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#14 IB試験で成功するテクニック(2)

皆さんこんにちは!
前回の記事ではIB生に向けて試験で成功するために行えることのご紹介を始めたのですが、筆記用具の説明だけで終わってしまったので、今回はその続きという形になります。しかし、今度は paper ごとの問題を解く順番と時間配分についてのご説明だけでかなりの長さになってしまったので、続きは再び次の記事に持ち越させていただきます。もう IB Final が始まってしまうにもかかわらず、「IB試験で成功するテクニック」を完結させられておらずすみません…

前回に引き続き今回の記事では学力や知識量とは無関係に、試験のときに自分が持っている力をより引き出す工夫を挙げています。そのため、試験でのパフォーマンスを高められるとは言っても、暗記していないと解けないはずの問題が突然解けるようになるなどといったことは起こりません。本質的に学力や知識量を身につける、いわゆる「試験対策」に関しては、こちらの記事をご覧ください!

なお、科目ごとに方針が異なる点もあり、自分自身が受けていない科目(SL/HLの違いも含む)や paper についてはカバーできていません。しかし、方針が共通する点もあるはずなので、参考になりそうなところはないか考えながら読んでいただけると幸いです。


問題を解く順番と時間配分

Language A Paper 1 (SL)

Japanese A や English A の Paper 1 では、初見の非文学テクストを分析してエッセイを書くことが求められています。HLでは提示された二つのテクストを両方分析する必要があるため、それぞれのテクストに費やす時間をうまく配分しなければならないのですが、SLではどちらか一方を分析してエッセイを仕上げることになります。つまり、SL生には分析するテクストを自分で選択する権利が与えられているということなのですが、裏を返すと選択肢があることで迷ってしまい、無駄な時間を費やしてしまうこともあります。確かに、自分に合ったテクストを選ぶことは納得のいくエッセイを仕上げるために重要ですが、書きたかった内容が時間内に書ききれないことが一番もったいないので、Reading Time が終わる頃にはどちらのテクストでエッセイを書くか決め、試験時間開始後も悩み続けることがないようにしましょう。

また、良いエッセイを仕上げようと考えるあまり、試験時間前半でじっくり分析したり、丁寧に文章を練りすぎたりして、終盤で時間が無くなってしまうことを防ぐために、事前に時間配分を計画しておきましょう。例えば、Reading Time の間にテクストに一通り目を通して明示的なメッセージをつかみ、アウトラインを試験開始後15分以内に仕上げる、といった感じです。そのうえで、何分以上経過したら絶対に次のステップに進む、というタイムリミットも設定しておきましょう(これは先生からいただいたアドバイスの一つです)。結論まで一通りのエッセイの型が完成していないと、構成で大きく減点されてしまうので、特に結論は終了〇分前には何が何でも書く、と決めておくことも重要です。毎回時間ギリギリに何とかエッセイを締め括っていたので人のことを言える立場ではないのですが、5分くらい猶予を残してエッセイを完成させ、校閲までできると理想的です。

Math AA Paper 3 (HL)

Math AA HL の Paper 3 は2つの大問によって構成されていて、一連の investigation を誘導付きで行うスタイルが特徴です。Mock 以前の定期試験では扱われないという背景もあり、多くの方があまり慣れない paper だと感じていると思いますが、正直あまり Paper 3 の対策に時間を割いたり、点数が伸びないことを心配したりする必要はないと考えています。なぜなら、下に示しているように、Math AA HL の成績評価において Paper 3 が占める割合は他の二つの paper に比べると低いうえ、過去問をはじめとする練習用の教材が少ないからです。Group 4 の科目と違い、Paper 3 だからと言って他の paper と異なる範囲から出題されるわけではないため、Paper 1/2 の対策を続けることが結果的に Paper 3 に向けた最も合理的なアプローチとなるので、past paper を一通り解く以外は特別何かしなくても良いと思います。

Fig 1. Math AA HL における各 paper の比較

上に書いた内容から言えるのは、Paper 3 の正攻法を見出すのは難しいため、逆にこの記事で紹介しているように本番でうまく得点を伸ばす工夫が重要になってくるということです。そもそも Paper 3 は恐らく時間内に解ききれる前提で設計されておらず、発想が必要な問題はいくら考えてもなかなか思いつかないこともあり得ます。そのため、比較的 Math AA に自信がある方でも決して全部解き切ろうとするのではなく、引っ掛かった問題はすぐに飛ばす構えが非常に大切です。個人的なおすすめとしては、大問が二つあるため、一つの大問に対して answer booklet を一つ使用し、大問1で詰まったら大問2へ、そちらも詰まるところまで進んだら再び大問1へ、と解き進める方法です。Reading Time で大問2のほうが自分と相性が良さそうだと感じた場合は、そちらから解き始めるのも有効なテクニックです。また、終盤の問題のほうが難しいとは限りませんし、前の小問を飛ばしても解ける小問がいくつかあるので、比較的楽に得点できる箇所を取り逃さないことがポイントです。実体験として、練習の時に初めから全部解き切るつもりで取り組むと逆にうまくいかず、本番ではひたすら解ける順に問題を解いていったら気付いたら完答していた、ということがありました。もう一度強調しますが、Paper 3 は多少点数が低くても他の paper でカバーできますし、飛ばし飛ばし取り組んだほうが結果的に高得点が見込めるため、完答は目指さないほうがむしろ正解です(去年の November Exam は偶然問題が易しめだったのだと思います)。

Math AA Paper 3 における Reading Time では、もちろん全体像を把握し、解きやすそうな問題に目星をつけるなど、他の paper の Reading Time にも共通する時間の使い方は重要ですが、それ以上に案外設問をよく読むことが大切です。スタイルの特性上、Paper 1 や Paper 2 に比べて状況の説明や文字の定義など、文章量が多くなっており、時間を意識すると読み飛ばしてしまいたくなるのは分かりますが、Reading Time を活用してしっかり読むようにしてください。これは、どのような設定で問題が進んでいるのか把握することがスムーズに流れに乗るうえでかなりカギとなってくるからです。どのみち Reading Time 中は手を動かして色々な解法を試してみることはできませんし、Paper 3 に関しては頭の中だけで処理できる問題は少なめだと思うので、試験時間を問題文の読解に奪われてしまうのがもったいないと感じる方こそ、この時間をうまく活用して試験開始までに設問の背景を理解しておきましょう。

Math AA Paper 1/2 (HL)

Math AA の Paper 1/2 は Section A/B の二部に分かれており、それぞれが大体半分ずつの比重となっています(時間配分も半々くらいがちょうど良いと思います、欲を言えば Section B と見直しに時間を残すために Section A を一時間切るくらいで解ければベスト)。Paper 3 とは異なり、試験時間内に解ききれるような設計になってはいますが、特に後半の大問にかけて難易度の高いものも現れるため、無駄な時間を費やさずにある程度のペースで解き進めなければいけません。これを実現するうえでも、Reading Time の活用が重要になってくる paper です。

具体的に Reading Time では、まず一通りどのような問題があるか把握しましょう。過去問演習を積むことで慣れてくれば、さらっと目を通しただけでどの解法を使ったら良いのか、概ね見当がつくようになると思います(これが目指すべき理想の形です)。そこからは人それぞれだと思いますが、個人的には最初の問題から順に頭の中で答案を作成していく作戦で Reading Time を活用していました。こうすることで、試験開始直後から頭の中に既に出来上がっていた答案を紙面上に落とし込んでいけば良いことになるので、スピーディーなスタートダッシュを切ることができ、Reading Time 中には到達していなかった問題もその勢いを保ったまま解き進められるからです。出だしの調子の良さは重要だと思うので、まだ自分に合った Reading Time の使い方を模索中の方は参考にしてみてください(もう確立済みの方は、あくまでこれは一つの考えなので気にしなくて大丈夫です)。

基本的に、Paper 1/2 は最初から順番に解いていく方針で問題ありません。Section A に関しては大体難易度順に大問が並んでいるため特にそうなのですが、案外慣れていない形式の問題が出ると戸惑ってしまうこともあるので、必要があれば無理に粘らずに潔く大問を飛ばしてしまい、また後で帰ってくるという戦略が有効です。Section B に関しては、可能ならば引き続き順番に解き進める方針で良いのですが、最後のほうの大問(あるいは大問内の小問)にかけて難しくなるというわけではないため、必要に応じて Paper 3 同様に解きやすい大問まで飛ぶなどといった工夫を凝らしてみてください。

Physics/Chemistry Paper 1 (HL)

Group 4 の Paper 1 は Reading Time のない MCQ形式となっており、大体 topic の順に出題されます。特に Physics は試験時間が足りなく感じることが多いので、最初からトップスピードで先へ進めていきましょう。Chemistry に関しても、引っ掛けが多いので、もったいない失点を防ぐためには見直しが欠かせません。その際に、理想的には自分がどの答えを選んだか知らない体で(バイアスのない状態で)もう一度問題と向き合い、同じ結論に達するか確認したり、異なった解き方で答えを検証したりできるとミスを見落としにくくなりますが、そのためにもやはり早く解き終わるに越したことはありません(ただ、ゆっくり確実に解く方が自分に合っている、という場合はこの限りではありません)。

Physics ではシラバスの最初のほうで扱う topic が uncertainty や kinematics (運動学・力学)で、Chemistry では stoichiometry が最初の unit となっています。これらはどれも比較的シンプルなので、Paper 1 の最初の数問は得点源となるのですが、意外とここに落とし穴が潜んでいます。どういうことか説明すると、これらの topic は計算が必要となることも多く、引っ掛けがある問題もよく出題されるので、試験開始直後に急いで解こうとするとミスが生じたり、解法は分かっていても想定以上に時間を消費してしまい、焦りにつながるリスクもあります。逆に少し先の問題には、単刀直入に知識を問うものも含まれており、それらは見た瞬間に答えを出すことができるはずです。Math AA Paper 1/2 の説明でも書いたように順調な滑り出しを実現するには、あえて序盤の問題を飛ばし、即答できる問題を処理していくのも有効な戦略です(特に Physics ではこの戦略が大変重宝しました)。

また、Physics/Chemistry の Paper 1 で分からない問題に遭遇した場合は絞れるところまで選択肢を除外していき、あとは潔く勘で解いてしまうのが得策です。これらの paper では特に、暗記していないとどうしようもない問題も見られるため、長らく考えたからと言って正解にたどり着ける確率が大きく上がるわけではありません。当てられるかどうか分からない賭けに時間を割くくらいなら、見直しを入念に行い、もったいない失点を無くしたほうが良い点数につながります

Physics Paper 2 (HL)

これまでに紹介してきた paper と Physics Paper 2 の大きな違いは時間の捉え方だと思います。この記事では何度も繰り返し試験時間が限られていることを強調してきましたが、逆に Physics HL の Paper 2 は試験時間が2時間15分もあり、正直長く感じます(Math AA HL Paper 1/2 は2時間でも短く感じますが)。順調に回答できれば時間を持て余すことになりやすいのですが、裏を返すとこれだけ長い時間集中力を保つには持久力が必要ですし、意識してタイムマネジメントをしないとのんびり解きすぎていたことに終盤で気付き、焦り兼ねません。一つの対処法として、試験冊子のページ数を基にいくつかのチェックポイントを自分で設定し、大まかな通過目標タイムを立てる、というテクニックもあります。

Physics に関しては、Grade Boundary が低い傾向にあることも特徴となっています。例えば、自分自身が受けた November 2022 の Physics HL は scaled mark(max 100)で65以上獲得できれば7がもらえました。これを加味すると、苦手な分野の大問で時間を浪費してしまうくらいなら大胆にその箇所を飛ばしてしまい、他の問題を見直しまで一通り完了してから、終盤で暇に感じる頃に戻ってきてみる、という作戦も視野に入れられます。基本的な姿勢として、既に書いた無理に解くよりは見直しを優先することであったり、隠れている簡単な問題を逃さないことは Physics Paper 2 に対しても言えます。特に、Physics HL の最後のほうの topic は内容的には比較的複雑ですが、問われることは限られており、past paper で演習を積んでいれば楽に回答できる大問が一番最後に登場することもあるので、最後まで集中力を切らさずに取り組みましょう

Chemistry Paper 2 (HL)

こちらに関しても Physics Paper 2 と同様なことが言えますが、Chemistry は Physics ほど Grade Boundary が低くなく、時に7を獲得するのに必要な得点率が8割を超えることもあるため、安易に大問を放棄するわけにはいきません。時間的には大きな問題はないと思いますが、見直しの分も考えて、余裕を持って解き終えられるペースを目指しましょう。November 2022 の Paper 2 は極端に大問1が長く、1時間近く経過してもまだ大問2に入れていなかったため、焦ってペースを上げたところ、結果的にある程度時間が余ったという記憶があります。後で確認してみたところ、大問1は8ページもあり、合計で 30 mark 以上と Paper 2 全体の1/3以上を占めていたのに対し、見開きで 8 mark しかない大問もありました。このように、Chemistry(Physics も)の Paper 2 は大問ごとにページ数や配点に大きな偏りがあったりすることにも注意してください。

なお、Chemistry Paper 2 の mark scheme を確認してみると分かると思うのですが、点数を稼ぐうえで重要なのは文章ではなくキーワードです。極端な話、図や箇条書きで回答してもキーワードが含まれており、内容が伝われば点数は来ます。一つ一つ丁寧に文章を練って回答していると時間もかかりますし、手も疲れてしまうので、mark scheme を参考に何が求められているのかを把握し、簡潔な答案を心がけることをおすすめします

Geography Paper 1/2 (SL)

Geography の Paper 1/2 はどちらも short response の問題と、まとまった文章あるいは essay が求められる問題の両方を含んでいます。基本的な方針としては、short response を素早く片付けてしまってから、essay などに残り時間をたっぷり投入するのが良いと思います。Essay などは、もう少し付け足したほうが良いかなと考えてしまい、切り上げるまでに時間がかかってしまうことで、他の問題を解く時間が圧迫されてしまい兼ねないからです。

Paper 1 に関しては、essay が点数的に半分を占めており、時間的には恐らく大半を essay のほうに割くことになると思います。試験中にどの問いで essay を書こうか迷っていると非常に無駄な時間になってしまうので、Reading Time 中に選ぶのは終え、頭の中で可能な限りアウトラインを発展させていくようにすべきです。Geography に関しては特に、Reading Time 中にただ問題を眺めるだけでなく、頭の中でどんどん答えを練っていくようにすることで、試験時間はひたすら自分の答えのアウトプットに集中できます。記述不足を避けるためになるべくたくさん書いておきたい、という思いを実現するためには時間との勝負となるため、Reading Time もペンは動かせないだけで試験時間の一部だと捉え、本格的に頭を働かせましょう。

個人的に Paper 2 で行っていた工夫として、Reading Time 中に infographics の読解を終え、最初に "state" などの一瞬で答えられる問題を終わらせ、一通り頭から(解きやすい・自信のある順に)問題を解いてから、最後に infographics についての長めな response を書く、という順序だてが挙げられます。細かい順番に関しては人それぞれで当然ですが、回答が短くて済むものから長くなりそうなものの順に解くのが最も効率的だと思います。

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