#15 IB試験で成功するテクニック(3)
皆さんこんにちは!
前回、前々回と2回にわたって書いてきた「IB試験で成功するテクニック」ですが、今回でようやく完結させたいと思います。
引き続き「IB試験で成功するテクニック」では学力や知識量とは無関係に、試験のときに自分が持っている力をより引き出す工夫を挙げています。そのため、試験でのパフォーマンスを高められるとは言っても、暗記していないと解けないはずの問題が突然解けるようになるなどといったことは起こりません。本質的に学力や知識量を身につける、いわゆる「試験対策」に関しては、こちらの記事をご覧ください!
Reading Time の活用
この点に関しては、前回の記事で各科目の paper においてどう Reading Time を活用すべきか、時間配分とともに紹介しています。そのため、ここでは改めて詳細な説明はしませんが、科目ごとに活用方法が異なることと、練習の段階から Reading Time も実践すべきであることを強調したいと思います。あくまで私自身の考え方を前回の記事では紹介しましたが、最適な活用方法は人それぞれだと思うので、それを見つけるという意味も兼ねて日頃 past paper に取り組む時から Reading Time を設けて色々と試してみて、自分にとって最適な活用方法を確立しましょう。
試験前の warm up
運動をする前に準備体操を行うべき、というのは当たり前のように認知されていますよね?同様に、試験を受ける前にも脳や体(主に手)を万全な体制に整えるために、warm up を行うべきではないか、と思います。この点に関しても、科目や paper ごとに適していそうな方法が異なるので、いくつか取り上げて解説していきます。
Japanese
Japanese の試験では、自分の考え(分析)をとにかく限られた時間内で紙に書いていく必要があります。IBの試験の中で Japanese の試験は唯一、日本語で回答する試験となるので(GKAの場合)、漢字の抜けがないかなど、実際に書いてみて確認している人も多く見かけます。もちろん、これも重要な準備の一つだと思いますが、個人的には丁寧に書きすぎず、素早く書く練習がカギになってくると考えていました。試験時間の終盤にかけては時間が足りなくなり、徐々に字が雑になりがちですが、これは裏を返すと速いペースで記述を進められるようになってくるということです。しかし、終盤に発揮しているこのペースを序盤から発揮できれば、試験終了間際になって焦ったり、書きたかった内容を割愛せざるを得なくなってしまったりすることなく、余裕を持って答案を完成させられるはずではないでしょうか?試験開始直後はまだ真新しい answer booklet に字を書いていくということもあり、無意識的に丁寧めな字で書こうという意識が生じてしまっているのだと思いますが、warm up の段階であえて殴り書きなど、丁寧ではない字を書くスイッチを入れられれば、序盤からハイペースで回答を進めていくことができ、パフォーマンスの向上が期待できます。ただ、この段階で文字を書きすぎて疲れが出てしまっては本末転倒なので、その点だけは注意してください。
English
English の試験も Japanese と同じく記述量が多いことが特徴となっています。Japanese の試験前に漢字の確認を行うのと同様に、分析の語彙とその spelling の確認を行うのも一つの方法ですが、個人的にはひたすらアルファベットを高速で書いたりしていました。基本的な考え方は Japanese について説明したとおりなので省略しますが、やはりしっくり来る方法は人それぞれなので、ここで紹介している内容は参考程度にして色々と試してみてください。
Physics/Chemistry
これらの科目の Paper 1 は特に、試験時間内に解き切るためには高速で処理を行っていかなければなりません。そのうえMCQには Reading Time がないため、試験開始直後から頭を一気にフル回転させることになります。個人的には、適当に目に入った数字を足したり掛けたりするなど、単純な演算を素早く正確に行えるか試験直前に確認していました。これによって、試験中に「正しく暗算が行えているのだろうか」という不安を抱いたり、確認に時間を取ったりし過ぎずに、自信を持って先へと進むことができたので、試してみると良いかもしれません。
Math
Math の試験では思考力が求められるので、頭を使う準備をするのが効果的だと思います。具体的には、数学の問題を1題解くことで思考力を発揮するモードに入れますが、その際に注意しなければならないのは試験直前に頭を悩ませてしまっては逆効果なので、大量に問題を解いたり、難問をアタックするのは避けたほうが良いという点です。試験直前に行う warm up は自信を付けるなど、精神的な面での効果も重要な側面となっているので、それを達成するためにちょうど良い難易度の問題を各自で見つけたり、用意しておいたりすることが大切です。また、特に Math ではGDCで計算をするだけではなく、表やグラフを作成するなど、様々な機能を活用することになるので、GDC慣れしておくのも試験直前の有効な時間の使い方だと思います。
その他
上で個別に取り上げなかった科目(Geography/History など)に関しても、essay 系なら English 寄り、計算系なら Math や Physics/Chemistry 寄りの warm up が応用できると思います。さらに、全体に対して言えるのは、試験直前は知識の詰め込み(input)に集中しがちですが、試験中に行うのは output なので、それがスムーズにできるような準備をすべき、ということです。IB試験の広い出題範囲のうち、ごく一部を試験直前に頭の中に叩き込もうとしても、その量は限られてしまいますし、叩き込んだ内容が必ずしも出題されるとは限らないので、warm up によって input より output に重点を置いたほうがより確実にパフォーマンスを高められます(持論ですが)。
また、特に朝早い時間の試験では頭の回転も本調子ではなく、体の動きも鈍くなりがちですが、そのような状況を打開するために体を動かすことも重要です。スポーツと同様に、試験もその場のパフォーマンスが評価の対象となり、それはその時のコンディションにかなり影響されるため、「今が一番万全だ」という状態で試験に臨めるように調整しましょう。それと同時に、ペンなどの筆記用具の調子が大丈夫か(インクが切れ気味でないか、芯が折れていないか等)チェックすることも忘れないでください(warm up にはこれを確認する意味合いもあります)!
点数に応じた回答をする
このことは何度も耳にしている方も多いと思いますが、記述不足による減点や書き過ぎによる時間ロスを防ぐためには非常に重要なテクニックです。科目によっても異なるのですが(Biology だととても配点の高い問題があり、その mark 分だけ内容を絞り出すのが大変と聞いたりします)、例えば Geography では以下のような目安があてはめられたりします:
1 mark:一言(キーワードやデータの抜き出し)のみ
2 mark:一言の回答とその補足(理由、特徴などいずれか)
3 mark:回答とその説明をやや詳細に(理由、特徴など複数挙げる)
4 mark:恐らく回答に2本以上の柱があり、それぞれに対する説明が必要
※あくまで経験に基づく個人的な感覚なので正しいとは言い切れません
また、Chemistry Paper 2 は bullet point でカギとなる語句を書くだけでも完答と見なされる問題がほとんどです。その代表的な例として、10年生~11年生の最初の頃に習う atomic radius や ionization energy などの trend に関する問題が挙げられます。実際に May 2021 Time Zone 2 ではこのような問題が Chemistry HL Paper 2 で出題されました:
これに対して、とても丁寧に回答するとこんな感じになると思います:
しかし、markscheme を確認してみると、このようになっています:
さらに、markscheme の3ページ目にはこのように明記されています:
つまり、実は "stronger pull on the outer electrons" などの記述は不要で、
これだけの回答で 2 mark もらえるということになるのです:
そのうえ、markscheme の page 3~4 をよく読むと、以下のような記述が見られます:
つまり、極論 "with state symbols" や "Give your answer to
an appropriate number of significant figures" といった指示がない限り、state symbols(気体なら (g)、水溶液なら (aq) など)は書く必要がなく、すべての数値を 3 significant figures で答えてしまえば良いことになります(Physics に関しても同様です)。ただし、次のような場合には state symbols が重要になってくるので、省略しないようにしてください:
Ionization energy や electron affinity は必ず (g)
Enthalpy 系に関しては state によって値が変わるので要注意
そもそも同じ物質間の equilibrium の場合は state symbol がないと成立しない(H₂O (l) ⇌ H₂O (g) など)
Cell 関連は (aq) と (l) で話が異なる場合があるので要注意
ここではかなり Chemistry に寄った話をしてしまいましたが、皆さんも markscheme を確認する際には最初のほうのページに記載されている注意事項もしっかり把握し、無駄のない答案作成を身につけてください!
MCQは丁寧に解こうとしなくて良い
過去の記事で、MCQの past paper 演習を行う際には単に正答を導くだけではなく、なぜその選択肢が適切でほかの選択肢がそうではないのか説明できるように、と書きましたが、試験では正答を導くことが第一なので、どんな手段であれ誤った選択肢を排除できれば良いわけです。その代表的な例が、次のタイプの問題です:
III の "A colorimeter" が "monitor the rate of this reaction" に使用できるか?という問いに対して自信を持って回答するのはやや難易度が高いかもしれませんが、そもそもこの化学式には (g) が一切含まれていないので II の "A gas syringe" が間違ってそうなのは感覚的に分かりますよね?その時点で、II が含まれていない選択肢は B のみに絞られるので、pH や色について考えるまでもなく、答えを導くことができます。後から、確かに生成物側に H⁺ があるということは pH が低下しているな、そして I₂ が I⁻ へと変化しているから色の変化があるはずだな、と納得することで、見直しもできます。
この手の問題は必ずと言って良いほど特に Chemistry の Paper 1 で出題されますが、よく考えると I~III の中で一つでも誤った内容を特定できれば回答できてしまうのです。他にも誤答を排除するテクニックは色々見出だせると思うので、MCQで答えが絞り切れない問題があっても、そのようなテクニックを駆使して得点の期待値を上げていきましょう!
なお、稀に Physics Paper 1 で問われることがある内容なのですが、πの2乗は 9.86 … となり、g = 9.81 に近い値となることを覚えておくと便利かもしれません。Paper 1 ではおおよその値が求まれば選択肢から選ぶことができるので、g=10 といった具合に近似して計算するのが常套手段となります。
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