記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

【感想文第4回】これは、罪を背負った騎士たちの物語。『劇場版Fate/Grand Order神聖円卓領域キャメロット』前後編を見た感想を語りたい。

こんにちは、ぎらりょうです。

本日取り上げるのは、「劇場版Fate/Grand Order神聖円卓領域キャメロット」。

ゲーム「Fate/Grand Order」内の1シナリオを劇場版化させた映画で、前編と後編の二つに分かれています。
ではなんでこの映画を取り上げることにしたのか。
それはちょうど5/15が後編の公開日なのです。
そしてぎらりょうがTwitter上で見ている、いくつかの信頼できるアカウントからこの後編がとてつもなくいい出来だ、という口コミを発信されているのを見たからです。

実は、前編はスルーしてたのです。
というのもゲームで攻略済み、わざわざ見なくてもいいかな……って感じで考えていたのです。
そしたら後編公開日当日、たまたま上記の口コミを見たのです。
それなら見てみるか。
そう思ってまず前編を見ました。
そしてすっかりストーリーを忘れていたので、ゲームと同じところで号泣。
そのまま映画館に飛んでいき、凄いものを見て帰ってきました。
あの映像はぜひたくさんの人に見てもらいたいなという一方で、少し注意事項があるので前半はネタバレなしでその辺を解説。
そして後半にネタバレを含む感想を書いていきます。

【追記】
後編の新PVがあったので置いときます。

前編の作画が合わなかったという方もこのPV見て心躍る!ってシーンがあったら是非どうぞ。
だいたいそういうシーンがガンガン続きます。


ではまず注意事項ですが、映画自体はゲームをプレイしている前提で作られているようで、主人公周りはほとんど説明がありません。
なのでここでは少しでもスムーズに鑑賞できるよう、覚えている範囲で事前知識を書いていきたいと思います。
と言ってもどこから書くべきなのか……

とりあえずこの映画の事前知識用・Fateシリーズの特徴について。
すごく簡単に書くので型月の者は生暖かい目で見てください。

Fate世界観
世界観としては魔術師が存在する世界。
この世界には古今東西の英霊を「サーヴァント」という使い魔として召喚し、目的を遂行する魔術があります。
サーヴァントを召喚した魔術師は「マスター」と呼ばれます。
マスターは召喚したサーヴァントを使役する「令呪」という3回使える魔術を持ちます。
この令呪によってサーヴァントの能力を上げたりすることができるのです。
また、サーヴァントはそれぞれの逸話を基にした「宝具」という、いわゆる必殺技を持っています。
サーヴァントは召喚された時点でその世界の知識を得るので、例えば戦国時代の織田信長を現世で召喚しても、ちゃんと環境に順応してくれます。
大元の部分はとりあえずこれくらいを知っておけば問題ないでしょう。

「Fate/Grand Order」世界観
次に「Fate/Grand Order」の世界観について。
この世界はある存在により人類の歴史が燃やされます。作中では「人理焼却」と言われています。
その中で唯一生き残ったマスターと組織により、人類の歴史を取り戻す「人理修復」と呼ばれるミッションを行うことになりました。この組織は作中では「カルデア」と呼ばれています。
人類の歴史を守るため、古代ローマや産業革命期のイギリス、開拓時代のアメリカなど様々な時代や場所を転々として戦うのです。

登場人物
では登場人物について。
まずは人類最後のマスター、男性の藤丸立香。
そしてそのサーヴァント、大きな盾を持つマシュ・キリエライト。
なおマシュは特殊なサーヴァントであり、英霊の魂を体に宿して使役する「デミ・サーヴァント」と呼ばれる存在で、とても簡単に言えば人間と英霊のハーフです。
このふたりが人理修復のため、歪みが生まれている時代にタイムスリップし、そこでキーアイテムとなる「聖杯」を獲得して歪みを無くすというミッションに立ち向かうのです。
そしてあと二人。
映画だとほぼ顔が出ない、現世からのガイド役・ロマニ・アーキマン。
そしてこの映画で大活躍、絶世の美女レオナルド・ダ・ヴィンチちゃん。
……ん?ダ・ヴィンチちゃん?
美を追求し、体現する存在だからね。気にするな。
とりあえずこの4人を知っておけば大丈夫です。
あとの登場人物は作中で説明が入るので。
あ、でも一応Wikiですがアーサー王物語のページは貼っときます。
この映画はアーサー王物語の要素・円卓の騎士が重要なので。
Wiki上部の人物一言だけでも見てればとりあえず大丈夫なはず。

長くなりましたが、要は「戦うヒロインとサポートする主人公が世界を救う話」です。
そのうえでネタバレにならない範囲の感想を前半で語ります。

あ、その前にもう少し注意事項。
まずは原作勢に向けて。
え、残念ながら俵藤太さんと百貌さんはカットされています。残念。
え、じゃあシナリオどうなるの!?となるかと思いますが、そこは劇場版としてアレンジされています。

次に前編について。
評判を知っている方は分かるかと思いますが、前編は評価が割れてます。
この原因としては前編公開の少し前に公開された「Fate/HF」との比較があるからなのかなと考えています。
Fate原典の映画化ということでとてつもないクオリティに仕上がったHF。
そこと比較してしまうとどうしても前編は見劣りしてしまうのは否めません。
また、ゲームシナリオでも長かった章の映像化を前後編の3時間に収めようとしているため、駆け足気味という印象も確かにあります。

ですが、そんな評判を聞いていたので覚悟して見ましたが、あくまでぎらりょう的感想としては「全体的に悪くなく、ある部分は完璧だった」という評価となりました。
作画が崩れたとかもありませんし、声が棒読みとかももちろんありません。
効果音もよく音楽もいいので特に気にならなかったですね。
ある部分とは……前編を見ればわかると思います。
もちろん人によってはその演出方法が解釈違いとなることもあるとは思いますが、ぎらりょうとしては解釈一致だったのでそこを見ただけでおつりが来たな、と感じました。

上記を踏まえたうえで見るかどうかを決めていただければと思いますが、それでも推せるくらいの魅力がこの映画にはありました。

映像美
まずは圧倒的な映像。
特に後編なのですが、Fate世界観の部分で説明した「宝具」の映像化が素晴らしい。
これを見るためだけに2000円払っていいと思えるくらいの、素晴らしい映像化でした。
これはネットで見つけた言葉ですが、後編のクオリティを上げるために前半は色々とセーブしていたのではないかと言われるほど、すべてのリソースが注ぎ込まれているその映像を見るためだけでも劇場の大スクリーンで見る価値があると思います。

ストーリー
そしてこの映画のメインキャスターである円卓の騎士の一人ベディヴィエールが辿る運命も、素晴らしい魅力を持っています。
彼が立ち向かった運命は、ゲームをプレイした時にもぎらりょうの涙腺を破壊してくれましたが、この映画ではその道のりをしっかりと描いてくれたと思います。
そのほかの登場人物たちの苦悩や決断も、物語に彩を与えてくれます。
前後編両方見た感想としては、むしろこの大量の要素をよくぞ拾って繋げて形にしてくれたなという想いを持ちました。

しかしやっぱり一番推したいのは現在公開中、後編の映像を劇場のスクリーンで見るということにつきます。
前編で離れてしまった人にすらおススメできる映像を、一人でも多くの方に知ってほしいのです。
劇場を出るときには「すごいものを見た……」となる期待ができるものとなっています。
なかなか外に出ることがはばかられる昨今ですが、感染対策をしっかり行ったうえで見に行っていただけるとこの記事を書いた甲斐があってとても嬉しいです。

それではネタバレなしの前半はこれまで。
後半からはネタバレありで語りますので、ぜひ見てからまた帰ってきてくださいね。





【以降ネタバレ】






いやーーーーー、映像に大満足。
前半を読んでいただいたら分かるかと思いますが、本当に映像が最高でした。
円卓の騎士それぞれの宝具はもちろん、アーラシュさんの「流星一条」が個人的に最高の映像化だったなぁと思うのです。
瀕死の重傷を負ってしまったアーラシュ。
それでも藤丸たちを守るため、人理を守るために放った一撃。
劇判のピアノ曲をBGMに、他の音が一切ない映像。
これがぎらりょうの心に響きました。
まるでアーラシュを弔う鎮魂歌のようで。
ゲームだと大爆発を起こして消えるアーラシュさん。
でもこの映画では静かに、祈りのような一筋の光を天に流し、足跡だけ残して消える。
その儚さがゲームと差別化されていてとてもよかったなと、思うのです。

そして後編のとんでもない戦闘シーンの連続。
これは映画館で見て正解だったと満足できる素晴らしい映像。
ランスロットとアグラヴェインの壮絶な戦い。
オジマンディアスと三蔵ちゃんの宝具映像はもはや圧巻の出来。
あの映像には終始圧倒されました。
三蔵ちゃんがモードレッドを看取るシーンは本当に良かった。

あと好きなのは円卓の騎士に与えられた「ギフト」。
ギフト、英語の意味でいえば一般的な「贈り物」なんですけれども「(天賦の)才能」という意味もあり、実は同じつづりのドイツ語では「毒」を意味する単語でもあるんですよね。
意訳すれば、王から騎士たちに与えられたのは才能であり、呪いであるんですよね。
実際モードレッドが「これが与えられたギフト、俺たちの罰だ!」と言っていますし。
このダブルミーニング、恐らく意識して設定されたのでしょうし、そして円卓の騎士が辿る末路を考えるとこれ以上ない単語のチョイスでブルっと来ました。

だからこそなんですが、前編ではトリスタンの残酷さをもっと出してほしかったなというのが正直あるんですよね。
彼が与えられたギフトは「反転」、つまり凄惨なことをすればするほど、本当の彼は心優しい騎士だったことを証明してくれる。
その格差があるからこそのトリスタンだと思っていたので……
なので全体的にギフト要素が後半に出てきたのは、そういう部分が伝わらないんじゃないかという面で痛かったですね。

でもやっぱりこの「反転」というギフトは上手いなぁと。
ゲーム上でもクラス相性が反転するというギミックにやられましたし、劇中でもトリスタンの弱点だったはずの毒をもってトドメを刺すという、ハサンたちの意図を出し抜くことになったので本当によく考えついたなぁと尊敬の念が。

良かったといえば、ガウェイン。
ゲームではこれまで出てきた敵とは比べ物にならないくらい強く、数々のプレイヤーにトラウマを植え付けましたが、この作品でも同じくらいの怖さを出してきました。
山の翁を相手にしても心が折れることはなく、何度も何度も主人公たちを追い詰めます。
ガンガン壁ぶち破って迫ってくるゴリラみたいな姿は流石に笑いましたが。
あとゴジラでもつぶされそうな建物の崩落でも死なずに片腕で瓦礫を持ち上げるゴリr(以下略)
彼がいるときは必ず太陽が輝くギフトが、彼の命の灯を表していたのもいい描写でした。

何より円卓の騎士全員の想い。
王の計画を許容した騎士、しなかった騎士。
王に従い続けた騎士、従わなかった騎士。
そして、王の願いを聞き遂げられなかった騎士。
それぞれの道は最終的に違いましたが、王を思う忠節の想いは一緒。
その想いがぶつかるのがアツく、切ないなと感じました。

そして、ベディヴィエール。
最後に明かされる、サーヴァントではなく人間のままだったという真実。
最初にこの展開を知ったときは本当に驚き、そして不老不死の体で罪を償うために長い間さまよい続けた彼の心情に想いを馳せました。

罪を償うといえば、円卓の騎士全員が背負う罪。
王の最後に間に合わなかった罪、親殺しという罪、裏切りという罪、そして願いを叶えなかった罪。
この罪の意識と忠節というふたつの想いをそれぞれの騎士が持ち、考え、決断していく流れがとてもいいんですよね。
例え非道を行っていると分かっていても王の言葉に従い続けるガウェイン、命令は守ったがそれ以外では良心に従い最後は王を想い裏切ったランスロット、自分が侵す罪に耐えることができないと悟り目をつぶしたトリスタン、今度は最期まで裏切らないと決めたモードレッド、今度こそ王を支え切ると決めたアグラヴェイン、そして王の願いを叶えなかったケジメをつけるベディヴィエール。
それぞれの忠節がぶつかり合い、傷つけ合うしんどさこそ、このストーリーの肝なんだと思います。

そして獅子王戦。
記憶が間違ってなかったら、なんかすごく木っぽくなかったですか?
もしかしたらFGO本編の第二部にも繋がる描写なのかなと。
いやぎらりょうは1.5部で止まってるので早く進めないと分かんないですが。
でも考察の幅はまた広がったなと思います。

はい、ひとまずは1回目に見た感想を書き切りました。
まとめると本当に映像が最高でした。そして罪と忠節のストーリーに魅了されました。
でもまだまだ気づけてない要素もいっぱいあるんだろうなと思いますし、言語化できなかった部分もいっぱいあるなと感じています。
時間があれば2回目見に行こうと思っているので、その時に新しく感じたことがあればここに追記しようと思います。

それでは今回は長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

サムネイル画像
©TYPE-MOON / FGO6 ANIME PROJECT

この記事が参加している募集

サポートいただければ、執筆時にコーヒーを飲めます。