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【ゲーム】『パラノマサイト』ネタバレありで語りたい

だいぶ発売セールも終了して1週間。そろそろネタバレありの話もしても大丈夫ですかね?





今回これより先はネタバレ区域。未購入未プレイの方は各種ストアで『パラノマサイト』のページへ遷移すべし。














ギミックの妙。人情に訴えるキャラクター。次回作への布石

・ゲームを作るのが上手い

とにかく『パラノマサイト』とプレイしてると「このゲーム上手いな…」と思わせる部分がたくさんあった。

パノラマ(周囲を見渡す機能)を使ったちょっとした驚かせはある種ホラーの定番。導入部分でしっかり機能を使わせて調べさせる。そして、振り返ると…なんだなにも無いじゃん。からの!葉子の死体がバーンッ!って流れは恐ろしくも感動すら覚える。そのあとの場面でも、志岐間春恵との遭遇時もビクッとした。

さらに並垣祐太郎と両国橋で初めて出会った時点で辺りを見回すと、実は灯野あやめがいて会話できたりと、この機能を使うと「怖いけど探索すれば良いこと(物語が進む)があるぞ」と掲示するのが非常に上手い。しかもそれが最後の最後まで続いて活用される点もアツい。

今思うと、なめどりはそうした探索の面白さの補強になってたな…

情報の出し方も非常に上手い…というか基本的に親切だった。

分かり切ってるし、なんなら資料で読み返せるけど、プレイヤーに確認を取らせる。そうすることでこの場面で情報がキャラにも行き渡っているんだと強調してくれる親切さ。話のテンポを考えたらサッサと済ませるか省くんだろうけど、一旦止まってくれることで情報を整理できるので、推理に時間がかかる自分にとっては嬉しかった。

情報は逐一確認できるし、基本的にストーリーを追っていけばある程度「こうじゃないかな…?」と展開は予想はできる。だけどこのゲームの面白いところは、その予想を上回る真実を直後に出して驚かせてくれる点。

シリアスなシーンだけど、わさびが鼻にツーンときた時の表情だな…とか考えてた。

特に白石家で開示される情報は衝撃の連続。「まさか…おい嘘だろ!」と登場人物と同じ顔をしながら驚くのはものすごく楽しい。

ここでオレが引き取ったとは言わない。改めてこのシーンを振り返ると、娘を気遣って情報漏洩を徹底してて、津詰の娘を想う気持ちが良く出ている…。

丁寧な情報の出し方やギミックの使い方などをしっかりレクチャーしてくれるなかで、けっこう引っ掛け的な部分も。

おそらくみんなハマったであろうマジックペンのヒント。

まさか会話が終わったと思ったら、実は続きがあってそれが解決策になるとは…。やや意地悪にも感じるが、「残りは繰り返しのセリフだろう」とこれ以上調べなくなる人間の習性を利用した感じが良い。こんなん分かるワケ無いだろ!という不満よりも「やられたッ!」とある種の納得感というか、騙されて気持ちいい感覚を味わった。

マダムとプロタンで蝶澤が軟禁されてる工場付近を探索できるフリーパート。並垣で使った音量ボリューム操作のように、「送り提灯…つまり明かりに関連するのだか、画面の明るさを調整すれば何かイベントが進む!?」と予想して何十分も格闘したのも良い思い出。試行錯誤も楽しいのだ。

同時期に読んでいたこの本では過去の名作ゲームがなぜ名作として語り継がれているのか、デザインの面から紐解いたスゴイブック。これがかなり本作のデザインとも合致していて、やはりパラノマサイトは作る人が上手いんだと確信。いろんなゲームに当てはまるのでゲームレビューの参考になるかと。

上記の本の「物語のデザイン」項では、プレイヤーが自分自身の成長に気づかせるためにスタート地点に立たせるデザインであることが多いらしい。
パラノマサイトも同様に、全ての顛末を見せた後、事件の発端となる最初の出来事へ立ち返らせる。そして最後は、最初に投げた質問をもう一度問いかけるーー。これをあくまで自然に「選ばせる」あたりがまた上手い。
もうこの物語の虜になって、この体験は一生心に残り続けるだろう。
こんな素晴らしいゲームをありがとう。

人情を感じさせるキャラ設定

パラノマサイトの登場人物は全員キャラが立っていて、立っているキャラ同士が会話してると、更に良さが際立つようにできている素晴らしい作品だ。

そのなかで小物の悪役として描かれている並垣祐太郎の資料を見た時が一番印象に残った。
並垣はゲーム外のギミックによって倒されて情けない姿を晒すし、すぐ呪詛珠も渡す羽目になるし、あやめには飽きられてるし、そもそも呪主になった理由もしょうもない。物語の小悪党…序盤の三下敵って感じが一貫してる。本人は切れ者な雰囲気を出したい振る舞いをしてるのが余計小物っぽい。

そんな令和(昭和)の大小物の資料に書いてる「お手伝いさんと食べた賄いのバターご飯の味が忘れられない」という文章に魅かれてしまった。
ただの小悪党大学生としておけばいいのに、プレイヤーに共感させる隙間というべきか、こいつも人の子なのだと思わせるさりげない設定。
ほんの少し、本当に少しだけ、こいつに同情してしまう隙…昭和の刑事ドラマで崖に追い詰められた犯人の自供を聴いている時と同じ感情を、この一文で抱いてしまった。そう思うとなかなかにこの資料も上手く出来ていて、ニクい演出だ。

でもひき逃げはダメだよ絶対。ていうか学校付近で車のスピード出しちゃダメだよ…!

根島もそういった妻を想うが故の行動であることが本編で語られたけど、さすがにマイナス分が強すぎて同じ感情にはちょっと至れない。

そういう意味では、根島みたいな極悪人をポンっと登場させるより、ワンクッションのための小悪党の並垣は必要だったのかもしれない。

一番怖かったシーン

ホラーだけあって怖いとこは怖かったけど、最有力は根島を取り逃した時のエンディング。バッドエンドとしてかなり重く衝撃的な演出(特にBGM怖すぎ)。ジャンプスケア的なのも怖かったけど、こういうモノローグ形式で事件の内容が語られるのは、背筋が凍るタイプの恐怖体験だった。

昔の電話帳とか結構個人情報載ってたもんね…。恐ろしいわ。

灯野あかりも同様で、しかも遥か昔の魂を蘇らせるにはさらに生贄が必要だから更に犠牲が増えるという…考えただけでも恐ろしい。

本作の気になる謎

本作の本所七不思議の事件としてはおそらく伏線が取りこぼされてるようなことは少ないが、ちょっと気になる点も挙げておきたい。

津詰警部は特殊な存在?

本作で本所七不思議の呪い受けた9人。いずれも「誰かを生き返らせたい」と願う人物に発現した。津詰警部以外は。蝶澤麻由は微妙なとこだが、婚約者を蘇らせたら…とは一瞬考えてはいた。いや、普段から覚悟はしていたとも言ってたから違うのか?ともかく、津詰のみ明確に生き返らせたい人というのがいなかった。この例外に意味があるのか、それともただの不幸体質なのか。それとも『落ち葉無き椎』の呪いと真実を暴きたい想いが呼応したからか。続編とかで顔出しとかあるかも…?

灯野あやめは結局…

どこから来たのだろうか。
作中では色々な可能性が憶測に憶測を重ねて語られ、出生の真相が語られることは無かった。本当に黒魔術が成功して篠が転生したのだろうか。蘇りの秘術があるなら、黒魔術があってもおかしくないが…。

それにしてもマダムの今にも吐きそうになってるこの表情、怖いけど好き。
話を聞いて赤ん坊の安否が気になるとこも「母親」なんだよなぁ。

ただ、本編でミヲが岩井の所持していた本は偽物と言っていたし、作中資料を見ても成功したような描写で記載されていない。
…だとすれば、赤ん坊はどこから来たのだろうか。プレイ中は黒幕が置いていったのだと思っていたが、葉子が黒幕だったから年代が合わない。
それとも、まだ何かあるというのか…。

案内人は何者?

もちろん確たる証拠も無い妄想なんですけど、「ナカゴシ」と呼ばれる人物では?
今回の事件のエピローグでは、興家彰吾が晴曼の子孫なのが判明し、何らかの霊感を手に入れたことが分かる。逆崎約子も、呪いを受けてなくてもこっくりさんはしていたことから見るに、白石美智代の霊と融合して、最終的に霊感も手に入れてるだろうと予測できる。つまり心霊対策室としては、2人の霊能力者と新たに繋がりを得たことになるしかも、本編のルート次第では死んでしまう津詰徹生と黒鈴ミヲを生存させながら。
今回の事件、一番得をしているのは心霊対策室のような気がする。そう考えると、事件の解決へ助言した案内人=「ナカゴシ」と繋がっても不思議ではない。それとどの場面だったか、津詰かミヲが心霊対策室に連絡したら、「次の日の夕方までは、動くことはできない」と回答していた。ゲームの時間軸はその夕方までで決着がつく=それまでは案内人はプレイヤーのそばにいるから動けない点にもつながりそうだ。

警察組織モノ(相棒とか)で、主人公サイドで助力していた組織の偉い人が実はとんでもない黒幕で、主人公サイドを助けてたのは利害が一致しただけ…みたいな展開をよく見るので邪推をしてしまう。俺の考察は外れるぞ。

このあたりは続編で語られそうな雰囲気もあるので、新たなパノラマサイトが楽しみで仕方ない。いや~ホントに面白いゲームだった。

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