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姪が世界だと気づいた日から

8月17日(土)

13日から16日まで休みだったので、久々の仕事日だった。出勤してからようやく本日〆切の原稿に着手。私がキーボードを叩く音だけが、閑散としたオフィスに響く。

気づけばオフィスにはTと私しかいなかった。12時前にランチに行こうと誘われ、財布とスマホだけ手にしてうきうきと出かける。

職場から東に進んで徒歩五分程度、初めて入る純喫茶で、名物らしい焼きカレーのランチセットを頼んだ。セットでついてきたサラダがドカ盛りだったが、お洒落カフェの申し訳程度のセットサラダの存在意義がわからないと常々思っていたのでうれしい。続いて運ばれてきたメインの焼きカレーもボリューム満点、チーズが山盛り、夏野菜もたっぷり入っていて食べ応えがあった。

暴飲暴食続きの胃にはがつんと来るが、気づけば食べきってしまう。

Tは食後、この喫茶店の食べログ評価を調べて、高めの数値に納得していた。彼は食べログの評価に絶大なる信頼を寄せていて、基本的に彼が行きたがる店はすべて食べログ評価3.5以上の店だし、行った店がいい店だったら「さすが食べログ評価が高いだけある」などと恥ずかしげもなく言ってくるので、私は「クソキモ食べログ信者め」と言ってめちゃめちゃバカにしている。
私は食べログ評価に関わらず愛し抜けるポイントが一つありゃいい派で、そういう自分にとって居心地のいい店を探してそこに通いたいと常々思っている。女子会でも食べログの数字の評価より写真や紹介文を見て店を決めるし、同人誌『東京一人酒日記』を作るために行った店も、基本的にはネッ上の数字は参照せずに直感で選んでいた。

しかし、Tと私が地元の名店の食べログを眺めているうちに、サイゼリヤや磯丸水産やドトールや、そういったチェーン店ばかり取り上げてなにやら熱いレビューを書いている写真クソ下手ユーザーを発見してしまった。彼が評価した(チェーンの)居酒屋やレストランはなんと200軒以上! 当然料理や酒の味にはほとんどふれず、自分がその店に立ち寄った経緯や、メニューを見て逡巡する様子が詳細に記されている。これはまぎれもない食レポおじさんである。食べログは彼のようなおじさんに支えられているといっても過言ではない。

私たちは、食後に運ばれてきたアイスコーヒーをすすりながら、食べログのプロフィールでそのユーザーが三十代インディーズロックバンドのギターを担当しているらしいことを確認すると、彼の食べログレビューの内容のなさに爆笑し、さらにバンドの公式ホームページをググってバンドメンバーの写真を確認するなどしてさらに爆笑したのだった。夏休みの時間の潰しかたとしてわりと最低だったと思う。ちなみに彼のTwitterのフォロワーは60人だった。

さらに彼の半生や彼のバンドについて調べていくと、なんと、そのバンドが一年以上ぶりにライブイベントを主催するという告知が流れ(ギター氏は最近、資格の勉強で忙しく、バンド活動にはあまり力を入れていないらしい←食べログレポ情報)、そのライブがまさかの本日、夕方16時開場だという。これはタイムリーすぎる! 今日彼の半生を食べログから辿ったのも何かの縁、まじで運命っしょ行くしかないっしょ! 私が入場料(1500円)もフリードリンクチケット(2000円)も払うから行っておいでよ! とTを焚きつけるも、クソつまらない食べログ信者のくせに「10万もらっても行かねえよ」などとクソつまらないことを言うので、食レポおじさんことインディーズギタリスト(ファッションセンス中二)を拝む機会は永遠に失われたのだった。

そんなに言うならぐりこが言ってくればいいじゃん、というカウンターパンチを浴びたが、私は今日18時からアラウンドトゥエンティーのU先生が整体で私の身体をいい感じにしてくれることになっているし、9月1日にはハロオタの友人にハロプロ公演に連れて行ってもらうことになったので、そんな意味不明なサイゼ食レポアラウンドサーティーインディーズバンドマンの応援をする余裕はないのだった。

そういうわけわかんないタイミングに運命感じちゃってわけわかんないバンドマンに貢いじゃうような頃を過ぎていて本当によかったと思う。

何が言いたいかというと9月1日のハロプロ公演まじで楽しみです。私はこれまで生で見たことあるのがこぶしファクトリーだけで、各グループの新曲を聞き比べたかんじでもこぶしの「Oh No 懊悩」が最強じゃない?って思うけれど、実際に生で見たらどうなるんだろう! 研修生もすごいしJuice=Juiceのひとりで生きられそうな歌も共感しかないし、本当に本当に楽しみですね!

寝ようと思ったら、弟夫婦から姪の生誕一周年記念スタジオフォトとそのオフショットが送られてきて、何百枚もある写真を全部保存しながら泣いた。ひさびさに涙流して泣いた。
姪、生まれてきてくれてありがとう。すくすく大きくなってくれて本当に本当にありがとう。
君がこのどうしようもない世の中に爆誕したその日から、私の脳内にはずっとスピッツの「日なたの窓に憧れて」のメロディが流れ続けているよ。君がこの世界に存在してくれているだけで私はずっと幸せだよ。

そうして改めて考えるとたぶんやっぱり、本気で生きてるものを私は推したいのだと思う。食レポバンドマンじゃダメだったな。

#日記 #エッセイ #食べログ #ハロプロ #こぶしファクトリー #子ども #スピッツ #日なたの窓に憧れて

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