少林寺木人拳で奇跡をおこせ！
子供の頃、地元に今は無き「○○東映」という東映の映画館があって、ときどき東映まんがまつりを観に行った。
「東映まんがまつり」はアニメや特撮ヒーローものが数本まとめて上映される子供向けのオムニバス映画で、アニメキャラやヒーローのオールスター勢ぞろい感とフェスティバル感がはんぱない、子供にとっては異様にテンションの上がる映画であった。映画館に連れて行ってもらえるというイベント感が、また気分を盛り上げる。
1975年、1976年あたりは観に行ったような記憶がある。
1975年の「これがUFOだ！空飛ぶ円盤」、内容覚えてないけど、おもしろそう。当時UFO流行ってたんだよな。
東映まんがまつりも卒業した頃、○○東映でジャッキー・チェン主演の「カンニング・モンキー/天中拳」が上映され、姉と観に行った。同時上映が「伊賀野カバ丸」で、カバ丸の原作漫画が好きだった私と、ジャッキーファンの姉の利害がピタリと一致したのだ。
しかし、両作品のB級映画感はすさまじかった。
「天中拳」は、いやいやいや、こんなこと絶対言ってないでしょ！としか思えない字幕のオンパレード。ジャッキーのキレキレのアクションに被せ、「友達の輪拳！」「一本でもニンジン拳！」などの、当時の流行りを無理やり詰め込んだ、寒すぎる台詞が満載。
「伊賀野カバ丸」は千葉真一さん率いるジャパンアクションクラブ（JAC）総動員映画。原作をなぞってはいるものの、要所要所で出てくるストーリーとは全く無関係の超絶アクション。そしてラストの千葉ちゃんのおいしすぎる登場の仕方。JACによるJACのためのJACの映画、伊賀野カバ丸。
○○東映からの帰り道、姉と何を話したか、記憶は一切ない。
当時はテレビでジャッキー映画を放映することも多かった。
そんなテレビで観たジャッキー主演映画の中で、私が一番好きなのがこれ。
「少林寺木人拳」
※※※ネタバレ注意※※※
殺された父の敵を討つため、少林寺で修業する口のきけない青年ジャッキー。ある日洞窟の中で鎖につながれた囚人と出会い、少林拳の奥義を伝授される。修行を終えたジャッキーは、少林寺を出る最終試験、木製のからくり人形が襲い掛かる【木人路】に挑む‥‥‥。
「少林寺木人拳」は1976年制作の初期ジャッキー・チェン主演映画。日本公開は1981年。
シリアスなストーリーで、ブレイク後のジャッキー映画のような笑いはなく、アクションの派手さもあまりない。
しかし、普通の青年が修行を積み、徐々に強くなり、やがて父の敵と対峙するさまは、若き日のジャッキーの情熱と重なり、見る者の胸を熱くする。初々しいジャッキーとまねしたくなる修行の数々は必見だ。
この映画、個人的に日本公開版で見るのが断然お勧め。
なぜならば、香港公開版にはない日本オリジナル主題歌「ミラクル・ガイ」が聴けるから。
どわぁ～～～～ん！！
銅鑼の音が響き渡り、少林寺の幹部（高僧）が見守る中、最終試験会場・木人路に入るジャッキー。
両脇には鎖につながれた木製の人形がずらりと並んでいる。一番手前の木人にジャッキーが手を触れた瞬間、一斉に動き出す木人たち。
この、オズの魔法使いのブリキの木こりみたいな形をした木人たちを見た瞬間、
「これ倒すの、簡単じゃね？」
「どうやって動かしてんの？」
「中に人入ってね？（小声）」
などなど、さまざまな疑問が湧くが、そんなことはどうでもいい。どうでもいいのだ！
流れる「ミラクル・ガイ」のかっこよさに心をゆだねてほしい。
ゆけ今こそ ゆけはるかに
風の行方は 誰も知らない
大地を蹴って 追いかけるのさ
コバルトの地平線燃えつきるまで
You’ ve Got The Miracle
You’ ve Got The Miracle
奇跡をおこせ 今その腕で
You’ ve Got The Miracle
You’ ve Got The Miracle
嵐をおこせ 今その胸に
木人はめちゃくちゃ強い。線香が燃えつきるまでにジャッキーは木人路を制覇できるのか!?
木人にボコられ、地面に伏せれば踏みつけられ、非常脱出口がチラつくジャッキー。だが、ここであきらめるわけにはいかない。
You’ ve Got The Miracle ！ジャッキー、奇跡をおこせ、今その腕で！
師匠の「攻撃と同時に防御を忘れるな」という言葉を思い出し、徐々に挽回するジャッキー。鍛え上げられたジャッキーの肉体とアクション。木人の列が乱れ、もはや着ぐるみたちとたわむれてる人みたいになってるが、ジャッキー、遂に木人を撃破し、見事木人路制覇を成し遂げる！
この木人と戦うシーン、心を燃え上がらせる名シーンだ。「ミラクル・ガイ」の熱い歌詞に背中を押されるように戦うジャッキーの姿に、何度見ても目頭が熱くなってしまう。
その後、少林寺を下山したジャッキーの前に現れた父の敵は意外な人物で‥‥‥。
ここからはぜひ実際に「少林寺木人拳」、ご覧いただきたい。