スイートショート
アラザン国の物語
チョコレート爆弾にはご注意を!というビラがアラザン国の街中で撒かれた。チョコレート爆弾は危険だ。俺みたいな不良にだってそれくらい分かる。
「チョコレート爆弾ってなんだ?」
俺は親しい友人に聞く。
「向こうの世界のテポドンぐらいの威力があるとかいわれてるすっげー危ないもんらしいぜ」
マジかよ。隣の国のティラミスは数十年間も独裁体制を敷いていていつアラザン国に攻めてくるか分からない。
「ティラミス国がチョコレート爆弾の開発に着手したのが七年前だからな。アラザンもクラッカー帝国も今までティラミス国に煮え湯を飲まされてきたからな…」
友人が苦々しい顔をしながら言う。
チョコレート爆弾はアラザンもクラッカー帝国も持っていない。
「ティラミスの国民は国王を神のように崇拝していて誰も逆らえん。わしらもティラミスの人間と話した事があるが国王が国民の前に姿を見せることは
滅多にないそうじゃ」
俺のじいちゃんもよくティラミスの政治や歴史について教えてくれた。
今のティラミス国の国王は三代目で初代の祖父である国王よりも厳格で恐ろしい人物らしい。つまり独裁者なのだ。
クラッカー帝国とスプモーネ国が冷戦状態の時代にはティラミスはまだなかったはずだ。アラザンとティラミスが登場するのはずっと後のことである。
スプモーネ国の支援を受けてティラミス国はクラッカー帝国から独立した。
時の権力者であるティラミス国の初代国王はスプモーネが連れてきた司令官らしいのだ。詳しいことは分からない。
スプモーネ国の科学者がティラミスに派遣されてチョコレート爆弾の開発に加わったといった噂もあったが真相は闇の中だ。
ティラミス国からのスパイにはご注意を!のビラも数年前には街中で撒かれていたらしい。
平和が一番だ、と俺は心の中で思った。
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