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職場のマリー・アントワネット


自分の人生に影響を与えた漫画を3つ選べと言われたら、「ベルサイユのばら」は必ずいれる。

小学生の頃友達に貸してもらったベルばらに衝撃を受け、夢中で読んだものだった。数年後もう一度読み返したくなり、近所の書店で愛蔵版を取り寄せて、いまだに大切に持っている。


「ベルサイユのばら」は私が説明するまでもない超有名名作大河歴史ロマン少女漫画。
1972年から1973年にかけて連載され、その後宝塚歌劇団で舞台化、アニメにもなっている。
骨太な歴史漫画であるにもかかわらず、華麗な衣装お姫様抱っこ壁ドン顎クイなどなど、少女漫画的胸キュン要素もばっちりおさえているのがベルばら。いや、むしろ元祖壁ドンがベルばらだと言われている。
数年ごとに思い出しては読んでいるが、毎回号泣してしまうので何か泣きたいことがある時は、ベルばらを読んで思いっきり泣いてすっきりしている。(泣くって精神衛生上とってもいいみたいですね)

主要登場人物の一人、フェルゼン伯爵はスウェーデン人でフランス王妃マリー・アントワネットの恋人。さらに男装の麗人オスカルからも片思いされるイケメン貴公子だ。もちろんベルサイユの貴婦人からもモテモテ。
原作漫画にはフェルゼンについて次のような記述がある。

ベルサイユの数々の舞踏会でフェルゼンは

当時ベルサイユに滞在中の外国人の中では最も好意をもって上流階級にむかえられる

ひかえめで無口でおだやかで かといってけっして陰気ではなく人間味にあふれた男らしいフェルゼンに

ベルサイユの若き貴婦人たちは胸をときめかせてうわさ話に花をさかせる

彼に熱心なラブレターをおくる人妻もあったほどである


漫画にはベルサイユにおけるフェルゼンの、それ以上の具体的なモテモテぶりは記されていない。
ところが、アニメにはフェルゼンのモテっぷりを表す具体的な会話シーンがあった。(うろ覚え)

ベルサイユで貴婦人たちに囲まれ、楽しく会話しているフェルゼン。

貴婦人「ねえねえフェルゼンさま、スウェーデンでは夜でも太陽が沈まないって本当ですの?」

フェルゼン「ええ本当ですよ。しかし、そのせいで住民が寝不足になったという統計はありませんがね!」


フェルゼン、白夜に絡めた渾身のスウェーデン・ジョーク
貴婦人たち、ばかうけ。

どこの国でもご当地ジョークをスマートに繰り出せるイケメン外国人はモテるようだ。


ベルサイユのばらといえば、職場にまるでマリー・アントワネットのような女性がいる。
同僚の木村さん(仮名)は長身でロングヘア―の似合うコケティッシュな美女だ。育ちの良さがにじみ出ている上品な佇まい。お話し好きで愛されキャラ、ちょっと世間知らずなところもかわいい。

彼女と私は少し変でマニアックなものが好き、という共通点もあって話がよく合う。

いつか我が家にある某映画会社のスターカレンダーの話をしたらものすごく気になってしまったようだ。
「1月はだいたい着物を着た大物女優ですね。所々に若手アイドル・イケメン・中堅俳優なんかを挟んで、7月あたりは浴衣の似合う人。9月にお色気担当タレントを入れて、12月は毎年○○(ベテラン大物俳優)です。」
私が説明すると木村さんの頭の中はカレンダーでいっぱいになってしまった。
「うちの売場のカレンダーを作りたい!」
と言い出し、
「1月は▢▢さんで、4月は△△さんがいいわね!7月は浴衣の えさん。12月は‥‥‥‥ああ、なんて楽しいんでしょう!素敵!」
と止まらなくなってしまった。

我が職場のアントワネットさまとお話しするのはとても楽しいが、仕事が全く進まなくなるのが困りものだ。


木村さんも私も背が高いので、先日なんとなく身長の話題になった。

今は長身の木村さんだが、彼女、小学生の頃は常にクラスで一番身長が小さかったのだという。
朝礼などで背の順に並ぶ時、必ずやらされる「前へ倣え」。両腕を前に90度上げて、前の人との間隔を空けるあの前へ倣えの時、一人だけ両手を自分の腰に当てるのが一番前にいる最も背の小さい人だ。
私は学生時代は常に後ろから2番目くらいの背の高さだったので、あの腰に手をやるポーズ、選ばれた人みたいで羨ましく、ちょっとやってみたいと思っていた。
ところが、実際一番前で散々腰に手をやってきた木村さんは言う。
「もう前へ倣えが屈辱で屈辱で……。ずっとちびだったから、背が高くなりたくて仕方なかったんですよ。」
アントワネットさまがそんな辱めを‥‥。
自分は物心ついてからずっと背が高かったので、背の小さい人がそんな思いでいたとは想像もできなかった。
木村さんの場合は3月生まれで、単純に他のクラスメートより遅く生まれたから、というのもあったのだろう。中学生くらいからぐーーんと背が伸びて、あっという間に後ろから数えた方が早い身長になったらしい。

数年前の忘年会では、小柄な女性社員Sさんが金髪ロングウェーブのかつらをどこからか買ってきてオスカルになりきり、両脇をデカい木村さんと私がお花を持って固めるというベストバランスな配置で、ベルばらアニメの主題歌を3人で踊りながら熱唱。

貴族なのにエコバック片手に歌うSさん。自分がオスカルなのに「オスカ――――――ル!!!」と腕を伸ばして絶叫。

木村さんはアントワネットさまなので品よく微笑んでいる。

私は誰だ、ポリニャック伯夫人か?




楽しかった。



何のオチもない文章になってしまったが、何を言いたいのかというと、
「ベルサイユのばら」は若い方や男性にもぜひ読んでいただきたい名作であるということなんである。

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