民間企業の総合職志望なら文系大学院への進学はリスキー(実証研究も紹介)

「文系大学院の学生は就職で有利になるのか、不利になるのか、あるいはそのどちらでもない(関係ない)のか」という疑問を抱く人をよく見かけます。

「理系の人たちは大学院修士課程へ進学することが多く就職も決まりやすいから、文系の大学院生も同じく就職はしやすいのだろう」と無邪気に考えている人も少なくないようです。なかには「大学名コンプレックスがあり、在学している大学には納得していないので、学部卒業後は有名大学の大学院に入学して【学歴ロンダリング】したい」と恥ずかしげもなく告白する人もいます。大学院は基本的に研究をする場なので、研究意欲がないまま入学すると後悔することになるのではないかと先が思いやられます。


文系大学院(修士課程)への進学でメリットを得られるのは、以下のような人です。

  • 研究者を志望する人(博士課程(後期)への進学を視野に入れる人)

  • 大学院で身につけた専門知識が職務遂行上有益となる職種への就職を目指す人(シンクタンク、コンサル、国際機関など)

  • 取得のためには大学院修了が重要となる資格(税理士、臨床心理士、教員専修免許など)を目指す人<大学院で取得できる資格とは?7つの資格の概要と取得方法を解説|Focus (chuo-u.ac.jp)

  • とにかくビジネススクールで学んでみたい人

以上に当てはまらないようであれば、文系学部の大学生は文系大学院への進学はしない方が良いです。というのも、文系大学院へ進学してしまうと、民間企業の総合職への就職活動が学部生より難しくなるからです。前述したように、大学院で学ぶ専門知識を活かせる企業や職種であればあまり問題ないのですが、一般企業の多くはそうした専門知識を求めていません。しかも大学院生は学部生よりも年齢が高い「はみ出し者」で、頭でっかちの「扱いにくい人物」というイメージを持たれがちなのだろうと思います。

そんなことはない、自分は大丈夫だと思っている人は、一般企業の総合職の採用試験で「大学院での研究経験が、我が社でどのように活かせますか?」「なぜ大学院に進学しているのに我が社を志望するのですか?」と質問されたときに、面接官を魅了するレベルの返答ができますか?
できるなら良いのでしょうが、普通の文系大学院生は、悲しいことにそれができません。「別に我が社に入社しなくても、そのまま研究者になればいいじゃないか。その才能がないから嫌々ながら今更就職活動をしているのだろう」と腹の内で思っている相手を見返すのは大変なことです。

したがって、専門職種を目指さず、一般企業の総合職狙いという場合は、文系大学院への進学は安易にするべきではありません。


以上のことは、実証研究でもある程度の裏付けが取れています。
大学院卒の就職プレミアム―初職獲得における大学院学歴の効果― (jst.go.jp)

この研究では、初職の獲得は①理系大学院、②理系大学・ 文系大学、③文系大学院という順番で優位であると指摘されています。つまり、理系の大学院生は学部生よりも内々定を獲得しやすい一方、文系の大学院生は学部生よりも内々定を獲得しにくいのです。
※この研究では学部生と大学院生の能力の違いは十分に考慮されていないので一定の留保は必要。