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午前5時というモラトリアムの時間【日記:2023/5/3】

Steamで昨日から配信されているゲーム「午前5時にピアノを弾く」をプレイしました。無料ということもあって、1時間程度で終了する短いボリュームでしたがコンパクトにまとまっており非常に良かったです。
ストーリーとしては、悩み事を抱えた少女が霧の中で出会った壮年の男性をきっかけに過去の記憶を思い出していくという感じ。
霧というと「ミスト」などの影響もあり、ホラーチックな舞台設定に思えますが、文学的で暖かい、ちょっと良い絵本みたいな感触です。

ゲーム形式としては、ADV+ステータス管理系のシミュレーション。選択肢によってステータスが上限するので、どれかがMAXにならないよように気を付ける。どことなくゲームブック的な雰囲気があります。
システム面を大絶賛というタイプではありませんが、ころころ変わる幻想的な霧の中の表現としてはよく、実際に探検しているようなイメージを味わえました。

絵の雰囲気感などを見て、気になった方はぜひやってみて下さい。
繰り返しますが、無料で短いので手軽にサクッとできます。
ゴールデンウィークをせわしなく過ごしている人にこそ、ほっと一息を入れてプレイして欲しいです。
偶には過去の自分が感じた思いに、考えを巡らせてみる時間を取るのもいいのかもしれないですよ?


※以下、ネタバレ込みで少し思ったことを語りたい。




◆忘れることの残虐性について

この主人公のような大事な思い出はないが、そういえば小学生時代に何故か弁護士になりたいなと思っていた頃があったのを思い出した。でも理由はまったく覚えていない。多分給料が良いと聞いたからか、クロサギの影響な気がするが、その頃抱えていた某かの思いは消えてしまっている。
どことない寂寥感と共に、この主人公の思いの一端が理解できた気がした。

人間の生物学的な都合から、記憶を忘れることは必要な機能だということは分かっているが、何で忘れてしまうのだろうは確かに思う。
自分にとって大切な夢や人の記憶を消してしまうことは、過去の自分への重大な裏切り行為だ。そんなことが簡単にできてしまうのだとしたら、人間の脳の軽薄さに怖くなってくる。
コンピューターなら一度覚え込ませれば忘れないのに。よっぽど機械よりも薄情なのかもしれない。

◆午前5時という時間感覚

このゲームは、午前5時から午前8時までに霧の中を探索している、というていでシミュレーションパートが行われる。
なんでその時間設定なのかな、と思ったが考えてみると割と共感できる時間感覚なのかもと思った。

午前5時というのは絶妙で、春~夏であれば日の出直後ぐらいの時刻。
薄靄のかかった幻想的な街という舞台設定を作りつつ、かつ正常な人間がまだ活動開始していない、どことなく今日以前の感覚があるモラトリアムの時間だ。これが6時になると健康的な朝になり、7時は家が活動を始め、8時には家を出発し、9時には社会活動が始まってしまう。
だから5時はちょうどいい。かなり夜更かしした時も、5時になるとさすがに寝ようってなるしね。

◆霧の朝を好きだという自分は好きではない

なんだかとても印象に残っている。
感覚としてはかなり納得感がある。私も昼よりは夜、太陽よりは月が好きだけど、そういうのを好きでいる自分のことはちょっとキモイと思っているし。まあ私の場合、理由がわからないからではなく、闇属性の物を好きでいるのはカッコつけたオタクっぽくて嫌だなと思っているからだけど……



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