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ジュニアアスリートメディカルサポート通信Vo.3 〜試合で動いているのに、体力が落ちている気がする何故?〜 

ジュニアアスリートメディカルサポート代表の宮田大揮です。我々は、小中学生のアスリートをサポートして5年ほどが経ちました。2024年7月から、クローズされていたサポート体制をウェブ上にオープンしました。具体的には、医学の力をジュニアアスリートの能力を最大限引き出すためにフルコミットする形で使っていこうというのがコンセプトで、アジアから世界に誇れる選手を様々なスポーツで輩出することを目的としています。

 第3回は「試合で沢山動いているのに、体力が落ちている気がする」というご質問に医学的サポートをしている立場からお答えしていきたいと思います。
 これについては、日々のカウンセリング業務の中で小中学生から質問されるというより、ご両親から相談されることが多い内容です。具体的には、「試合が続いていて、疲れが残らないように工夫しているが、1か月くらい毎週末の試合が続いていると徐々に体力が落ちているのか?疲れが出てくるのか?試合で走り切れなくなる。なので数日オフを作って身体を回復させて、本人も疲れてないという状態になったのに、試合では1か月前より走れなくなっている」というご相談内容です。これは、医学的にはとても興味深いです。本来、試合はもっとも強度の高いトレーニングという考え方もできるので、能力的には向上が見込まれるはずです。しかし、実際にはプロ野球選手なども、「春のキャンプでしっかり身体をつくって1年間続けられる体力をつける」と異口同音でおっしゃっています。夏には相当意識しないと筋肉量も落ちてしまうようで、痩せてしまうこともあるとのことでした。

 では、何故そのようなことが起こるのでしょうか?もちろん、そこには疲労の蓄積があります。小中学生で毎週末試合をしていれば、単純にものすごいカロリーを消費していますし、身体をぶつけるスポーツであれば身体の損傷部位の回復にもエネルギーを要するので、日々のトレーニング以上にエネルギーロスが大きいです。しかし、子供の食事量は試合の後だからより増やすということは消化吸収の観点からも難しいですし、むしろ疲れから食事量が落ちることも考えられます。
 しかし、一番大きい問題は、試合に臨む前の身体の中へのエネルギーの貯え方だと我々は考えています。試合では、子供自身が想定している以上に頑張っているタイミングがあり、練習のパフォーマンスを超える動きをしていることが多くあります。そのため、必要とするエネルギー量は瞬間的な増加量も含めるとものすごい量になっていることが予想されるため、試合前に十分なグリコーゲンとして蓄えることができていなければ、試合後に筋肉分解につながることになるので、試合を重ねれば重ねるほど筋肉量は低下していきます(対策については後述)。

 もう一つに脳の問題が挙げられます。筋肉や肺、心臓、腸は脳と密接な関係を持っており、週末の試合を終えた後、次の試合がすぐにある場合は、その予定から逆算して身体の回復に努めようとします。試合でぶつけた場所などもあるでしょうから、ケアも必要ですし、次の試合にむけてトレーニングもしないといけないので、脳はとても疲れています。簡易的に説明すると、

筋肉からは
「怪我を治す必要があるぞ!という指令を脳に伝える(ホルモンによる伝達)」
腸からは
「どんどん食事が入ってくるので、脳に対して消化吸収の効率を上げられるように腸の血流が増加するように指令を脳に伝える」

脳自身も大脳で考え
「次の試合で相手が強いのでもっと走っておかないと勝てない。心肺機能を高めるトレーニングをしよう!高次機能という部分で身体を動かすように促してくる」

つまり、「休め~」「動かせ~」というのが同時に指令が溜まってくるため、どんどん脳の疲労が溜まっていきます。パソコンでいえば、どんどんキャッシュが溜まってくる状態に似ており、それ自体はページの再表示を速くしたり、無駄を省いてくれるメリットもありますが、キャッシュが溜まりすぎるとパソコンが重くなりフリーズしたりすることがあるのと同じで、脳疲労も蓄積しすぎると動きを制限して身体を守る方向に働きます。それが、動きの悪さに見えてしまうことがあるのです。

そのため、我々のサポートチームでは、
① 試合前の栄養の貯蓄をしっかりすること
② 脳疲労防止のため休みとトレーニング日のメリハリをつけること
を提案しています。
①については、カーボローディングをはじめしっかりとエネルギーを蓄える方法を栄養士さんなどのサポートを受けながらアドバイスしています。
②については、パソコンのようにキャッシュクリアが簡単にはできませんし、人間を再起動やリセットすることはできないので、脳も身体も休みになる本当の意味でのオフを設定してもらうことから始めています。
 そんなことか~と思われるかもしれませんが、ジュニアアスリートで競技レベルが高くなればなるほど、レギュラー争いも激しく、子供たちの頭では次の試合に勝つことやどうしたらいいのか?を絶えず考えているので、どれだけ周りの大人がその脳疲労につながる状態を防ぐことができるか?が重要と考えています。
*ただ、甲子園やトーナメントの短期決戦で集中的にやっていく場合は、大会終了後に身体と脳を休める時間を設定してあげる方法も有効です。


このようなことに医学的にフォローすることは日本の保険診療ではできませんので、小児科などで相談することができない側面もあり、我々は2024年7月からジュニアアスリートメディカルサポートとして一般向けにオープンいたしました。ご興味のある方はぜひとも下記サイトもご覧ください。


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