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人生に伏線をばら撒いていく

「伏線回収」

映画でも漫画でも小説でも、終盤に大きな伏線回収があった時の興奮は半端ない。

あの時のあの発言に、こんな意味があったのか!
あの描写が、こんな場面に繋がるなんて!

そんなシーンは、誰もがお好みの展開でしょう。

個人的な好みで恐縮なんですけど、意味がありげなシーンを後から種明かしするよりも、何気ないシーンが後々意味を持ってくるパターンが好きなんです。

「アイシールド21」における、ヒル魔の40ヤード走のタイムのように。
「へうげもの」における、明智光秀の辞世の句のように。

キャラクターたちの営みや小さな積み重ねが想像しなかった意味を持つ瞬間、物語がうねりを上げます。

溜めに溜めに溜めに溜め、そして解放する。
その時の快感を、カタルシスと呼ぶらしいです。

「この世界の予定調和は、終わりを告げつつあるようだ。」

突然ラノベのタイトルような文章を書いてしまい頭バグったかと思われるかもしれませんが、そこから夢もクソもない話に繋げる事を許して下さい。

良い大学を出て、良い会社に入り、家族を築き、年齢と共に出世していく。
そんなモデルケースが崩壊し、世の中の不確実性が増していくのが、僕たちの世界の明日らしいんですよ。

上司や先輩の背中を追い、組織の論理に従えば、そこそこの幸せと平穏とが手に入る。
そんなプレイスタイルが通用しない世の中が、もう来ているっていうんです。

なんとまあ、嘆かわしい事ですよね。

誰かの辿った道を歩むという生存戦略では、生き残れない。

それならそうと、最初から言ってくれれば良いのに。
義務教育をくぐってきた僕たちは、自分の目標を自分で設定する事に慣れていません。
少なくとも僕は、「与えられる」人生を送ってきたのが正直なところです。

「ありきたりな人生」という物語の主人公だったのに、突然ストーリーテラーが筆を投げてしまった。
どうしたらいいか露頭に迷えるほど、この新展開は悠長ではないらしいんですよねー。

目線を変えましょう。

「進撃の巨人」も「HUNTER×HUNTER」も、”先が読めない物語”が僕たちを強烈に引きつけます。
いつか来るであろうカタルシスを求めて、何気ない描写にも最新の注意を払っていく。
霧の中を進むような時間は、開放の瞬間に向けた溜めの時間でもあります。
事実僕たちは、そのモヤモヤした時間も楽しんでいますよね。

だとすると、同じロジックで人生の不確実性も楽しめるのではないでしょうか?

ポイントは、”伏線回収”。

先が見えていようがなかろうが、僕たちは日々汗を流し働いて、日銭を稼がねばなりません。
そんな苦労の日々が大きな成果に繋がると、その瞬間のカタルシスは相当のものです。
人生をかけた伏線回収、さぞや気持ち良いでしょう。

だけど、その瞬間が人生の最後だとすると、少し伏線回収が遠すぎます。
物語の読者は、そこまで我慢強くないんです。
長い霧の中で読者は振り落とされ、途中で物語を投げかねません。

だから、小さなカタルシスを散りばめるんです。

手段として、週刊連載の漫画家が良く使う手法、「伏線を取り敢えずばら撒く」でいこうと思います。

どうなるかわからない人生、何が伏線として繋がるかわからない。
…そこを逆手に取ろうじゃあありませんか。

『学生時代の部活の経験が、社会人になり仕事に活きた。』
『全く異分野の知識が、自分の専門分野での気づきに繋がった。』

そんな経験は、大なり小なり誰にでもあるはずです。
これも読者目線になれば、立派な伏線回収。

だけど、部活動に全力を出していた時、数年先の仕事での展開を見込んでいたでしょうか?
神経の伝達機能についてネットで調べる時、自分の業務との繋がりを意識したでしょうか?

その瞬間の熱中や好奇心が、後から結果として成果につながった。…そんなケースが大半だと思います。

部活も、仕事も、読書も、漫画も、旅行も、出会いも。
全てが伏線になるかもしれないし、ならないかもしれない。

だからこそ、散りばめる事が重要です。
仕込む伏線の数を増やす事で、回収の可能性を高めていく。
後から振り返った時に、あれはこの時の伏線だったのか!!とカタルシスを得るために。

もちろん、柱になる何かを持つことは重要です。
生涯かけて取り組む命題があり、それに向けて全力を注げる人生は、その時点で幸福です。
何より時間という有限のリソースを無駄なく集中させられるのは、最強になる条件の一つだと思っています。

だけど、不確実性に備えて人生に「遊び」の部分を持つことだって、立派な生存戦略になりうるのではないでしょうか?

今この瞬間では、さして意味がないかもしれない。
だけどどこかで、何かに繋がるかもしれない。
そんな曖昧で不確実な積み重ね。

努力ではないんだから、だからこそ楽しめるところから始めればいいんです。

何に繋がるかは度外視で、興味と好奇心のままに、貪欲かつ柔軟に経験を貪っていく。
瞬間瞬間に全力を注ぎ、後からヒーローインタビューで自信たっぷりに語ってやりましょう。

「あの時の経験が、今の自分に繋がったんです。」(どーん!!)

余談。

色んなことに手を出したものの、結果回収に至らなかった伏線については、どうしたらいいでしょうか。

そんな時は、大いに笑ってやりましょう。
詰まるところ、人生を喜劇にするのも悲劇にするのも、主人公の自分自身なんです。

それにほら、この文章も、結局何の伏線回収もしていないのだから…。

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