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採用面接をする側として気をつけていたこと(転職を考えている方は必見)

ある日、上司から呼ばれて「社員を採用するから面接をしてほしい」と頼まれた。
中途で入った社員に面接をやらせるっていうのは面白い会社だなと思った。

当時勤めていた会社の採用面接は三段階。

現場の担当レベル

部長レベル

社長レベル

もちろん僕はペーペーなので、最初の面接を担当することになる。
現場の担当レベルは大体僕ともう一人現場の社員、もう一人総務的な人と合計3人で面接をすることが多かった。

僕が営業を担当していたのが、マニアックな金融のデリバティブ(怪しくないですよ)で、会社自体も大きくないので、金融業界にいない人には認知度ゼロだった。

この面接の話を聞いた時に、面接をされる方にはなったことがあるけど、面接する方にはなったことがなかったので、非常に困った。自分の中に全く基準がなかったのだ。
上司に相談したら、「お前の好きにやっていい」と言質を取ったので、好きにさせてもらうことにした。

もちろん、新しく採用する人は
業務のことは詳しい方がいいし、
英語もできた方がいいし、(半分くらい日本語を話せない人がいる会社だった)
人好きする方がいいし、
頭がいい方がいいし、
言い出したらキリがない。

当時、私が勤めていた会社は新卒・中途関係なく入った社員は3年で半分以下になる状態。基本的に営業なので、多少頭が悪くても愛嬌でカバーして成功する人もいるし、理路整然と緻密に組み立てて行く人もいるし、190cmの長身外人にガーガー叫ばれて、ムカついてPCの画面を投げつけたような(日本人離れした)日本人もいるし、他の関連会社からは動物園と揶揄されていた。
愛嬌(人柄)で入った人は、最初はみんなから馬鹿だ馬鹿だと言われ、キャッチアップをするのが結構大変。でも、人柄がいいので、みんなに愛されることも多い。愛嬌採用でも成長して、「馬鹿」が昔話になるまで頑張ることができれば全然OKだったが、個人的にはあまり好きではなく、理路整然派としてシュッと仕事をしたいし、そういう人が好きだった。

採用した人がこの動物園のような会社で3年続けば、その採用はきっと成功だと思ったが、雇った人にどのような能力があれば、3年居られるのか考えあぐねていた。新卒でも中途でも3ヶ月で辞めてしまっては、本人も不幸だし、会社としても損失だ。(実際、3ヶ月続かなかった社員もいるし)
当時、僕は30代で、新しく入社した人の教育係を拝命していた(押し付けられた)ので、上司がどうせ入社したら世話しないといけないんだから、それだったら採用面接にも入れという意図だったと思う。

色々考えを巡らすが、あまり自分の中に明確な基準がないまま、面接の当日になってしまった。


面接に来た人は、若く第二新卒くらいの年齢だった。
総務の人の志望動機等典型的な質問に、明るさマックス、緊張マックスでその若者は回答していた。
初めての面接官体験だったが、どこか他人事だった。
その彼が「金融志望です」「マーケット志望です」「御社で頑張りたいです」って連呼しているのだけが印象的だった。
きっと今はやる気があるから面接に来ているのだろうが、彼は果たして続けられる程やる気があるかわからなかった。うちの会社にフィットするかわからなかった。

「何か質問があったらどうぞ」と総務の人に促されたが、正直、あまり良い質問は思いつかなかった。

金融市場にいる人は世間話で「今日の日経平均はどう?」とか「ドル円はどう?」みたいな話をよくするので、世間話のつもりで、「日経平均についてどう思いますか?」と聞いてみた。
イメージとしては、「今年の巨人はどうですか?」と聞いているのと対して変わらなかった。

そうすると、溌剌としていた彼の顔が凍り付いていった。
もしかしたら、株はやっていないけど、FXをやっているかもしれないので、助け舟のつもりで、「ドル円でもいいですよ」と言ってみた。

更に彼の顔が青白くなった。


沈黙が流れた。
きっと彼に取っては長く感じただろう。




結論から言うと、僕は不合格に一票入れた。

彼が実際に入社していたら、営業成績トップになるかもしれないし、社長になるかもしれない。それは誰にもわからない。
しかし、「金融志望です」「マーケット志望です」「御社で頑張りたいです」って面接に来て、日経平均もわからないって、努力が足りなさすぎると評価するに至ってしまった。
少なくとも面接に来た時点で、本当に受かりたいと言う気持ちがあるのかが信じられなかった。もし本当に入りたい気持ちがあるのであったとすれば、その目標に向かって努力が足りなかったと思う。
面接の時でさえ頑張れないのであれば、入社して仕事に慣れた時にモチベーションは維持できないだろうと判断した。

百歩譲って、日経平均が答えられなくても、「入ってから勉強します!」ってさっきまでの元気で言えば、頑張るつもりはあるし、言われた質問に真摯に回答しているように見えて、「何にも知らないけど愛嬌枠」採用の可能性も出てくる。
(実際、愛嬌枠採用の人もいる。)

逆に、「金融が好きです」って連呼していなかったら、それはそれで良かったかもしれない。志望動機として「給料いいって聞いたんで」とか「定時に帰れるみたいなんで」とかの方が良かったかもしれない。少なくとも、僕は納得できた。

その面接以降、採用面接の時には必ず日経平均とドル円を質問した。
そして、何人も採用したし、不採用にもした。



それから数年後、自分が再び面接を受ける立場になり、世界の株価指数、金利、為替の動きを面接直前まで下調べして面接に臨んだ。


案の定、面接官にアメリカの金利の動向について聞かれた。

面接5分前に確認していたのに、頭が真っ白になってしまった。
とっさに口をついて出た言葉が「入ってから勉強します!」だった。

面接官に「20代の未経験の人じゃないんだから、、、」と苦笑いされたが、
見事に愛嬌枠で合格した(笑)

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