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二度寝と読書

7月31日(土)

全然なんとも思っていない知人と同衾する夢を見て起きる。
衝撃のあまり二度寝してしまい(言い訳)、10時起き。

結局、朝ご飯とも昼ご飯ともつかない食事をして昼前に出社。楽しげにテイクアウトのランチを食べる同僚たちを横目に黙々と仕事をした。張り切って働いたら三時間ちょっとで終わった。今日納期のライティング仕事だけでなく明後日の打ち合わせのための準備も。やればできる。家が暑すぎて全然集中できないので、職場だと仕事がはかどるはかどる。

退勤し、無事にライティング仕事が終わった祝いという名目で、行ってみたかった四ッ谷CRUZに向かう。土曜だし混雑していたらやめようと思っていたけれど、ランチとディナーの谷間の時間だったからか大丈夫だった。期間限定のプルドポークバーガーを注文。

ビーフパテと、甘辛いタレで味付けした細切れ豚肉、それに酸味のあるコールスローが入っている。別々で食べてもおいしいだろうけれど、合わさると複雑な味わいでめくるめくおいしさがあった。平常時はクラフトビールも出しているそうだけれど、ビールにもよく合うだろうな。

カフェに寄ろうか悩んだけれど寄らず。明日も外食はやめようと思う。何冊か本を買ってまっすぐ帰宅する。

時間のある夏の間に積ん読を消化しようと思い、買ってきた本ではなく、本棚で眠っていたイ・ギホ『誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ』を読んだ。すべてタイトルに人名が冠された短編集。フリマアプリで自分の小説を出品した人に会いに行く作家の話と、ある刑で警察に出頭した女性の供述書の体をとった話がよかった。あとはそれ自体が一つの作品になっている長いあとがきも。
夕飯に大根おろしを作っていたら親指の先端までおろしがねですってしまって、純白の大根おろしが紅く染まった。


8月1日(日)


今日こそは二度寝しない、という強い意志で8時起きに成功。空いているうちにと思ってすぐさまスーパーに買い出しに行く。
帰ってきて朝食の準備。最近駅前にデニッシュ食パンの出店が出店していて、昨日が最終日で半額になっていたので買ったチーズ味のデニッシュを切って焼く。普段自宅でパンを食べることがないので、せっかくならカフェのモーニングっぽくしようと、一つのフライパンでチーズ入りスクランブルエッグと魚肉ソーセージを焼き、プチトマトをワンプレートに盛りつけ、ヨーグルトも準備する。

デニッシュはおいしかったし、久々にコンセプトを持って自分の食事を丁寧に用意してゆっくり食べたので満足した。「喫茶店に行きたいけれど行かないで家にいる」と思うとわき上がってくるさみしさと不満を紛らわすことができた。そういえばフライパンを使って調理したのも久々だった(暑かった)。

満足したはずなのに、デニッシュがおいしすぎて、切り分けて冷蔵庫にしまった残り分も次々に食べてしまった。明日の朝食にしようと思ったのに。カロリーは見なかったことにした。
小麦粉とバターには中毒性があって食べれば食べるほどまた食べたくなる。と、原材料のせいにしてみるけれど、自分の意志が弱いだけだ。だから自宅にパンを常備しないようにしているのだ。そして満腹になって床で昼寝した。結局二度寝。

日中は、暑い部屋で扇風機の風を浴びながらひたすら『限界から始まる』を読んだ。上野千鶴子・鈴木涼美の往復書簡。鈴木涼美の文章はどうも危なっかしいというか、え、そんな物言いをしてしまうの、と感じることが多くて書籍を買うのは敬遠してきたのだけれど、割と最近彼女が炎上していた「エロス資本」という概念について初っぱなから上野千鶴子がばっさり斬っていておおっとなった。手紙という形式だからか、よくある対談本よりも両者の文章に相手の中に深く深く切り込んでいこうという意志が感じられて興味深く読んだ。母娘の関係性についての話がなんとなくタイムリーでやはり一番印象に残った。上野千鶴子の、母にとって娘が一番辛辣な批判者だから自分は子を持たなかったという話も、鈴木涼美の、母が嫌悪する職業や生き方を敢えて選んだという話も、どちらも他人事に思えなかった。

人の多い場所に出向く気はしないが、もう少し体を動かさないとまた夜眠れない気がして、夕方少しだけ涼しくなった頃に出かける。コンビニを何軒か梯子して、オルタナ旧市街さんのネットプリントを印刷したり、仕事に必要なものを買ったり、チケットを発券したり、タコスミートを買ったりする。

帰宅してすぐ、オルタナ旧市街さんのネットプリントを読む。香港に旅行してデモに遭遇した二年前の記録。街の熱気や雨のにおいまで生々しく伝わってくるような文章。香港には私は行ったことがないのになんだか懐かしいような気持ち、「行ってみたい」ではなく「また行きたい」というような感覚を得ている自分がおかしい。異国をあてもなく歩くような旅がしたい。

午後8時、メイコとしゃんぶるぶらんしゅの編集会議のためLINE通話。秋の文フリに向けて新刊を作ることに決めたので、そのコンセプトとタイトル決め。先週会ったときに、それぞれ5つくらいはタイトル案を持ち寄ろうと話していた。私はあれこれ書き出していたら9個になってしまい、多くなっちゃったなあと思っていたのだけれど、メイコはといえばなんと31個アイデアを持ってきていた。企画100本ノックを課せられてる新入社員なの?

しかも、話し合いの結果、お互いが持ち寄った案ではなく、先週会ったときに雑談のような会話の中で出た最初の案が一番しっくりくるということでそれが採用された。なんだこれ。青い鳥現象かな。
何にせよしゃんぶる本のコンセプトとタイトルが無事に決まったのでよかった。あとはコンセプトに沿った小説とエッセイを執筆するだけだ。個人本のほうは中古マンション購入&リノベ奮闘記になる予定。

電話を切る前に、先日メイコが「卵の賞味期限が切れるからほっけを焼いた」という謎ツイートをしていたことを思い出して真意を聞いてみたところ、ほっけが魚でなくホットケーキであることが判明した。あれみんなわかってたのかな。ホットケーキをほっけって略してるの。


8月2日(月)

結局昨晩はうまく寝付けず、寝不足で目覚める。しかし9時からプロジェクトの打ち合わせがあるので二度寝せず出社しなければならない。ふらふらで支度して家を出た。
毎年なぜかこのプロジェクトに入れられているけれど、今年私が組んでいる相手は、話も長くないし自分の分担の仕事を仕上げてこないこともないのでさくさく進んだ。去年まで組んでいた人たちがおかしかったんだな。そして、ここ最近ずっと言っている気がするけれど、本当に、以前と比べて自分の意見が通りやすくなって、仕事がしやすくなった。

夕方に退勤し、表参道へ。必要なものを買った後、カフェに入ろうか悩んでやめる。

帰宅して、洗濯をした。夕飯、ほうれん草と豚バラ蒸しと目玉焼き、大根おろしと梅のスープ、目玉焼き。

椰月美智子『ミラーワールド』を一気に読む。男が家庭に入り女が外で働くのが当たり前の社会、という設定で、現実に起きた事件や政治家の発言も取り入れて男女反転させて描きだした小説。2021年の日本に生きていて、日々いろんなことに腹を立てたり傷ついたりしているけれども、それでも小説でミラーリングされて初めて気づくグロテスクさもあった。日本は男女平等だと思っている人も、この本を読んだら現実のおかしさに気づくのかな。いや、この本が誇張して書いているだけで現実はそんなにひどくないって思うんだろうな。逆に、自分や国を正当化する言い訳を並べそう。「自分は差別なんかしていない」とか「他国の方がひどい」とか「この小説で書かれているような○○はよくないけれど現実の○○は多くの場合被害者にも責任がある」、とか。鏡が映し出すものも見ようとしない人には見えない。

爪を塗り直し、日付が変わる前に寝る。




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