見出し画像

マタニティマークを見て寝たフリをする人|ホラー映画『アス』の恐怖感

先日、間もなく出産の友人とご飯に行ったのだが、彼女(Aさん)が「電車の中で座席を譲ってくれるかくれないか」について話をしていた。

Aさん「マタニティマークを鞄から提げていても、けっこう席を譲ってくれないんだよね」
自分「譲ってくれないってのは、具体的にどういうこと?」
Aさん「疲れているとか体調悪いとかそういう人もいるだろうけど、明らかにマタニティマークを見たのに、目をそらしたり、うつむいて寝ているフリを始める人多いよ〜」
自分「多いんだね。。」
Aさん「そう、こちらからはわかっちゃうのにね。あとはまだお腹が出ていない時期の方がつらいんだけど、その時期の方がより席を譲ってくれない割合が高かったかも。」
自分「お腹出てないから平気だって勝手に解釈しちゃう人もいるんだろうね」
Aさん「ちなみに肌感だけど、譲ってくれるのは30代〜40代の男性の割合が多いよ」

ここにマタニティマークに関する意識調査のデータがある。
http://econte.co.jp/works/maternity/

マタニティマークの是非や改善余地などには色々と議論があるだろうけど、ここで注目したいのは以下のデータ。

マタニティマークの認知度、男性は42.0%、女性は62.3%
マタニティマークに気付いた際に「サポートしてあげたい」は67.6%
70.9%の妊産婦が「周囲のやさしさやサポートを感じた」(29.1%は「感じたことがない」)

「サポートしてあげたい」という人も多く、実際にそう答えた人は行動するだろうけど、Aさんの実感にもあるように、「認知はしているが、サポートはしない」という人も一定割合いるというデータになっている。
またアンケートではサポートする意向を示したものの、実際には行動に移さない人もいるだろう。

「妊婦を、意図的に認識しないように、見ないようにする」という人がいるということだ。


映画『Us(アス)』は、そんな「知らんぷり」に対する問題意識を提起した作品である。

表向きはホラーなのだけど、コメディのようでもあり(監督は元コメディアン)、そして社会派の作品でもある。

バカンスに来た中流層の黒人ファミリー。
そこで突然彼らのドッペルゲンガーが現れ、ファミリーを襲う。

というのが大まかなストーリー。

ネタバレになってしまうのでこれ以上詳しくストーリーについて言及はしないが、メタ的に本作を捉えると「アメリカの特権階級層の意識」についての批判が盛り込まれている。
彼らも「自分たちとは境遇が違う層(つまり貧困層)のことを、意図的に認識しないように、見ないように」している。


冒頭の妊婦さんとの関わり方も同様だし、様々な点において同様の「社会に対する知らんぷり」があるだろう。


・目をそむけていないか?
・君たちがその境遇にいるのはたまたまであって、異なる境遇にいた可能性だってあるのにも関わらず、見ないようにしていいものなのか?
・彼ら(難しい境遇にいる人たち)の犠牲に上で成り立っている君の境遇じゃないのか?


そんな強いメッセージを、恐怖感で訴えてくるのが『Us(アス)』。

鑑賞中は正直わりとドキドキしてしまって背景にある社会問題は深く考えることができなかったのだけど、鑑賞後に、恐怖感が「社会に対する意識」に変換されてくるという新しい映画体験だった。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?