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『グリッチ・キャスケット』人間と機械が描く、苦悩と祈りの物語【SFアドベンチャーフリーゲーム】

Noteに書くのは久しぶりですね。

Twitterのタイムラインでたまたまスクショが流れてきたフリーゲーム『グリッチ・キャスケット』。ドット絵や諸々の雰囲気が好きすぎて即プレイ。プレイ時間はTureエンドまで約3時間(実績埋めようとするとちょっとかかりそう)。こんな良質なSFアドベンチャーが無料・・・。感覚が狂ってしまいそうになる。

あらすじ

『グリッチ・キャスケット』の世界では、人間の精神の不具合< エラー >を見つけて修正するシステムが存在しています。システムは住民に広く浸透しており、感情をコントロールされることに(一部の人を除き)抵抗感はありません。むしろ先天的にシステムに繋がれない人間は忌避されるほど。

物語の視点は、人間と寸分たがわない見た目の機械である「ロウナ」と、とある事件が起きるまでシステムの教育係をしていた青年「ムツミ」の二つの視点で描かれます。

「ロウナ」視点では、プレイヤーはとある事件で停止状態になったシステムの復旧チームとしてロウナをサポートします。住民に起こる精神不安状態を、システムを通して書き換えて人々を救いましょう。

同時に、仕事をこなしていく中でシステムの停止の原因となった「混迷の日曜」と呼ばれる事件について調べ、物語の真実にたどり着くことがゲームの目的となります。

「ムツミ」視点では、プレイヤーが彼の記憶を追体験して、システム復旧に必要な情報を取得する事が目的です。システムの指導係だった彼に何が起こったのか。記録から言葉を手に入れ、そこから新たな記憶を再生して真相を探っていきます。

管理する側の苦悩

人の精神状態を可視化し、場合によっては修正する。まさにディストピアめいた監視社会の設定。こういう技術は悪用されがちで、管理する側は物語上では「悪」と位置付けされることが多い。

けれど『グリッチ・キャスケット』での管理局のメンバーは善い大人ばかりです。人々の精神を修正することへの葛藤を常に抱え職務を果たしている。あくまで機械であるシステムを家族のように想っているとも。いずれも人とシステムのために最善を尽くそうとしているのがセリフなどから伺える。感情の起伏は見えにくいが、人の優しさを保とうとする姿が描かれている作品は珍しい。

システムは人間になれないの・・・?

どんなに大人たちが最善を尽くしてもどうしようもないことはあります。

コナツは第5世代のシステム。システムを効率良く扱うため、人間の感情を積極的に学ぼうとする。若い子が好む服装に身を包み、限りなく人に近い生活をしていたようだ。

そんな彼女は、エラーへの対処がキッカケで両腕を無くす。その痛みから自分を作った人間を憎むように。「こんなことなら、生まれない方が良かった…」彼女の言葉が胸に刺さる。人間の感情を知ったからこそ、生きる痛みが彼女を襲う。

第6世代のロウナが完全に復旧すれば、停止する事が決められているコナツ。彼女は腕の治療もせず、管理局にも戻らず、残りの時間をただ待つしかない。諦観することしかできない姿が、あまりにも哀しい。

あくまでこのゲームの主役はロウナとムツミ。コナツの物語では無いけれど、その悲しい境遇が印象的なキャラクターでした。救われて欲しい…。


キャラから背景、UIまでドット表現が非常に好みで、なによりキャラデザが良い。中性的な顔つきの表情が希薄なキャラが出るSFが大好きなんです…。

製作者の『路地の浦』さんは新作も作成中だそうなので、雰囲気が気になったのなら『グリッチ・キャスケット』とともにチェックです。



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