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元彼の話


初めての彼氏は17の時だった。
自分でも遅咲きだとは思いつつようやく春が来たのだと信じて疑わなかった。

さりげなく道路側を歩いてくれる。
緊張している私にたくさん話しかけてくれる。
出かけるコースを提案してくれる。
勉強やカラオケに誘ってくれる。

惹かれていくのにそう時間はかからなかった。

ある日クラスから男女1人ずつ体育祭実行委員を選出することになった。
高校3年生。HRもみんな内職で忙しい。
友達Aが立候補、その後男の子も立候補で決まったがそれが彼だった。
それを聞きAは気を利かせて代わってくれた。
2人で委員をやることになった。

そんな関係を続けて半年が経った春、相手からLINE

"付き合ってください"

お付き合いが始まった。

たまにする電話も
斜め前の席を見つめる自分も
お土産で渡したスヌーピーのついた筆箱も

全てが初めてだった。


付き合って1ヶ月頃彼が18になった。
誕生日のプレゼント何を渡すべきなのか、付き合ってから頭の中にはずっと渦巻いていた。

悩んだ末に青い眼鏡ケースと折り畳み傘を渡した。

次の日彼の席には青い眼鏡ケース。
昨日までは赤だったのに。嬉しかった。






でも夏になる頃には彼の気持ちは離れていた。

鳴らないスマホ
遠い隣の席
キーホルダーはポケットの中


どう話しかけて良いのかも
どうしたらやり直せるのかも
数学の成績と反比例するかのように分からなくなっていった。



秋。誕生日の2週間前。

1週間ぶりに返ってきたLINE
"明日放課後会えない?"

覚悟はできていた。
修復もその努力もできていなかったのだから。


帰り道。彼はなかなか話出さなかった。
もう私の家につく頃"あのさ"

もう少しで受験だから勉強に集中したい
別れよう

あとは準備しておいた台詞を声にするだけだった。
"分かった。お互い受験勉強頑張ろうね"
そうして彼は帰路についた。

気付かないうちに降っていた雨の中私は動くことができなかった。
次の日は目が腫れて休んだ。
明日からは勉強を頑張って桜が咲いたらもう1度やり直そう。そう決めた。


2週間後の水曜日。

正門横で後輩と喋っていると彼が後ろから歩いてきた。門を通れば横を通るはずなのに彼は引き返していったらしい。

彼の隣には友達がいた。私の友達Aが。

気付いていた。

別れた後彼が学校に早く来るようになったこと
放課後教室に残るようになったこと

あぁ、今日だったんだな。





振り返ると虚しかった。
初めてを全て捧げたこの恋が砂になった。



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