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ビジョンデザインに大事なことを語ろう~Xデザイン学校公開講座「ビジョンとパーパスのアプローチと実践」~

7/8(金)に、Xデザイン学校公開講座「ビジョンとパーパスのアプローチと実践」にて、弊社三澤が登壇いたしました。
昨今、「企業、事業やプロジェクトのビジョンやパーパスが重要」といわれている中で、どんな活動があって、どんなことが大事にされているのでしょうか?
この記事では、プレゼンの内容の一部ご紹介と、ビジョンデザインのプロジェクトマネジメントに携わる一員として、感じたことを書いていきたいと思います。

「リ・スタートする企業のビジョンデザイン」株式会社グラグリッド 三澤直加

まずは、グラグリッドで実践してきたビジョンデザインのプロジェクトの紹介から。

「これからの社会はこれまでの社会の延長線上にはない、トレンド分析をしてもわからない」と、冒頭で三澤が述べていました。
今はVUCAの時代だからこそ、「自分たちだからこそ、どんな社会をつくっていきたいか」について考えることが増えています。

そうした切実な問いに対して、グラグリッドでは、表出⇒連結⇒浸透のプロセスをシームレスに行い、ビジョンデザインを行っています。そうしたプロジェクトの紹介を行っていきました。

飲食品メーカーの研究開発部門の問い
ビジョンデザインのプロセス(表出⇒連結⇒浸透がシームレス)

特にグラグリッドのビジョンデザインで活きているのは、ビジュアライズのパワー。
「個性をひろいあげるやり方、吐き出せる関係性づくり」「関係者全員が自分事としてとらえて自走できる文化をつくる」「ビジョンを伝えるコミュニケーション」を大事に行っていくのに、ビジュアルはとてもパワフルに活躍してくれるからです。

ビジョンデザインの失敗する理由

また、イベントでは「つくったはいいけど組織に根付かない」というパターンの原因についても語られました。
「組織に根付くビジョンの鍵は、自分たちらしいユニークさ」そう、三澤は語っていました。人が動くための組織には、組織を知ること、意思、心からの共感が必要なんですね。
(プレゼン終了後に、山崎先生も「人ですね、人」といっていたのが印象的でした!)

ビジョンデザインに大事なのは自分たちらしさ、そして「人」の意思、共感


「アートとビジョン」山口典子氏 (アーティスト/大正大学客員准教授)

つづいては、アーティストの山口典子氏。
「アーティストの目線からみて、ビジョンそのものをどのようにつくっていくのか」について語られていきました。

その中で特に興味深かったのが、山口氏のアーティスト活動はエフェクチュエーション的であるという点でした。

エフェクチュエーションとは:
成功を収めてきた起業家にいられる、従来とは異なる思考パターンを体系化した意思決定理論のこと。エフェクチュエーションとは、未来は予測不能であるという前提のもと、所与の資源や手段を用いて、結果を創り出していくことに重きを置くアプローチである。

山口さんの登壇資料より引用

山口さんの作品「KEITAI GIRL」の起点は、学生時代、バイト先にあった携帯電話のパーツを活かして作った作品だったそう。携帯電話のパーツや、自宅にあったナース服を使ってみたりなど、まさに「手に入る資源や能力、知識、人脈」で、それらをつかって何ができるか考えていく状況だったのだなと感じました。

また、作ったら、歩き回って、人に見せていた。そこで他者からのインプットを得て、コンセプトをたてなおしたりしたストーリーも興味深かったです。
他者からのインプットを、取り入れるかどうかの判断は「直観」だそう。「なんかあるな」と思ったらとりいれる、そうでなかったらおいておく、というスタンスが語られていました。

終盤に、山崎先生が「まさに、山口さんらしい。山口さんがいきてきた道筋そのもの」と述べられていた点が心に響きました。


「ありたい世界をつくるビジョンデザインのアプローチと事例」山崎和彦氏(Xデザイン学校/武蔵野美術大学)

最後は山崎先生。
「ビジョンは上からつくって伝えられていくイメージだけど、実は日本の場合、下からつくっていくほうがいいんじゃないか」という論が述べられていきました。

まず山崎先生のお話の中では、サービスデザインとビジョンとパーパスのつながりについて述べられていました。山崎先生いわく「会社の中であまり考えている人がいないんですよ、タハハ」…

そんな、ビジョンが自分事におちていない状況。
山崎先生は「そうじゃないよね」「世の中が変化しているのに、トップが数年に一度ビジョンを考えていくなんて役にたたない。ボトムアップ的に事業のビジョンやパーパスを作っていかないと、今の世の中わたっていけない。」と課題意識と危機感を述べられていました。

また、課題意識はデザインの立場を担う人々に対しても向いていました。
「デザインの立場の人間は、つい現在の問題解決をしがちだけど、よりよい社会をつくるためのデザイン活動としてビジョン提案が必要じゃないか」。

ポイントは、企業のよりよい状態ではなく、よりよい社会、という点。先生の話の中では、ビジョンの中、そしてサービスデザインの中に「社会的視点があるか」という点を繰り返し述べられていた点がとても印象的でした。

そしてビジョンデザインに大事な点としては「個人の妄想と熱い想い」というのも語られていました。
0⇒1は、妄想や熱い思いを大事に、小さな実験繰り返し、アジャイル的、アングラ的に活動していく。つくったら、ビジョン(ありたい姿)をきっかけに、人はよびこまれていく。デザイン思考はその先にあると山崎先生は述べられています。

ビジョンデザインを捉えるための問い

捉えられるものってなんだろう?


今回、登壇者に共通していたのが、「まずは個人の熱い想いや妄想や思いをだいじに、つくる。そして、外に持っていって、そこからたくさんのインプットを得て、新たな解釈を得て、またつくる」という態度だったように感じます。

トレンドをどんなに分析しても、世の中のテンポはわからないし、先におきることが予測不能です。もはや捉えらえるものは、自分(自分たち)らしさしかないのかな、と思うのです。
自分たちらしさを、捉えられる普遍的なものとして。「自分として、その自分の手元や思い、ひらめきからはじめていく」という、いい意味での「諦め・見極め」があるんだなと感じました。

ビジョンを作るのは誰なのか?


トップからなのか、ボトムなのか。よく議論がおきるポイントではあるのですが、この話をきいていると、「思いがある人」起点なのかな、と感じます。
大事なのは、組織やチームの文化・仕組みがそこに応えて、長期的に試行錯誤しながら育てていく状況にある…という点ではないでしょうか。

アート思考と、デザイン思考ってどうやっていったりきたりするの?


山崎先生が離されていた「アート思考」「デザイン思考」の話の中で、それらの対比と、アート思考で0⇒1~をつくり、デザイン思考でそれを広げる、というストーリーが提示されていた点がとても興味深かったです。
この2つで求められているのって、全く違うんですよね。

私たちグラグリッドでは、大企業のビジョンデザインに携わらせていただくことが多いため、その中で「思いを持った人が、組織のパーパスと自分をつなげてビジョンを生み出せるように、そしていかにその活動を拡げていけるように支援をするか」というのが大きなテーマになっていきます。

ビジョンデザインのプロジェクトを実施するときに、特に「生み出す」フェーズでは、「アート思考」的な部分を呼び起こすために「当事者が描く」という方法をよく用いています。
そして研ぎ澄まされて見えてきたビジョンを「広げる」フェーズでは、デザイン思考を組み合わせて形や仕組みを作るというかかわり方をよくとっています。

また、時に「広げる」プロセスにおいては、対話型鑑賞的なアート思考的なワークショップで思いを表出させた後に、アイデアとして形作るというデザイン思考的なワークを行ったりもしています。

「アート思考」「デザイン思考」行ったり来たりする中で、違和感があればブラッシュアップを行い、ビジョンおよび体験が研ぎ澄まされていくのかなと感じています。

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ビジョンデザインの現場に携わる人間からすると、とても共感できるトピックばかりで、とてもうなずきっぱなしでした。
グラグリッドでは改めて「エフェクチュエーション」輪読会を実施することに。

私たちも、「グラグリッドらしさ」を大事にしながら、ビジョンデザインやサービスデザインを実施し、よりよい社会をつくっていくことを考え続けていきたいなと感じています。

(和田)

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