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日本における死刑制度の是非 CA

「記事」

近年、日本でも死刑問題への関心が高まり、刑事法学上最も重要な問題となっている。
世界を見ると、国連では1989年に死刑廃止条約が採択され、1991年には効力が発生している。それから20年ほど経過した時点で、死刑廃止国は世界の3分の2以上の140カ国になっており、2022年現在の死刑の適用状況は、世界の死刑判決数や死刑執行数を見ても顕著に減少傾向にある。
また、EUでは死刑制度の無い世界を目指す取り組みを推進しており、EU基本権憲章には「何人も死刑に処されてはならない」との規定が存在している。

歴史を見ても、2002年に第13議定書で「戦時を含む全ての状況における死刑の完全廃止」を規定して以降、EU加盟の条件として死刑廃止を義務としており、欧州評議会と力を合わせて、全世界的な死刑廃止制度に取り組んでいる。
一方、日本国内を見てみると、1989年11月から3年4ヶ月にわたって死刑の執行がない状態が続いたが、1993年3月に再開されて以降、断続的に執行されている。再開された当初は大きな社会的反応を引き起こす事で死刑廃止論が高まったが、オウム真理教事件等を契機に、積極的な死刑存置論が主張されている。

死刑問題は、実践的な正確を有し、存置論と廃止論という基本的な対立を避けては通れない問題として存在している。
上記を見ても分かるように、世界全体を通して現在進行形で死刑制度を廃止する試みに取り組んでいる。
だが一方で、日本では死刑制度に賛成という意見が多数であり、およそ8割もの人々が死刑執行に対して賛成の立場をとっている。
その為、ウクライナ侵攻のような世界と歩幅を合わせるような内容とは違い、世界のマイノリティになりつつある現状だ。

これらの背景を踏まえ、本立論では日本における死刑制度に対して反対の立場をとる。

「意見・論点」

1. 死刑制度の犯罪抑止効果が認められていない。
国連からの委託により、「死刑と殺人発生率の関係」に関する研究が、たびたび実施されているが、科学的な研究において、「死刑が他の刑罰に比べて効果的に犯罪を抑止する」という確実な証明がなされた事は一度もない。また、再犯の可能性が懸念される犯罪者は出所出来ない。
 
2.  冤罪の可能性がある。
人が人を裁く以上、ヒューマンエラーが存在する為冤罪が無くなることはない。冤罪による死刑を無くす為には死刑を無くす選択をとる必要がある。
 
3. 倫理観における問題
死刑囚を殺す刑務官の倫理上の罪が存在する。殺害という命を奪った行為に対する死刑の求刑とはすなわち命の等価賠償である。であれば、死刑囚を殺す刑務官の罪はどのように償うのか。

「予想される反論・再反論」

1. 殺された被害者の家族や親族に対しての気持ちをくんだ配慮としては不十分ではないか。(命で償うべき)
→ 日本人の意識形成の根本に日本の恥の文化が存在している事実が存在。死は何も生まないが、生きている事によって活用方法が考えられる。
2. 加害者である殺人者は死刑囚で無い限りは刑務所で過ごすことになるが、その際刑務所の運営資金は国民の税金によってまかなわれている。死刑でない場合、殺人者に対して税金で生活させる事になるが、無意味ではないのか。
→ 更正プログラムに対する税金は日本社会の治安を守る為に必要なコスト。
3. 重い罰(死刑)がある事で人の犯罪意識に対しての制御が働くのではないか。(凶悪な犯罪が増える懸念)
→ 死刑制度の犯罪抑止効果が認められていない
4. 殺人者が刑務所から出てきた際に再犯を犯す可能性が大きいのではないか。
→ 1犯目に殺人事犯を犯した者の場合,その後の再犯に及ぶ者の比率は16.7%であり, うち同一事犯である殺人事犯の再犯を有する比率は0.9%

「参考文献・URL」

死刑制度のゆくえ ―刑事法学研究連絡委員会の活動からー
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tits1996/3/4/3_4_56/_pdf/-char/ja

第7編 特集-再犯者の実態と対策(殺人者の再犯率)
untitled (moj.go.jp)

法務省:犯罪白書 (moj.go.jp)

日本の死刑の抑止効果 ―3つの先行研究の計量分析の再検討 森 大輔
KLaw0148_344-416.pdf

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