか。小学校のテストは100点を取るのが「当たり前」だった人と、別にテストの点が低くたって構わないのが「当たり前」の人では価値観も大きく変わってくるでしょう。でも、目に見えない上に共有することもまずないだろう価値観というのは差がとても分かりにくいものです。「どうしてこんなに簡単なことができないのだろう」が発生してしまうのです。

自戒ですが、教える側としては常に「当たり前」は違うのが「当たり前」であることを意識する必要があると思います。自分には簡単にできることでも、相手からしたら難しいかもしれない。自分は日常的に行っていることでも、相手からしたら初めてかもしれない。それを意識して辛抱強くやっていく必要があります。Unityの細かい文字が読みづらい人だっている。Armatureの存在する意味を知らない人だっている。それがその人にとっての「当たり前」だというのは日常茶飯事です。人間には限界があるのが「当たり前」、知らないことがあるのが「当たり前」。

私はUnityが楽しい派の人ですが、分かることが増えたりできることが多くなるのが楽しいと感じています。これは私の「当たり前」です。人間は根本的にできることが増えると楽しいと感じる、と思っています。
Unityに限らずですが、「分かること、できることが楽しい」ことを知らないのが「当たり前」という人ももちろんいます(勉強に楽しさを見いだせず生きてきた人に多そうという偏見です)。ここの差がとても埋まりにくいことを感じています。

分かることは楽しいのですが、「分かることは楽しい」ことを分かるのが非常に難しい。ここを乗り越えさせるのが教える側としての永遠の課題だと思います。大袈裟なくらい褒めることにも繋がるのですが、人間の脳って案外単純なので、上手くいった時にちゃんと報酬を与えることでこれに繋がってくれるといいなぁ、という希望的観測です。



VRChatは優しいが、易しくない

よりVRChatに漸近した話をしましょう。本来VRChatでは一部の開発者がアバターをPublic設定でアップロードし、一般のユーザーはペデスタル、もしくはClone Public Avatarでそれを入手しPublicアバターを使うというのが想定のはずです。

そもそも、我々が日頃使っているVRCSDKの「SDK」とは、「Software Development Kit」の略称です。ソフトウェア開発キット。その名前から分かる通り、一般ユーザー向けではありません(もしくは、一般ユーザーがソフトウェア開発をするのでしょうか)。

正直、VRChatにおけるアバター改変は易しくないです。確かに、最近はインターネット上に多くの情報があったり、聞けば周りの強い人が教えてくれるという優しい環境ではあります。しかし、そもそもUnityを導入している時点で敷居がめちゃくちゃ高いです。Unityは女の子の着せ替えツールじゃないんですよ?

そもそもアップロードにSDKが必要な時点で、万人が各々アバターをアップロードすることはまず想定されていなかったでしょう。海外Publicの状態が想定されたVRChatの使い方のはずです。というか、我々が特殊すぎるだけです。SDKはUnityが使えるのが「当たり前」な人に向けて提供されているはずなので、そもそも一般ユーザーの事なんて考えていなくて当然なのです。ある程度Unityに関する能力があるという前提で当然なのです。



これからのアバター文化のために

VRに限らず、「アバター文化」というものは現在進行形で広がりを見せています。これから来るアバター文化の時代において、VRChatのこの状況は健全といえるでしょうか。私の答えは「断じて否」です。

現在のVRChatにおけるアバター文化は、ただアバターを身に纏うだけでなく、元の状態から改変をし個性を付与するところまでがセットだと言えるでしょう。例えば、色改変ができないとなったらとても窮屈ですよね?しかし現状では必ずUnityという開発ツールを通すしかない。これは万人向けとは言い難いですね。

私は、より改変が手軽にできる状況を作ることが文化的にも重要だと思います。簡単な色変え程度であれば単一プラットフォーム上で完結してくれるのが理想です。難しいかもしれませんが、理想を語るだけならタダなので……

まず、改変のしやすさ・とっつきやすさとカスタム性の高さ・突き詰めやすさは基本的に相反することを留めておいてください。自由度が高く何でもできるほど、「何からすればいいか分からない」が起きがちなので、現実問題としてはある程度割り切る必要があります。

ちょっとVRSNSプラットフォームを俯瞰してみると、バーチャルキャストは割といい線に行っているように見えます。THE SEED ONLINEと連携し、バーチャルキャスト上でアバターやアイテム、ロケーション(ワールドのようなもの)の購入(もちろん自分で作ってアップロードすることもできます)、購入したものの使用まで単一プラットフォーム、それもVR空間内で完結している良い例だと思います。
オブジェクトの色味などの細かい調整はできないので完全とは言えませんが、方針としてはとても支持できるものです。

VRoid Studio始めVRM規格周りにも期待をしたいです。VRMファイルを自分で作るのは難しいですが、用意されたVRMを複数のプラットフォームで使うのは容易です。国際対応も必要ですが(情報古かったらごめんなさい)、安全性を確立したうえでデータに軽く手を加えられると非常に夢のある話だと思います。

逆に手軽さに極振りした例としてはRec RoomやREALITY(VRSNSプラットフォームとはちょっと違いますが……)辺りでしょうか。自由度を犠牲にする代わりに、万人がカスタムしやすい仕様になっているように思われます。Rec Roomはカスタムするためのアイテムを手に入れるのが若干遠いですが……。

とにかく、これまでに「キャラメイク」と言われていたものが、より多種多様なアバターで、より手軽に、より自由に、より誰もができるようになったら、と考えるのはとても夢のあるお話じゃないですか?

勿論VRChaterも頑張っています。例えば、改変支援ツール「キセテネ」「ツケテネ」などはUnityよわよわ勢の強い味方ですし、そうでなくても説明書が非常に充実している商品や、何よりも相談相手に困らない人的資源の多さが一番の武器ですね。

プラットフォームが多様化することはいいことだと思います。願わくば、様々な環境でちょっとずつ異なった形でのアバター文化が形成されていくと面白いかもしれませんね。万人向けのプラットフォームと玄人向けのプラットフォームの分化、なんてこともあるかもしれません。
多様化の流れの中で、最終的にはVRChatはその自由度を保ちつつ、Unityを通すという点でやや玄人向けという立ち位置になるかもしれませんね。



おわりに

まとまりのない長文でしたが、とにかく「みんながみんなUnityできるわけじゃないよ、今VRChatしてない人は尚更だよ」ということが伝われば幸いです。
Unityができる皆さんはきっととても知的ですから、心のどこかで「Unityができない人が普通は大多数なんだ」と留めてくれることでしょう。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


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