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女性起業家になった理由

 私が女性起業家になった理由はひとつだけではない。これまでに多くの経験や出会いの中で導かれて起業に至った。全ては何においてもタイミングである。起業した事業内容は、飲食店経営と酒類の製造販売を目標に、まずは会社設立というものを形であらわした。相当な覚悟と熱意そして勢いで、“株式会社衹園ビール”が設立された。

 私は、元々幼稚園教諭でした。かわいい子どもたち、温かい気持ちでいつも応援してくださる保護者の皆さま、同僚にも恵まれていました。学生の頃に、オーストラリアで保育実習や子どものいるご家庭でのホームステイなどの経験があり、いつかオーストラリアの保育現場で働きたいと願っていた。そのために初任給からお給料はほぼ貯金。幼稚園の夏休みは、ホストファミリーに会いに一人でオーストラリアへ行き、意を決して数年後にはオーストラリアへ旅立った。

 オーストラリアでは、まるで小学校に入学した時のように真新しいことだらけで、わくわくが止まらなかった。何度も観光客として訪れていたため、知り合いもおり不安はあまりなかった。小学校や保育園などに飛び込みで出向き、紙芝居を読んだり、折り紙教室をしたりした。住み込みでベビーシッターもした。たくさんの友人ができ、貴重な経験をしていく中で、色々な壁にぶつかった。間違いなく言葉の壁、文化の違い、人種差別。オーストラリアでの保育は断念。その代わりに、大自然オーストラリアならではのワイルドな生活をすることができた。一番大きな経験は、農業。この経験をいつか本にしたいと思うくらい、濃厚な日々だった。この頃はよくビールを飲んでいた。大手のおきまりのものが多かったが、ホームブリューとよばれる自家製ビールもよく目にしていたことを思い出した。いつもビールを飲んでは友人と幸せな日々を過ごしていたことが懐かしい。ただ、オーストラリアでの生活も、ビザの問題があるため、2年で帰国することとなる。

 帰国してからは、飲食や事務などをしていたが、縁があり保育士として働くことになる。子どもたちとの生活は日々の成長を感じながら、楽しさとやりがい故にあっという間に月日が経つ。気づけば、子ども達にすべての力を注ぎ、自分が本当にやりたいことが何なのかわからなくなっていた。

 そんな時に、飲食で働く機会がやってきた。飲食店での経験は、高校生のころのアルバイトを含めると、結構経験があった。みんなが楽しそうにしている雰囲気が好きだった。とはいえ、自分自身わいわいするのが得意というわけではないし、これでも人見知りもするし、口下手で話下手ではあるのだが、誰かと関わっていることが落ち着くのかもしれない。人に喜んでもらえることが好きなのかもしれない。

 私は、行動力がある方だと思うし、勉強したり挑戦したり、良くないことは改善したいし、新しい事は取り入れていきたい。ただお客さまに喜んでもらいたい、そのために改善するべきことはしたいというまっすぐな思いは、価値観の違いで受け入れられず、人間関係に悩まされることとなる。そして何度かそういう場面に遭遇する。価値観はあくまでも人それぞれで、主となる人にはそれぞれのストーリーがあって今に至るという結論で、人はなかなか変化を求めない。また、多くの経験をしている私には変化を柔軟に受け入れやすくなっているのかもしれないが、一つの事を頑張ってきた人には変化は受け入れがたいことなのかもしれないと思うようになった。それであれば、自分が主となるしかない、そう思い始めていた。

 そんな中、世界中をコロナが襲う。飲食の世界は暗い闇の時代になった。自分が主となるどころではなかった。それでも私は本当に恵まれていることに、保育の経験を活かして行政のお仕事に携わることになる。まさか行政で働くとは思ってもみなかったが、大変学びの多い経験になり感謝でいっぱいだ。労働環境や人間関係について、これまでの経験とは違い教科書通りの美しさという表現が正しいのかわからないが、とにかくきちんとしていた。今までで一番多い従業員のいる職場だったが、恵まれた職場環境というのはこういう事なのだな、とこれまでを振り返ると言葉がでなかった。人間関係においては、人それぞれなので合う合わないもあるし、苦手な人もいたが、仕事に差し支えることは1度もなかった。普段から、会議などで教育がなされているからだ。コンプライアンス研修なども経験し、労働環境の大切さなどを学んだ。労働環境がよければ、人間関係も悪くならない、そう感じた。

 まだコロナの落ち着きも見られない頃ではあったが、友人と息抜きに出かけたことがあった。それが、クラフトビール醸造所との出会いだった。そこから、クラフトビールの製造に興味をもっていた。もちろん、簡単にできることではなさそうだし、やりたい理由が明確ではなかった。だが、興味がわいてから、造り方を勉強したり、クラフトビール関係の方と出会ったり、面白いように多くの情報や意見を聞くことができた。興味をもっていることを友人に話すと、応援してくれた。むしろ喜んでくれることさえあった。やってみたいなという気持ちを徐々に膨らましていった頃、女性起業家セミナーがあることを知った。京都市が行うもので、安心感もあり、おもしろそう、何か学びになるかもしれない、今後いつかのためになるかもしれない、という気持ちで参加をすることにした。

 女性起業家セミナーでは、起業するための濃厚な内容が短期間で学べた。学びだけでなく、専門家や仲間、先輩起業家など多くの人との出会いがあたったことが本当によかった。全6回という中で、1回目から勢いのある内容で、起業についてどんどん考えるようになった。最終回では、プレゼンテーションがあり、私の題目は“クラフトビールの製造”について思いをぶつけてみることにした。もうこの頃にはクラフトビール製造に向けて起業したい思いは強くなっていた。緊張の中、クラフトビール製造をなんでしたいのか、どんな理念をもっていくのか、どう経営していくのか発表した。見事、オーディエンス賞という賞をいただき、自信につながった。そこから3ヶ月ほどで法人設立することになった。

 起業するまでに多くの人との出会いや経験を繰り返し、温かい気持ちで応援してくれる人がいるから今があります。本当に感謝の日々です。まだ今は、準備期間でこれから目標に向かっていくわけですが、多くの人の喜びにつながるように一生懸命頑張っていきたいとおもいます。


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