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広告と人間と”シャルル・ジ・ブリタニア”【日記:2023/10/13】

 世の中には名演説、名スピーチと呼ばれるものがある。大統領とか企業経営者とかがやるアレだ。スタンフォード大学でのスティーブ・ジョブズのスピーチや広島でのバラク・オバマ大統領の演説なんかは有名だろう。しかし、私のようなオタクにとって名演説と言えばやっぱりこの人だ。

 神聖ブリタニア帝国第98代皇帝『シャルル・ジ・ブリタニア』。大人気アニメ『コードギアス反逆のルルーシュ』の主人公の父親にして倒すべき敵。コードギアスは政治も扱った物語なので演説シーンは何度かあるが、やはり印象的なのは第一期6話ラストの彼の演説だ。

「人は平等ではない」。誰もが成長と共に痛感しつつも、あえて誤魔化すその言葉を一国のトップが口にする、その展開にいたく痺れたのを覚えている。現実では、教師も保護者も国会議員も、大人はすべからく「みんな平等、みんな一位」なんて耳障りの良い妄言ばかりを吐くものだったから。初めてコードギアスを見たのは小学6年生の頃だったと記憶しているが、その頃になればそれが嘘っぱちだということは体感していた。どうあがいたって徒競走すれば順位が付くし、ユニフォームの数だって限りがある。家の広さや旅行に行く回数だって明確に違う。それを表立って認めようとしないのは、自分だけが良い人ぶりたがる卑怯な行為だ。子供の頃、私はそんなことを思っていた気がする。

 ……なんてことを最近思い出した。きっかけはスクロールを邪魔してくる面倒なWeb広告だ。近年、蛇蝎のごとく嫌われている広告の数々。なぜ嫌われているかと言えば、やはりそれは広告が悪だからだ。なければ売れないというのは事実だとしても、他の競合を押しのけて勝とうとするのは協調の精神に反しているし、消費者にとっても無理やり物と認識を売りつけられるのは不快なことの方が多い。より分かりやすく言えば、広告は人類の幸福に一切寄与していない。ゼロサムゲームで自分だけが勝つために、人類の資源を消費するそれが広告だ。少なくとも私はこう思っている。

 この構造はどことなく、シャルル・ジ・ブリタニアが言う『人は差別されるためにある』という言葉に似ている。まあ、世界トップの企業が広告業ばかりということを鑑みれば、広告と人の仕組みが同じなのは改めて言うようなことでもないのかもしれないけど。

 人は悪、広告も悪、しかしてそれは決して悲観するようなことではないと思う。差がなくして宇宙は熱的死してしまうんだから、それよりは悪である方がずっとマシだ。まあ、戦争や貧困ほどの巨悪は止めて欲しいけどね。小悪党で生きていきましょう、人類。

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