あなたは世界を知らない。知っていたとしても、「本当の」世界は知らない。 ー『ファクトフルネス』

相次ぐ交通事故、火災、大雨、地震。世界を見渡せば、紛争、暴力、貧困。
ニュースを見ていると、「世界はどんどん悪くなっている」と思っちゃいますよね。

でも本当に「世界はどんどん悪くなっている」んでしょうか?
というか、そもそもそんな疑問すらもたないですよね。ぼくはそうでした。
この本を読むまでは。

情報社会を生きる中で、情報リテラシーの大切さをどれだけ説明されても、新しい知識を授けても、わたしたちは世界を正確には把握できていないのだと、著者のハンス・ロスリングは言います。

でも、なぜ?なぜ正確に把握できないのでしょう?
インターネットで検索すれば、国際機関がまとめた正確な情報がいますぐに見られます。テクノロジーが発展する前の社会ならまだしも、現代社会に生きていても正確に把握できていない、その理由は?

ハンス・ロスリングは「本能」という言葉で、世界を正確に把握できない理由を説明しています。大昔の人間が生き延びるために必要だった本能が、現代社会のわたしたちの、世界を認識する力を歪めてしまっています。
そして本書は、わたしたちは本能による思い込みで、「世界を現実よりも悲観的に見ている」のだと進んでいきます。

世界は、わたしたちが思っているほどドラマチックではない

ハンス・ロスリングは「本能」を、「10の思い込み」という言葉と実際のデータ、そして自身の研究経験をもとに掘り下げていきます。
わたしたちは、この「10の思い込み」により、世界を「知っている」のではなく、本当は印象に流されているだけなのかもしれません。

1. 分断本能(物事や人を2つのグループに分けたがる)
2. ネガティブ本能(ポジティブな面よりも、ネガティブな面に注目しやすい)
3. 直線本能(グラフが直線を描くと思い込む)
4. 恐怖本能(めったに起きないのに、頻繁に起きていると思い込む)
5. 過大本能(ひとつの実例を重要視してしまう)
6. パターン化本能(ひとつの実例だけで、全体を特徴づけてしまう)
7.  宿命本能(本当は少しずつ変化しているのに、変化していないと思い込む)
8. 単純化本能(問題の原因と対策を、ひとつだけに絞ろうとする)
9. 犯人探し本能(単純明快な理由を見つけたくなる)
10. 焦り本能(「今すぐ決めろ」と急かされると、くだらない間違いをする)

例えば、「分断本能」。
「田舎」と「都会」。
「現金」と「キャッシュレス」。
「男」と「女」。
「金持ち」と「貧乏人」。
「ローランド」と「それ以外」。
グループ分けは、物事を整理するときには便利ですが、使い方を間違えると、中間にいるはずの多くの人々を見失ってしまいます。

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それから「ネガティブ本能」。
悪い出来事ばかりニュースになるのはなぜ?「今日は交通事故がゼロ件でした」というニュースがあってもいいのでは?
ニュースに切り取られた場面は、全体の一部を必要以上に拡大した描写である可能性はないだろうか?

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一見すると悪くなっているように思えてしまう世界も、正しいデータを集め、正しい見方をすれば、少しずつよくなっていることに気がつけます

もちろん世界の端から端まで、すべてが好転しているはずもなく。悲劇がいまでも続いている、起きている地域もあります。
ただしハンス・ロスリングはそれを無視していいと言っているのではありません。「世界を正しく見よう。悲劇的に大げさに捉える必要はない。それが正しい支援へとつながり、正しい成長を促す」と言いたかったのだと思います。

地味でゆっくりとしたものであっても、確実な進歩を認めることで、世界の捉え方は大きく変わる。世界には、希望が持てる。そんなメッセージを受け取った気がします。

世の中をファクトフルに捉える

まとめると、ファクトフルネスとは、

・自分の考えに合わない事実を大切にする謙虚さ
・まちがいをキッカケに興味をもち、新しい知識をどんどん受け入れる好奇心
・情報だけでなく、情報の受け手である自分自身をも批判的に捉えられる認識力

です。恐れずにさらに一文にまとめてしまうと、

緊張が高まっても、本能に流されず冷静に考え、誰もが納得できる道理を言葉で表現しようとする勇気

でしょうか。

悪いのは世界ではありません。
わたしたちの「世界をドラマチックに捉えようとする本能」なのです。

この本能に気がつければ、世界はもちろん、身のまわりのものの見え方だって変わってくるはず。





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