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シン・仮面ライダーと詩の心【日記:2023/3/26】

一昨日のことですが、久しぶりに映画を見に行きました。
今話題の「シン・仮面ライダー」。
率直な感想としては、個人的には面白かったけど賛否両論なのは良く分かった、という感じ。
明快でカタルシスがあるストーリー展開というよりは、断片的なエピソードの中から庵野監督の思想を読み取ってねという作りで、『シン・ゴジラ』のような分かりやすい面白さはないかなというのが正直なところです。
もちろん個々のアクションシーンは非常にハイクオリティで見ごたえがあったし、敵怪人の造形もスタイリッシュで見事でした。
個人的には最初の蜘蛛怪人の人が好き。ずっと敬語の悪役ってそこはかとない強キャラ感があっていいですよね。
ただ、どうしてもMAD感というか、やりたいことをやるためにエピソードを無理やりつなげてきているような印象は否めない……
往年のファンや庵野監督節が好きな人は好きな作りでしょうが、
初見の人には向いてないのが確定的に明らか。

総じていえば、鑑賞直後の私も言っているように詩っぽい作品という表現がなんとなくしっくりきます。
言葉やストーリー展開で語るのではなく、動きや情景を駆使し、全体を通してそれとなく主張する。
合っているかは分かりませんが、個人的には”庵野監督の仮面ライダーの歴史に対するリスペクトと信頼”、”50年経って今なお続く仮面ライダーの始まりを描いてやるぞという野心”、そんなものを感じた気がします。

知った風な口ぶりで『詩っぽい』などと言っていますが、私は詩のことが全然分からないので、見当違いのことを言っているかもしれません。
まあ、百聞は一見に如かずとも言いますので、気になる人はとりあえず下記の動画を見て、良さそうなら見に行って下さい。


◆余談_最近読んだ詩について

最近、荻原朔太郎の『月に吠える』を読みました。
相変わらず、詩は何を楽しめばいいのか中々よく分かりませんが、
この詩集の序文に良いことが書いてあったので紹介しておきます。

「詩 は 神秘 でも 象徴 でも 何 でも 無い。 詩 は ただ 病める 魂 の 所有者 と 孤独 者 との 寂しい 慰め で ある。」

萩原 朔太郎. 月に吠える (p.4). 青空文庫. Kindle 版.

これは荻原朔太郎ではなく、序文を寄稿した北原白秋の言葉ですが、
詩の本質をついている良い言葉のような気がします。
詩はただ病める魂の所有者と孤独者との寂しい慰めである”、
つまり詩は万人に向けたものではないと言っています。
物語や音楽、ほとんどのエンターテインメントは、好き嫌いの好みはあれど万人に向けて作られているものですが、詩はそうではない。
だからこそ、詩は理解しにくいし、何を楽しめばいいのかよく分からないんじゃないでしょうか。
でも、詩が分からないというのは逆に良いことかもしれません。
それはすなわち、自分自身が病める魂の所有者でも孤独者でもないということになるわけですから。


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