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人事が炎上せずにSNSで発信するために知ってほしいこと
Xを中心に、人事・採用担当者の投稿がたびたび炎上して話題になってしまっていますね。そのたびに、「そもそも人事がSNSで発信しないほうがいい」という主張を見たりもします。
確かに人事がSNSで発信することには大きなリスクがありますが、だからといってその対策が「そもそも発信しない」だけでなくてもいいのではないかと思い、この記事を書いています。
既に人事として情報発信している方、これから情報発信する方に少しでも参考になったら嬉しいです。
なぜ人事の話題は炎上しやすいか
人事としてSNSで発信する方にまず知ってほしいのは、「人事の話題は炎上しやすい性質がある」ことです。なぜなら、ほとんど全ての人にとって人事の話題は自分ごととして感じるためです。
就職・面接・残業・お給料・評価・賞与・退職・有給休暇など、人事が話題にすることをほとんど全ての人が経験しているため、人事が発する話題を自分ごととしてとらえやすい。そのうえでの失言だから、炎上し話題になりやすいのです。
さらに言えば、これら人事に関する話題はほとんどの人が何かしら嫌な思いをした経験があります。面接官の態度が横柄だったとか、残業が多いとか、評価に納得できないとか、有給がとりづらいとか……誰しも一度は経験しているはずです。
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人事であるあなたが発信するのはそういった、「みんなが経験したことのある嫌なこと」だと自覚しましょう。いわば、人の心のやわらかい箇所を刺激する話題なわけです。炎上を避ける避けない以前に、人事の仕事はそういった人の心のやわらかい箇所を刺激する可能性のある仕事であることを、まずは覚えておきましょう。
炎上する発言をしないために知っておくこと
では本題の、炎上する発言をしないために知っておくことを紹介します。
人を選び評価しているという意識を捨てる
人事の炎上の多くが、人を選び評価する立場からくる「上から目線」に起因しています。
まず、「人を選び評価している」という意識を捨てましょう。人を評価している意識でいると、自然と上から目線の発言になり炎上につながってしまいます。この意識を捨てられないなら、社名出しでSNS発信しないほうがいいです。
人事担当者であるあなたは書類選考や面接で通過・見送りの判断をしているかもしれませんが、それはあなたが人を選び評価しているわけではありません。あくまで、自社で定めた(あなたが定めたではない)採用基準と合致しているかを判断する一部機能をあなたが担っているにすぎないのです。
採用選考という短い時間かつ特殊なシチュエーションで候補者の価値を評価するなんて、本来できるはずがありません。せいぜい、自社の採用基準と照らし合わせる一部機能を担うのが精いっぱいです(それですら間違う可能性は大いにあります)。
にもかかわらず、人事担当者が人の価値を判断できるかのように錯覚し、選んでいる立場と勘違いした発信をすれば炎上してしまいます。運良く炎上しなかったとしても、反感は避けられないでしょう。
人事の仕事の結果、命を落とす人すらいる
186人。
これは、2023年に就職失敗を理由に自ら命を絶った方の人数です(警視庁Webサイト)。進路や収入の悩みを含めるともっといます。
採用担当者が日々行っている見送り連絡。その結果に思い悩み、自ら命を絶ってしまう方がこれほどいるのです。
先ほども述べたように、あなたは決して人を評価していませんし選んでいません。しかし、見送り連絡を受けた側はそう感じません。
一度の不採用連絡で自分のすべてを否定された気分になる方もいます。ましてやそれが何件も何件もつづけば、人生を狂わせてしまう結果にすらなり得るのです。
あなたがどれだけ誠実な対応をしようが、こういった悲しい結果を引き起こす可能性があります。人の人生を文字どおり左右してしまうのが、あなたが行っている人事の仕事なのです。
これでもまだ、あなたは人を選んでいる意識で上から目線の発信ができますか?ここまで読んでピンとこなかった方は、すぐにSNSの発信をやめたほうがいいでしょう。
重大な個人情報を扱っていることを自覚する
人事はその仕事の性質上、社員や候補者の住所・給与・家族情報などの重大な個人情報を扱います。当たり前のことですが、これらの「人事として知りえた情報」はSNSに限らず一切他言してはいけません。
そして、これらの「人事として知りえた情報」をちらつかせる発信はまちがいなく反感を買うのでやめておきましょう。
「私はあなたの住所と配偶者の名前を知ってます」と言われたら気持ち悪いでしょう?
人事は日常的に個人情報に触れるので感覚が麻痺してしまう方がいるのですが、あなたが日々触れているのは通常では知りえない重大な個人情報なのです。個人情報を漏らさないのはもちろんのこと、個人情報を知っていること自体をSNSで発信するべきではありません。
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採用で出会った候補者の話題を出さない
次に大事なのは、選考で出会った候補者の話題を出さないことです。
「今日面接に来た人があまりにも準備不足だった」などのネガティブな投稿はもちろんダメですし、「とても素敵な方にお会いできた」「内定承諾してくれた」などのポジティブな投稿もやめておきましょう。
例え個人が特定できない投稿であったとしても、当事者本人がその投稿を見れば自分のことだったと気づいてしまいます。内容がポジティブかネガティブかに関係なくSNSで自分の話題を出されるのが苦手な人はいるので、SNSで候補者への言及は避けましょう。
こういった特定候補者へ言及したポストがあると、炎上とまではいかなくとも配慮に欠けていると悪印象を持たれる可能性があります。人事は重大な個人情報を扱う仕事ですから、配慮のない人事が所属する会社は大丈夫か、と不安に思われてしまうわけです。
ちなみに、「候補者本人に許可をとればOK」と考える方もいます。確かにそうかもしれませんが、選考をする側とされる側という関係性上、本当はいやでも断りにくい空気になってしまうことも考えられます。気を使ってイエスと答える方もいるでしょう。相手に余計な気を使わせないためにも、やめておきましょう。
主語の大きい「べき論」を発しない
安易な「べき論」も炎上につながります。冒頭に述べたとおり、人事の発する話題は人の心のやわらかい箇所を刺激するので、「〇〇するべき」といった強く見える発信は反感を持たれやすいのです。
「こうしたほうがいい」という考えを発信したいならば、べき論にせずに主語を自分にして発信するといいでしょう。
例えば「週に1冊本を読んだほうがいい」と思ったのなら、「これから私は毎週1冊の本を読みます」と発信すればいいのです。これを、「人事たるもの毎週1冊の本を読むべきです」と発信すれば反感を買ってしまうでしょう。
安易な「べき論」発信を控えるために、主語を大きくしないこと・何かを主張したいときの主語は自分にすることをおすすめします。
何かを褒めるときに別の何かをサゲない
何かを素晴らしい!と言いたいときに、別の何かをサゲる必要はありません。発信者としては素晴らしいことを強調したいためにそうしているのでしょうが、内容によっては炎上につながりますし、何よりサゲられた側は良い気がしません。
例えば、「弊社はチャレンジを推奨しています。チャレンジしてきた方って素敵ですよね!」であれば全く問題ないのに、「チャレンジしてこなかった人は人間的な魅力に欠けますよね」と発信したら反感を買うでしょう。何かを褒めたいときは、ただ褒めればいいのです。他をサゲるのはやめておきましょう。
法律やSNSのルールを守る
これは「人事だから」というわけではありませんが、SNSで発信するうえでの法律やルールは守りましょう。
例えばXの発信において下記は、特別な許可がある場合をのぞいていずれも行ってはいけません。
漫画などの著作物や芸能人をアイコンにする
漫画のコマをポストする
他者のポストのスクリーンショットを投稿する
前者2つは著作権または肖像権侵害、3つ目はXの利用規約違反です。
人事はその仕事の特性上、高い倫理観とコンプライアンス意識が求められます。にもかかわらずこういった法令違反/ルール違反を行えば、会社の信用を自ら落とすことになってしまいます。
SNSで発信しない選択肢もある
以上、炎上せずに発信するために知っておいてほしいことをまとめました。もし、上記で挙げたことのうち一つでも賛同できないのであれば、SNSでの発信はやめておきましょう。発信しない選択肢もあっていいと思います。
以下はこの記事のまとめです。チェックリストとしてお使いください。
人を選び、評価している意識を捨てる
人の人生を左右する仕事だと認識する
重大な個人情報を扱っていることを自覚する
選考で会った候補者の話題を出さない
主語の大きい「べき論」を発しない
何かを褒めるときに別の何かをサゲない
法律やSNSのルールを守る
なおこの記事は、今後人事としてSNS発信をする方向けに書いたものであり、過去に炎上した投稿主やその所属企業に対して何かを言いたい意図は一切ないことを最後に申し添えておきます。
お読みいただきありがとうございました。
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