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私の強みは字が綺麗な事です!〜事務屋のスキルを考える〜

比較的年次が上の方と飲みに行く機会が多いのですが、ある時当時の部長さんとサシで飲んだことがあって。その時新人時代のエピソードを伺ったんですね。

その頃はパワポもエクセルもなく、会議資料は全て手書き。新入社員だった部長さんは、なんと「字が綺麗」という理由で「清書係」に抜擢され、経営会議の報告資料や議事録を毎日夜中までコツコツ清書していたそうなんです。なんとまぁ、非効率の極みというか、時代を感じる話というか…今思えば滑稽な話だね、なんて、酒を飲みながら語っていました。

笑い話、あるいはおっさんの与太話。ですが部長さんは、資料の清書を通しながら報告資料の中身をじっくーーりと読み込んでいたんです。イントラネットもろくに整備されず、今以上に情報がクローズだった時代。清書と言う雑用を通じ、資料の作り方や文章の組み立て、更にはコンフィデンシャルな経営情報を同期に、あるいは先輩にすら先駆けて入手していました。「字が綺麗」という一見取るに足らないスキルによって、その年次では到底得られない情報のアクセス権を手に入れていたのです。

このエピソードの学びは2点。

1つ目は、『スキルや長所はそれそのものの価値に満足せず、次のチャンスや経験につなげるテコにするもの』という点です。カッコいい言い方をすると、「スキルを元手にレバレッジを効かせる」とでも言いましょうか。

強みを活かしチャンスを勝ち取り、その中で普通では得られない知識や経験を手に入れ、それを元手にさらに飛躍していく。継続的な成長には、まずなにか取っ掛かりになるスキルがある方が効率・伸び率の両面からベターなのです。

2つ目は、『スキルはすぐに陳腐化する』という点です。

就職面接で、「字の綺麗さ」を強みとして高らかに語った方はいるでしょうか?(書道ガチ勢は除く)時代の変化に従い、当然求められるスキルは変化し、過去のスキルは気にも留められなくなっていきます。

また、当然のことながら、部長さんが今現在「字の綺麗さ」を武器にする、なんて事はありません。自身のキャリアの中でも必要なスキルはどんどんアップデートされていき、かつての「強み」すらやがて不要な物にすらなり兼ねません。

「字が綺麗」というとどこか冗談っぽいですが、これを「Excelのスキル」「パワポの資料作成」、あるいは「TOEICの点数」「簿記三級」に置き換えてみるとどうでしょうか。Excelがめちゃくちゃ早くなった瞬間、あなたの世界は変わりましたか?TOEICでハイスコアを取った瞬間、あなたのキャリアはバラ色になり爆発的に成長できましたか?…そうじゃなかったはずです。

スキルや資格の必要性は全く否定しません。むしろ取っ掛かりとして重要です。ただ大事なのは、それをテコにして何を手に入れるか?です。この観点を失い小手先のノウハウばかり追っても、道を拓くことは出来ません。スキルは手段であり、チャンスを掴むためのチケットなんです。どう切り拓くかは自分次第。だからこそ仕事は面白い、とも思うのですが。

…ちなみに、僕がその部長さんに褒められた「強み」は、『二次会での注文のセンスが良い』です。そこからどうやってレバレッジを効かせるべきかはいまだに思案中なので、みなさんこれからも一緒に悩んでいきましょう。

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