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もう楽にして、、、

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姉の最後を、私個人の想いで書いたものです。 記録のような。 読んだら辛くなる方もいらっしゃるかもしれません。 だから、お察しいただければ幸いです。
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#家族

もう楽にして・・・   1

もう楽にして・・・ 1

仕事中に、八重ちゃんからの電話が鳴った。

出なくても、何となくわかった。

「美穂ちゃんの意識が朦朧としてるから、今すぐ来て」

パソコンの電源を落とす。上司に簡単に説明をし、旦那に連絡を入れ、そのまま岡崎の緩和ケア病院へ向かった。

会社を出てから着くまでの1時間半、最短時間を検索しながら、心は空っぽのまま。

昼過ぎに病院に着いて扉を開けると、美穂ちゃんがこちらを向いて微笑んだ。

「手を握

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もう楽にして・・・   2

もう楽にして・・・ 2

酸素のぶくぶくする音が、テレビの音に聞こえると言って笑った。えー、聞こえないよ と答えると、漫才してるみたいじゃない?と言った。

そんな事を繰り返しながらも、苦しそうな時間がどんどん溜まってきているのを感じた。

思わず「痛い?」と聞くと、美穂ちゃんは真っ直ぐに私の目を見つめて黙って頷いた。

その目は、何かを訴えているみたいだった。

私は何も出来なかった。どうしてそんな事聞いてしまったんだろ

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もう楽にして、、、3

もう楽にして、、、3

「もう楽にして、、、」

美穂ちゃんが言った。

美穂ちゃんが信頼していると言っていた、とても落ち着きのある看護師さんが、スッと美穂ちゃんのそばに寄り、2人は目で会話をしていた。

看護師さんが美穂ちゃんの手を握る。

美穂ちゃんは、二度、頷いた。

その様子を、静まり返った病室で、みんなが見守っていた。

別の看護師さんが、痛み止めと、少し眠れる薬をいれますね。と説明をしてくれた。みんな、頷いた

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もう楽にして、、、4

もう楽にして、、、4

「もう楽にして、、、」

美穂ちゃんが静かに眠りに入る。

長く、短い時間。

薬が切れ、美穂ちゃんがみんなの名前を叫びながら、首を激しく横に振った。

泣き叫ぶ声。

私の記憶も、途切れ途切れになる。

病院から向かった葬儀場では、すでに控え室に母と義兄と甥っ子が座っていた。

父の時と同じ部屋。何故だか懐かしく思えた。

何もかもが慌しく過ぎていった。

出棺。

美穂ちゃんの好きだったスター

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