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1週間VR体験実験同伴 もう一人の168時間VR体験者

見守ってくださった皆様、支えてくださった皆様、
本当にありがとうございました。

初めましての方は初めまして。GlinT Fraulein (グリント) と申します。今回は、168時間VRに居続けるとどうなるかという趣旨の実験を行いましたので、その結果を纏めた記事となります。

細かいルールはこちらをご覧ください。実験中によく聞かれたのですが、お風呂に入ったり食事の準備などは制限時間内という制約はありますが普通に行います。

今回の主走者のラックさんの記事です。こちらの記事に沿った形で内容を綴っていきます。対照実験ということで、双方に通ずる点や相違点に注目していくのが良いかと思います。長くなりますが、最後までお付き合いの方よろしくお願いします。

概要に未記入の補足事項

今回、概要記事に記入していない補足事項として以下の項目がある事を予め説明しておきます。

・当記事執筆者の現実世界の性別は男性です

・概要に記載をした通り、基本的には女子高生アバターを使って実験には挑んでいましたが、Vket4のアバターの試着などの際にアバターを一時的に変更しています。

・VR睡眠は実験前から1ヶ月ほどしており、かなり慣れている状態でのスタートとなります。

タイムラインで見る身体面及び精神面の変化

05/03 09:52 トラッカーの動作確認完了。

05/03 18:00 実験開始

05/03 21:52 この時点で既に太ももを触られた際の感度が高くなっていることを感じる

05/04 05:38 いわゆる「昼夜逆転型」の生活で過ごそうと考えていたものの、流石に眠気がピークに。一瞬意識が飛ぶタイミングも存在した。

05/04 06:35 VR睡眠開始。
05/04 18:45 VR睡眠から目覚める。24時間以上起きていたこともあり、だいぶ長い時間寝ていた。

05/04 21:07 ワールドのロード中に意識が飛んでいた。ロード時間に何もできないことに退屈さを感じる。

05/05 03:05 VRC内で鏡を見た際に安心感を覚えることを認識する。

05/05 07:52 VR睡眠開始。
05/05 15:51 目覚める。夢の中に出てくる人物像がアバターの姿であることに気付く。この日の多くの時間は、仲のいいフレンドと遊んでいた。

05/05 18:32 座った際の姿勢、特に足の置き方について強く意識するようになる。

05/06 02:47 きれいな昼夜逆転は厳しいことに気がつき、睡眠について作戦変更。ラジオ体操までの時間はしばらく仮眠をとることにした。

05/06 05:55 ラジオ体操のために起床。
05/06 07:36 StreamVRの不具合とVRChatの更新のため一度再起動。
05/06 07:48 本睡眠開始、もちろんVR睡眠。

05/06 16:05 起床。夢の中に出てくる人物像がアバターの姿であることが2日連続で観測される。

05/06 23:48 夢の中に出てくる人物像の話をフレンドにしたところ、「無意識下における人間の姿がアバターの姿に置き換わっているのではないか」という知見を得る。

05/07 02:49 VR仮眠開始。
05/07 06:22 起床、やや寝坊。ラジオ体操へ。いつの間にか折り返し地点を超えていることに気が付く。
05/07 08:16 本睡眠開始。

05/07 15:25 起床。少し早めの傾向。「限界!スクワット部」に参加した疲れからか、この日は夢を見なかった。

05/07 19:35 チュートリアルワールドで初心者案内。いくらでも時間がある分、やりたいと思ったことに時間をかけられるのは良いと感じる。

05/08 03;12 仮眠開始。
05/08 05:27 ちょっと早めの起床。
05/08 07:37 本睡眠開始。

05/08 15:31 起床。ラジオ体操終わってから寝て15~16時頃に起きる生活リズムが体に馴染む。

05/08 18:26 無意識にアバターに合った姿勢・ポーズをとっていることに気づく。

05/09 03:14 初心者さんに向けて深夜のワールド紹介ツアー。仮眠の時間を潰してでも楽しいことはする。あっという間に時間が過ぎて、そのままラジオ体操へ。

05/09 06:09 ラジオ体操にて、他人のアバターの武装に手が当たらないように無意識に回避してしまう。

05/09 07:27 本睡眠開始。
05/09 16:30 起床。

05/09 21:00 ラックさんの実験が終了。せっかくなので終了の瞬間を見届けた。

05/09 21:36 Silent Clubへ。足が自由に動くことの良さを再認識する。

05/10 03:51 少し遅めの仮眠開始。
05/10 05:55 起床。結局ラジオ体操は毎日通い続けた。
05/10 09:06 少し遅めの本睡眠開始。

05/10 14:34 起床。実験後の様々なことについて考え始める。

05/10 18:00 特にアクシデント等起きることなく実験終了。

05/10 18:20 記念の撮影後、VRChatからログアウト。

05/10 23:45 Vket会場の跡地を見にVRChatへデスクトップモードでログイン。しばらくはVRモードでログインしないようにする。

05/11 02:48 現実世界での就寝。
05/11 09:04 久々の現実世界での起床。オンライン授業を受けるタイミングで現実世界に強く引き戻される。

05/12 03:28 2度目の就寝。
05/12 06:47 起床。VR睡眠の慣れすぎで逆に辛い。

05/13 05:04 3度目の就寝。
05/13 11:05 起床。起きる時間が遅い以外は特筆すべきことはなし。

05/13 12:00 観測終了

アバターが肉体・精神に及ぼす影響

ラックさんの述べる変化の中で「アバターと肉体の乖離」というのは一つの大きなファクターです。しかし、今回私が体験して感じたのは乖離というよりかは浸食というものでした。
ラックさんとの条件の相違点として、今回の実験中、私は普段から使い慣れている女子高生アバターを使い続けました。フルトラ環境であったことも相まって、アバターが自分自身だという認識がより強くなったものと考えられます。

鏡を見た際に安心感を感じたのもその影響の一つでしょう。VRC内では現実世界に比べて、自分の姿を鏡で確認することが極めて多いです。何なら多くの人が鏡の前にたむろって雑談をするくらいです。

長時間現実世界とは別の姿でいることで、自分の姿についての認識が揺れ動く中、VR内で鏡を見ることで(鏡に映った自分のアバターを見ることで)、自分の姿はこれなんだという気持ちになることができます。VR空間内における一種の自己同一性の確立とでも言えばよいでしょうか。

詳しくは次で述べますが、特定のアバターが自分自身であるという感覚の増強は、別のアバターになった際に大きな影響を及ぼしました。

別アバターを試着した際の"違和感"

今回は条件に従い女子高生アバターを主に用いて、所謂バ美肉(バーチャル美少女受肉)をして実験を行っておりましたが、Vket会場にて多種多様な別のタイプのアバターを試着する機会がありました。

どのようなタイプのアバターを試着しても、共通して存在した感覚として”違和感”や”恥ずかしさ”という感覚が多かれ少なかれ存在しました。逆もまた然りで、普段使っているアバターに戻った際の”安心感”や”フィット感”もまた強く感じられました。
気になって自分の他の購入済アバターも使ってみたのですが、その場合は”違和感”などは感じられませんでした。

違和感の大小に関してですが、実験中にメインで使っていたのが女子高生アバターだったせいか、女子学生の制服などを着たアバターなどでは違和感が小さく済みました。逆に機械系アバターなどのメインのアバターからかけ離れた姿であるほど、違和感が大きく長時間の試着には耐えられませんでした。
特筆すべき点として、現実における私は男性ですが、男性アバター試着の際は現実の性別に関わらず違和感が大きかった点が挙げられます。現実世界とVR空間でアバターを纏っている時とでは、自分が何者かという意識がかなり違うと言えるでしょう。

VRChatには「改変」という文化が存在します。これは、購入したアバターの髪の毛や服の色などを自分好みに変えていくことや、メガネや髪飾りなどのアクセサリーをアバターに装着することなどを指します。アバターが自分にとって何なのか」という問いへの答えは人それぞれ様々であることが知られていますが、ほとんどの場合改変した本人が好きな姿・なりたい姿などになります。
私にとってのアバターは、「VR世界における自分自身」という感覚が大きいです。ですから、購入・改変を行っていない状態のアバターでは「自分自身のはずなのに自分ではないような姿」という矛盾が発生してしまい、それが”違和感”に繋がったと考えられます。

フルトラで居続けた際の変化

今回の実験において、私は初めてフルトラ環境でのVRCを経験しました。その際に感じた大きな変化は以下の点です。
・アバターが自分自身であるという感覚の増大
・それに伴う現実世界での姿勢の変化
・VR感覚の増大、特に太ももや足といった下半身への影響

フルトラになるということは、文字に起こせば腰や足が動くようになるというだけの変化です。しかしこれが非常に大きな影響を及ぼします。

まず、自分の思うようにアバターが動くことで、あたかもアバターが自分の身体であるように感じました。これは、片手の神経が麻痺した人のリハビリとして、動く手を鏡映しにして両手が動くと錯覚させるものがあり、それと同じ現象といえるでしょう。

普段使っているアバターであることもあり、よく馴染むという感覚が得られました。最初の方は興奮もありましたが、次第に「足もちゃんと動くな、よし!」くらいの軽い認識になっていきました。

次に、現実世界における姿勢の変化です。この辺はラックさんと同様で、アバターの見た目に伴って思考や行動が変化するという結果です。特にフルトラ環境下では、足運びなどがよく見えてしまうため、座り方にも気を配っていました。意識的であったり無意識であったりはまちまちですが、例えばスカートの中が見えないように座り方を変えたり、立ち姿もやや内股がちだったりしました。

そして、VR感覚の増大です。これについては結構長くなるので次のセクションで述べることとします。

総じて、フルトラで居続けることによって、よりVR空間内での様々な現象に現実味が感じられると言えるでしょう。VRとは、日本語に直せば仮想現実。ある意味現実の代替となるものとして真っ当な結果と言えるでしょう。

フルトラとVR感覚について

VR感覚とは、要はVR空間内で起きたことが現実にどの程度フィードバックされるかということです。忘れられがちですが、VR感覚には触覚だけでなく、温覚や嗅覚なども含まれます。今回感じたのは、触覚とパーソナルスペース侵害感に対する大きな変化です。

まずは触覚です。これが前のセクションの直接的な続きとなります。具体的には太ももや脛といった下半身に対する感度が劇的に向上しました。元々感度持ちとはいえ、実験を始めて間もないタイミングで感度の向上が観測されました。
加えて、後半になればなるほど感度の強さというよりかは精度が上がっていきました。例えば、太ももを指1本でなぞられる際に、実験初期は大体なぞられた範囲に対してくすぐったさが出ていました。実験後期はなぞられた範囲がかなりピンポイントにくすぐったさを感じるようになりました。

逆に腕などの元々動いていた部分に関しては、感度はやや向上しましたが下半身に比べれば微々たるものでした。腕や胸、お腹などを触られましたが、想像していたよりかは感度の向上は小さいものでした。

また、3点トラッキングに戻った後に太ももをなぞられた際はほとんどくすぐったさを感じませんでした。フルトラであることにより、現実と太ももの位置がほぼ同じであったことがかなり大きな要因であると考えられます。


次にパーソナルスペースの侵害感です。顕著に感じられたのは5月9日のラジオ体操会場にて、他人のアバターの武装に対し、無意識に手が当たらないようによけていたことです。
当然ですが、現実世界では障害物に体のどこかが当たったら感触があったり、勢いがあれば痛みを感じます。しかしVR内ではそんなことはありません。実際にはそこにないものですから、本来ならばぶつかりそうだからと避けたりする必要もありません。

今回感じたのは、「このまま体を動かしたら、腕が当たってしまう」という感覚と、それに対するフィードバックとして腕が当たらないように方向変換したという結果です。これが触覚の延長なのか、痛覚に対しての避けようという意識なのか、どのようなジャンルのVR感覚なのかはよく分かりません。(パーソナルスペースの侵害感というワードが一番しっくり来たのでこれを使わせていただきました)

帰る場所について

ラックさんとの大きな相違点のひとつとして、私は今回拠点を定めずに活動していました。これが間違いかというと、結論そうでもないと感じました。私は普段から積極的にVR睡眠(睡眠については後述)をしているのですが、一定の場所で寝るわけではなく、その日の気分などに合わせて寝る場所や一緒に寝る人を変えています。

ではどこに心理的安心感を求めるか。一つの考えとして、私は所属欲の充足というものを挙げます。平たく言うと、「私には一緒にいてくれるフレンドがいる」ということです。遠出をしても自分には受け入れてくれる人がいるという安心感であったように感じます。

現実世界では会いたい人にいつでも会うことは不可能です。VRだからこそ、現実でできないことができるというメリットが、このような形でも現れるのはVRの活用方法の多様性を感じます。

眼精疲労について

よく聞かれる点ですが、ラックさん同様最初から最後まで何の問題もなく過ごせました。強いて言うならば、暗めのワールドや睡眠ワールドから明るいワールドに移動した際、かなり眩しく感じました。車に乗っている際にトンネルから外へ出た時の眩しい感覚と同じようなものがそれなりの頻度で起きるので、一概に誰しもが目の疲れを感じないとは言い切れません。

現実世界に戻って気づいた点として、ラックさんとは逆に現実世界のものが少しぼやけて見えるように感じました。これは恐らく、HMDによるものと考えられます。
ラックさんの使用していたHMDはValve Index、これはスクリーンドア効果が気にならないようなHMDです。対して私が使用したHMDはHTC Vive、これはスクリーンドア効果がかなり気になるHMDです。
長時間にわたり高精細とは言い難いHMDを使い続けていたために、眼や脳が勝手にHMDに映された画面を見るのに最低限必要な力までしか出さないようになっていたのでしょうか。

体へ対する負荷

これに関してはやはりないとは言い切れません。HTC VIVEはValve Indexよりもかなり軽いとはいえ468gある代物です。今回私が主に感じたのは首回りの疲れです。

実際、首というのは約6kgほどある頭の重さを支える役割を一手に担っています。更に、首が15°傾くと負荷は約2倍に、30°傾くと負荷は約3倍になるそうです。周りより身長の高いアバターを使っていることもあり、どうしても首が前傾することが多かったように思えます。
恐らく、VRCの標準的な身長(110cm~130cm程度)のアバターを使うことで、首が傾くことが少なくなり負荷は軽減されるのではないかと思います。

体への負荷を軽くするためにも、やはり適度な運動は重要です。今回の実験期間中は毎朝ラジオ体操に参加しました。ラジオ体操はしっかり行おうとすると全身をフルに使うことになるので、体の固まった部分をほぐしたりするのにはかなり良いのではないでしょうか。
実際、私が主に疲れを感じていた首回りの運動はかなり気持ちのいいものでした。体の他の部分への疲れがあまり感じられなかったのも、ラジオ体操が予防的に働いた功徳といえるでしょう。

睡眠と生活習慣について

実験中の睡眠は、VR睡眠(実験中はVRHMDを外さずに睡眠をする行為)をすることで確保していました。

HMDの光量については、ワールドによって調整を変えていました。具体的には、SteamVRのナイトモードは常に共通で使用し、ワールドの機能としてスリーブモード・ナイトモードがある場合はそれらも併用していきました。Advanced Settingsの設定項目での光量減少は、前述の項目を使ってもまだ明るいと感じた際に追加で使用しました。
Valve Indexは頭の横にスピーカー、後ろ側にはスペーサークッションがありますが、無印VIVEは、頭の横や後ろ側にはバンドとケーブルしかなく、睡眠においては障害となるものが少ないと言えるでしょう。

次に睡眠トラッキングデータについてですが、4日分しかデータが記録されませんでした。どうやら、夜の時間帯(05:59以前)に眠り始めないとトラッキングされないようです。

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睡眠時間が短く見えますが、これは朝6時からのラジオ体操に参加するために起きているからです。実際はラジオ体操が終わった7時半からさらに寝ているのですが、残念ながらそちらはトラッキングできませんでした。睡眠が記録されていない日は、夜の時間に寝ないでラジオ体操終了後からの睡眠のみをとっていた日になります。

次に比較のために現実世界で睡眠をした際のデータをご覧下さい。画像1枚目、5月のデータが実験直後数日のデータ。画像2枚目、3月のデータがVR睡眠を日常的に始める前かつ同じような時間帯の睡眠データになります。

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これを見るに、いくらVR睡眠慣れしていたとしても、通常の睡眠をとった方が平均的に深い睡眠はとりやすいように見えます。しかしそれとは別に、VR睡眠慣れしている人は急にVR睡眠をやめるとあまり寝付けない可能性も示唆されています。

これは単純に慣れの問題のようにも思えます。人間は誰しも、慣れていないことをしようとすると緊張したり、思うようなパフォーマンスを発揮できないことがしばしば発生します。睡眠についても、例えば旅館などの慣れていない環境では眠りにくい人がいるように、いきなりVR睡眠しようとしても、もしくはVR睡眠をやめようとしても深い睡眠はとりにくいのでしょう。

今回の場合、実験前から1ヶ月ほどはほとんどVR睡眠をとってきました。VR睡眠に慣れている状態です。この状態からいきなり3日間VR睡眠をやめた結果が今回の、特に5月12日の睡眠に表れていると考えられます。


今回の実験では、ラックさんが前回の実験で用いた昼夜逆転の方針を活用しました。簡単に言うと、人のいない時間帯は暇になりがちなのでその時間を睡眠に転用するものです。

一般的にVRChatに日本人が最も多くいる時間帯は22時から日付が変わる頃まで、逆に最も少ない時間帯は朝8時以降から夕方にかけての時間帯です。もう少し詳しく書くと以下のような感じです。

・朝はラジオ体操には人がいる、それ以外は概ねVR睡眠中
・その後はほとんど人がいない時間帯が続く
・夕方から少しずつ人が増え始める、[JP] Tutorial World なら誰かしら喋り相手がいる
・21時ごろ本格的に人が増え始める。イベントもこの時間帯以降が多い
・日付が変わると人が減り始めるが、2時ごろまでは喋り相手に困らない
・3時台になると多くの人はVR睡眠に入っている。それでも夕方よりも起きているログイン者は多い

今回の実験のように長時間VRChatに居続ける場合、間違いなく人が多い時間帯に起きていた方が飽きません。VRChatを主軸にした生活習慣を考えると、やはり昼夜逆転型が有利に働くように見えます。ラジオ体操が終わった後の8時から8時間睡眠をとると16時になり、一番人がいない時間帯を睡眠に活用することができます。

心拍数から見るデータ考案

まずは、実験中のトラッキングデータ、そして実験後のトラッキングデータをまとめてご覧ください。赤の細い縦線が実験開始と終了を示します。

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5月9日の深夜に心拍数が最大値を記録していますが、これはSilent Clubで踊った結果です。

全体を通して、現実でもVRでも大きな心拍数の変化はないように見受けられます。ライトの項目が長いかと言われると特段そんなこともなく、VR内でも現実と同じような体の状態で過ごすことができたと言えるでしょう。
これはとても良い情報として考えることができます。人間はたとえ長時間VR内で過ごし続けたとしても、心拍数に大きな影響を与えないということは、長時間VR内で過ごすことは体に顕著な悪影響を与えるわけではないという証拠の一つとなりうるでしょう。

食事について

今回、メインの食事としておにぎりを冷凍保存し、食べる際に電子レンジで加熱するという方針をとっていました。結論から言うと、温かい食べ物が食べられたことで非常に充足感が得られました。他にも電子レンジで調理するおかず系なども揃えていたことで、味に飽きることもありませんでした。

メインは片手で食べられるおにぎりでしたが、実際のところは食感にメリハリをつけるためにも他にも様々な食品を用意してました。その中には箸を要求するもの(うどん+パスタソースなど)もありましたが、慣れていることもあり難なく食べることができました。箸で食べるという行為も習熟は必要とはいえ、可能ではあると考えられます。ましてやフォークやスプーンなどの使用が平易な食器を使うことで更に食べやすくなるでしょう。

今回は気になりませんでしたが、更に長時間VR空間に居続けようとする場合は、準備段階で洗い物を出さないことやごみ処理について気を配る必要があるかもしれません。VR空間にいるからといって、現実世界側の環境が著しく悪化してしまうようであれば本末転倒です。VR空間側に悪影響をもたらしかねませんし。

今後の課題

ここまで割といいことばかり書き連ねてきているので、逆にどのような問題がおきて解決のために何が必要かを纏めてみましょう。

・コントローラーについて
問題:持っている手が痛くなってくる
Viveコントローラーは簡単に言うとただの棒です。しかもなんか重たいです(Oculus Touch比)。トラックパッド以外はやけに頑丈なことだけは良い点です。
可能な解決策:別タイプのコントローラーを使う

・トラッカーについて
問題:充電時に体の動きが制限されてしまう。
今回は腰に大容量バッテリーを装備していたのですが、足まで給電するためには標準でついてくるケーブルでは長さがやや足りませんでした。これに関しては準備不足でした。
可能な解決策:長いケーブルを用意する、小型バッテリーを分散して装着する
期待したい解決策:トラッカー自体の電池の持ちがより長くなること

問題:装着時に動きがやや制限される場面がある(床に座る場合など)
地味に困った点です。座りたい姿勢があるのにトラッカーに邪魔されたり、逆にトラッカーに合わせると非常にきつい姿勢になったりしました。
可能な解決策:トラッカーの位置を都度調整する
期待したい解決策:トラッカー自体の小型化

元々道具などに取り付けることが想定されていたトラッカーですが、実際のところはその多くが体に取り付けられているように思えます。HMDの進歩ももちろん喜ばしいことなのですが、そろそろトラッカーも刷新されてほしいところです。

・現実の干渉について
問題:夜に声を出しすぎると近隣住民からクレームが飛んでくる
可能な解決策:発声以外のコミュニケーション(アバターペンなど)を用いる
期待したい解決策:防音住宅に住む
死活問題です。実際に実験の数日前に、話が不動産屋まで波及してしまいました。内実壁ドン案件を恐れながら実験してましたし。将来的には、今でいう「インターネット環境完備」の住宅のようにVRレディの住宅なんかも存在しうるのでしょうか。


ここまで、かなり物理的な話に偏重していることに気が付く方もいらっしゃると思います。実際、VR空間内において問題を感じることは何らありませんでした。
人間、不快な空間に居たくないというのは当然です。その前提で、1週間VR空間内にいましたが何ら不快に思うことはありませんでした。あくまで個人的な感想になってしまうのですが、VR空間の方が現実空間よりも楽で楽しいです。

その他

・実験中にVRChatの更新やSteamVRのバグなどで数回再起動を余儀なくされました。

・VRChatinHereは何故かうまく動かないことが多く、途中からあまり信用しないことにしていました。

・VRHMDは縛り上1時間あたり5分まで(1日あたり2時間まで)外していることができましたが、外した時間が一番長かった日で1.5時間程度で、平均は1時間程度でした(VRChatinHereが息をしてなかった時間があるので信憑性は微妙ですが)。

結論として、VR空間に長時間いるということはそう難しいことではありません。VRCにおいて紫ユーザーだったりプレイ時間1000時間以上だったりする人なら尚更です。なんなら前準備の方が大変です。

重ね重ねになりますが、今回の実験中は楽であり、楽しかったです。そう言わせる魅力やコンテンツ、そして人々がVR空間に、そしてVRCに存在していました。もちろん全てが完璧という訳にはいきませんが、素晴らしいポテンシャルを秘めていることに違いはありません。


加えて言うならば、この実験が真に成功と言われるならばそれは、私やラックさん以外にも多数の長時間VR体験者が現れて、今回の私のような「1週間VR空間に居続ける」存在が普遍的になった時ではないでしょうか。

もちろん実験単体としてはこれで完結です。しかし、私が期待したいのは今回行ったようなことが何ら特別ではない未来です。
古のインターネットがそうであったように、今のVRというのは未だ限られた一部の人のものです。しかし、いつの日か技術が、時代が追いつく日がやってくるでしょう。誰もがVR空間にアクセスできる日がやってくるでしょう。その時に私はVR空間にいるかもしれないし、もしかしたらもっと別の場所に行っているかもしれません。どちらにせよ、この実験記録がいずれやってくるその日に少しでも貢献できれば幸いです。


某ウイルスの影響で時間的余裕ができ今回の実験に参加できた一方、バイトの予定が消滅し金銭的には余裕がない状況となってしまいました。
おこがましいお願いではありますが、もしよろしければ生命に関わる重要な欲しいものリストの方を公開しているので、ご支援頂ければ幸いです。


最後になりますが、今回のきっかけとなったラックさんを始め、実験を応援してくださった皆様、実験中に出会った皆様、そして最後までこの記事を読んでくださった皆様に感謝の意を残して終わりとさせていただきます。
皆様、本当にありがとうございました。


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VRというもの自体、まだまだ序章に過ぎない。私はそう思います。

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