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マニアが集う場所では、「伝える」グラレコより、「拾ってもらう」グラレコが求められるという仮説

アニメファンの集う場所でグラレコをして感じたこと。
「求められているグラレコが、なんかいつもと違うぞ!」
という感覚について、なにか違うのか? なぜ違うのか?
考えてみたいと思います。

AnimeJapan 2019でグラフィックレコーディングをやりました

先日行われた日本最大級のアニメイベント「AnimeJapan 2019」で、私たちグラグリッドのチームは、グラフィックレコーディングを担当しました。

私たちが担当したのは、世界最大級の動画配信サービス Netflixさんのブース。新作を含むさまざまなコンテンツの裏話を、声優さん、制作陣、出版社さんなどの関係者が、面白く楽しくトークしている内容13セッションを、即興でグラフィカルに描いていきました。

アニメファンが見守る高揚感

1回のトークセッションはわずか30分程度。しかし、その中には、アニメファンにはたまらない話がいっぱいです。アフレコ現場で起きていること。声優さんたちがどんなふうに役作りしているのか。声優さんたちの素顔がみえる、ぶっちゃけ話。アニメーションにかける制作陣の思い。その話を聞くために、たくさんのアニメファンが集まりました。

楽しい体験を投影する存在としての“グラレコ”

そんな、楽しいトークショーですが、メディアや関係者以外の写真撮影はNG。せっかくの高揚感を思い出として持ち帰ることができません。

そこで活用されたのがグラレコです。

トークショーが終わると、唯一写真撮影が許されていたグラレコを求め、多くの方がグラレコの掲示エリアへ大移動。
グラレコを見て、トークショーでの楽しい話がどこに書かれているのか?大好きな声優さんがどこにいるのか?確認し、写真に収めているようでした。
嬉しいことに、隅からすみまで見てくれます。

私たちはとてもびっくりしました。

なぜなら、普段、ビジネス文脈(社会の動向分析や事業戦略など)でグラレコを描いていても、こんなに絵の中身を丁寧に見てもらえることはありません。もちろん、「面白い!」「発見がある!」というアハ体験はあるのですが、なんだか見ている人の目の色が違うのです。グラレコに求めてられることが根本的に違う!ということを感じました。

このマニアが集まる場で、どんなグラレコが喜ばれたのか?

では、この状況でアニメファンが求めていたグラレコとはどんなものでしょうか?

1. “その人”“その作品”の特別な痕跡が見えるグラレコ

今日わざわざ見に来たからこそ理解できる、キャストさんたちのおもしろ行動や、制作陣のぶっちゃけ話。特別な空間を共有しちゃった感が味わえるものとして、その片鱗が見える絵を指差し、喜んでいらっしゃる方が目につきました。

2. “その人”“その作品”についての細部を想起させるグラレコ

「あ、あのシーンだ!あのアイテムだよね。」見たことがある人だけが知っていること。より小さなことほど、見つけるニヤリとします。そういうことって、文字で説明すると野暮ですよね。だから、そっと想起させるような絵が嬉しい。

3. 一刻も早く、映える状態にできるグラレコ

シェアしたい!という思いに早く応えられる、カラフルでスピードが速い描写。その場で目撃しているからこそ、目で変化を楽しめる、シェアしやすい絵があることが求められました。

上記3つのポイントの背景にあるのは、「嬉しい気持ちを共有できる」「共感しあえる」という感情だったように思います。

かわいい!楽しい!良いよね!を共有できること=情緒的価値を満たすこと

グラフィックレコーディングは、「わかりやすさ」「伝えやすさ」「活用のしやすさ」といった、機能的価値にばかり目がいきがちですが、今回のように趣味の世界では情緒的価値を満たす方が、圧倒的に価値が高く、求められているのだと感じました。

わかりやすさよりも、拾う楽しさを味わえるグラレコ

例えば、ゲームに隠しコマンドがあるように。
例えば、何度も失敗するからこそ、のめりこめる迷路のように。
わかりにくい、迷いやすい、見つけるのが大変なものが、楽しさを加熱することってあると思います。

今回のAnime Japanで求められたグラフィックレコーディングは、まさにそんなものだったのではないでしょうか。
「ファンの人だから見つけられるマニアックな話題を潜ませる」
「その場にいた人だけが、読み解けるキーワードが書かれている」
そして、見つけた時に「ニヤリ」とできる
拾う愉しみを味わえる。

よりエモく、より人間的で、ちょっぴり意地悪なグラレコ。

マニアが集う場所では、「伝える」グラレコより、「拾ってもらう」グラレコが求められるという仮説でした。

(三澤)

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