もう楽にして、、、3
「もう楽にして、、、」
美穂ちゃんが言った。
美穂ちゃんが信頼していると言っていた、とても落ち着きのある看護師さんが、スッと美穂ちゃんのそばに寄り、2人は目で会話をしていた。
看護師さんが美穂ちゃんの手を握る。
美穂ちゃんは、二度、頷いた。
その様子を、静まり返った病室で、みんなが見守っていた。
別の看護師さんが、痛み止めと、少し眠れる薬をいれますね。と説明をしてくれた。みんな、頷いた。
美穂ちゃんの瞳が薄い茶色に輝き、一瞬見開いたかと思うと、静かに閉じていった。
美穂ちゃんの足首をさすりながら、美穂ちゃんの名前を呼びながら。
寝息を立てる美穂ちゃんを、ただ見守った。
どこにもいかないでほしい。
もう、苦しませたくない。
それは相反すること。
何を願えばいいのか、神様なんていないのに。神様が、どうにかしてくれるわけでもないのに。
このまま、眠ったまま、ずっとここにいて欲しい。私たちもここから出ずに、一生ここでこうして過ごしていたい。
母の思考が停止していた。
「もう楽にして、、、」
その言葉が、全てなんだと、受け入れる。
私たちは、語らなくても、そう感じた。