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CONFLICT-2

 毎日の出来事にただただ必死になっていると、自分の視野がとてつもなく狭まっていることにふと気付く。あれ、わたしこんなにもがいて、どこに向かってんだ?そうだ、南へ向かわなきゃ。そうやって我を取り戻す。
 
 貪欲になっていると、自分の欲に疲弊してしまうことがある。そんなとき、本当の幸せとは"無欲の極地"にあるのでは?と考える。いや、無欲とは、何も感じなくなることだ。何も感じなくなれば、きっと私たちは感情を失い、生きる希望を見失う。そうならないためには、感じたくないことも感じなきゃいけない。日々を生きていく中で生まれる負の感情から逃れてはいけないのだ。

 負の感情は全てが悪いものではないと思う。大切なもの、守りたいものがあるからこそ生まれる苦しみや悲しみが沢山ある。それらを私たちは自らの船に乗せて、ゆっくりと進んでいく。南へ、南へと、そこに辿り着くために。船が重くなるほど、スピードはゆっくりだ。オールを漕ぐ手にも力が入る。それは果てしなく続く苦しみに思えるだろう。そして、そこに辿り着いたときに初めて、今まで乗せてきた荷物全てを降ろすことができる、解放されるのだ。そのときの達成感は、如何なるものか。
 もし、何も乗せずに進めばきっと船は早くそこへ辿り着くのだろう。何も感じず、ただ必死に漕ぎ続けて、そこに着く。そして、何事も無かったかのように船を降りる。そこには何の達成感もなく、降ろす荷物もなく、ただそこには、何もない地が広がっている。

誰にも言わない/宇多田ヒカル


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