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空想ごっこ

空想ごっこ。

私が小さな喫茶店のマスターだったらいいのにな。
ブラウンの壁と小さなステンドグラス窓、椅子はビロードの赤色のソファと木製のアンティーク、人工大理石のテーブル、古い天体模型。
私はここではただの「無口なマスター」で、他には何も求められない。

不登校の少年には甘くないココアを、無口な美しい女性には紅茶を、本を片手にやってくる初老の男性には珈琲をいれてあげられる。小さなチョコレートを添えて。

私は誰にも名前を聞かないし、誰も名前を聞いてこない。

でも、名乗るなら仮名がいい。たとえば花の名を、たとえば鳥の名を、たとえば石の名を。みんなわかってそうしている。野良猫のふりをした猫又が、窓硝子の向こうでウインクする。

どんな名前のお店がいいだろう。空白、という名前なんてどうだろうか。



Edeniという名前のガーデンを作るのもいいなあ。

果樹とハーブがたくさんで、野良っぽい畑があって、薔薇が一種類だけ植えられていて。モッコウバラもいいけど少しだけピンクっぽい薔薇もいい。ビオトープか睡蓮鉢もあればいい。

微生物と植物と人間、虫や蝶、妖精と精霊が共存できる場所になればいいな。
ところどころに海で拾った石のストーンサークルがあるとか。ワンダーデコールのストーンたちもいるといいな。本当はハクモクレンを植えたいけど、すごく大きくなるからなあ…どうだろ。いいなあ。

予約制で庭や家屋で過ごせるとか。いいなあ。日中限定ゲストハウス。リトリートハウス?