シェア
基山瑣末
2023年4月6日 18:02
友人の死は私の下へ1番に知らされた。彼には身寄りがなかったのである。 遺品整理を頼まれた私は彼の借りていたアパートへ来た。寂れた2階建てであった。彼は売れない物書きだった。 外観に違わず、部屋の中も辛気臭かった。どことなくじめじめしていて、黴の臭いが満ちていた。何も面白味のない簡素な部屋だったが、ただ1つ、異様な存在感を放つものがあった。 机上の花瓶に、枯れた花が1輪挿されていた。花瓶の形
2023年5月18日 18:00
全てへ納得する最善の方法は、今もまだ白昼夢か何かの中であると思い込むことである。 もぬけの殻になった部屋を見ても、私は驚かなかった。予想していたことがとうとう起きたのだ、それだけである。その内李緒は出て行くだろうなと分かっていた。端から噛み合っていないことなど明白であった。出会いからして恋愛とは呼べない代物であった。バーで飲んでいた所へ、恋人と喧嘩した李緒が半ばヤケクソ、酩酊も甚だしい状態で声