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114) フィチン酸(イノシトール-6-リン酸)は有害ミネラルを排出する

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術114

ミトコンドリアを活性化して体を若返らせる医薬品やサプリメントを解説しています。

【地中海料理の健康作用にフィチン酸も重要】

国によってがんの種類も心臓病の発症率も異なります。この違いは食生活にあることは多くの研究者が認めています。それでは、どのような食事が良いかということになります。一般的には、「精製度の低い穀物、豆類、ナッツ、野菜、果物を多く摂取する」、「肉と動物性脂肪は少なくする」というのが健康的な食事のコンセンサスです。このコンセンサスに合った食事として地中海料理があります。

地中海料理とは、ギリシャ、イタリア、ポルトガル、スペインなどのヨーロッパや北アフリカ諸国の地中海沿岸の料理で、植物ベースの食品(野菜、果物、全粒穀物、豆類など)や魚介類が豊富で、オリーブオイルをふんだんに使うのが特徴です。適量の赤ワインを飲むことも心血管リスクの低減に関与していると言われています。
 
地中海沿岸地域の人たちは、このような食生活のおかげで心臓病による死亡率が低いと言われています。地中海式食事ががんやアルツハイマー病などの神経変性性疾患のリスクを減少させるという研究結果も出ています。
地中海式食事は、果物や野菜からの広範囲の抗酸化物質、ポリフェノール(レスベラトロールなど)、ポリアミン(スペルミジンなど)の摂取、および魚介類の中程度から大量の摂取が特徴です。
 
オリーブオイルも大量に摂取します。オリーブオイルにはポリフェノール類、フラボノイド、リグナンなどの抗酸化作用や抗炎症作用やがん予防効果を持った成分が豊富に含まれます。

地中海式食事の健康作用の理由として、一般にオリーブオイルと魚油の寄与が大きいと考えられています。魚油に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などのω-3系不飽和脂肪酸、オリーブオイルに含まれる一価不飽和脂肪酸のオレイン酸と、ポリフェノールやトリテルペンなどの成分が、相乗的な健康作用を発揮すると考えられています。
オリーブオイルと魚油の他に、フィチン酸 (イノシトール-6-リン酸) も地中海料理の健康作用の主要な食品成分であることが指摘されています。フィチン酸は全粒穀物や豆類に多く含まれ、地中海料理ではフィチン酸の摂取量が多いことが特徴です。


図:地中海料理は全粒穀物、豆類、ナッツ、野菜、果物、魚介類、オリーブオイルが多い。魚介類はDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などのω-3系不飽和脂肪酸やアスタキサンチンが含まれ、オリーブオイルに含まれる一価不飽和脂肪酸のオレイン酸やポリフェノールなどの成分が健康作用を発揮する。野菜と果物に多く含まれるポリフェノールやカロテノイド、全粒穀物や豆やナッツに含まれる食物繊維やフィチン酸も地中海料理の健康作用の主要な要因となっている。



【イノシトールとイノシトール-6-リン酸(フィチン酸)】

イノシトール(Inositol)は6個の炭素からなるシクロヘキサンの各炭素上の水素原子がヒドロキシ(OH)基に置き換わった構造の物質で、生体内でブドウ糖から生合成され、生体成分として広く存在し、特に穀物の糠(ぬか)や豆に多く含まれています。細胞成長に必要なビタミンB群の一種と考えられており、抗脂肪肝作用が知られています。食品添加物として使用が認められています。


このイノシトールの6個のヒドロキシ(OH)基が全てリン酸化されたのが、イノシトール-6-リン酸です。イノシトール-6-リン酸は別名フィチン酸と呼ばれ、組成式は C6H18O24P6 で、IP6と略記されます。穀物の糠や種子など多くの植物組織に存在する主要なリンの貯蔵形態です。


穀物の糠には、イノシトール-6-リン酸(IP6)がマグネシウムやカルシウムと強く結合(キレート)して存在します。マグネシウムやカルシウムとキレートした状態(フィチン酸のカルシウム・マグネシウム混合塩)をフィチン(Phytin)と言い、水に不溶性です。米ぬかにはフィチンが10%以上含まれています。


図:イノシトール(Inositol)の6個のヒドロキシ(OH)基が全てリン酸化されたのがイノシトル-6-リン酸(Inositol Hexaphosphate)で、フィチン酸とも呼ばれ、IP6と略記される。IP6はカルシウムやマグネシウムと結合した「フィチン」という形態で、穀物の糠や種子に多量に含まれている。



【イノシトール-6-リン酸は金属イオンとキレートする】

キレート(chelate)という言葉は、ギリシャ語の「カニのはさみ(chela)」から派生した言葉で、分子の立体構造によって生じた隙間に金属を挟む姿から命名されました。
 
カニのはさみのように物質を挟み込むことを「キレート化する」と言います。このようなキレート化作用のある物質は様々な健康作用があり、病気の治療にも用いられています。

フィチン酸には、リンや陽イオンを貯蔵する機能があります。鉄は生体内で酸化的損傷を引き起こすことが知られています。鉄によって生成されたヒドロキシルラジカルは、細胞または脂質の酸化を誘発することによって酸化的損傷を引き起こします。
 
一方、フィチン酸は鉄をキレート(結合)して、ヒドロキシルラジカルの産生を阻害し、それによって細胞の酸化を防止します。この機能は、食品加工の分野でも利用され、食品加工中に発生する活性酸素による食品の酸化を防ぐ目的でフィチン酸が利用されています。

フィチン酸を多く含む食材は、豆類、穀類、ナッツ類などの植物種子ですが、その大部分はフィチン(フィチン酸のカルシウム・マグネシウム混合塩)の形で存在します。
 
米ぬかに多く含まれるフィチンから、マグネシウムやカルシウムなどの金属イオンを除去して精製したイノシトール-6-リン酸(IP6)がサプリメントとして使用されています。イノシトール-6-リン酸(IP6)は強いキレート作用をもち、金属イオンと強く結合します。
 
玄米を多く食べるとカルシウムや亜鉛や鉄などのミネラルの吸収が妨げられてミネラル不足になると言われているのは、米ぬかに多量に含まれるフィチン酸がこれらの金属(ミネラル)と結合(キレート)して吸収を妨げるためです。
 
また、サプリメントとして販売されているIP6が体内の有毒なミネラルの排泄促進に役立つ根拠も、その強いキレート作用によります。


図:イノシトール-6-リン酸(フィチン酸)にはカニのはさみのように物質を挟み込む作用があり、これをキレート作用という。イノシトール-6-リン酸のヒドロキシル基(OH基)部分のマイナス電荷とカルシウムイオン(Ca2+)やマグネシウムイオン(Mg2+)のプラス電荷が相互作用してキレート錯体を形成する。この作用はカルシウムやマグネシウムの小腸からの吸収を阻害する。一方、細胞内のカルシウムやマグネシウムの働きを阻害する作用もある。



【フィチン酸はデトックス作用がある】

キレート(chelate)というのは、カニのはさみのように物質を挟み込むことです。このような作用を持った物質をキレート剤と言います。
 
有毒なミネラルをキレート剤で挟み込んで排出を促進する目的で使用されることもありますが、逆に、吸収されにくい必須ミネラルを挟み込んで、小腸からの吸収を促進してくれるという働きで使う場合もあります。

ミネラルは単独では吸収が悪いので、アミノ酸などでキレート化した製品が米国では主流になっています。動物では小腸の上皮細胞からミネラルなどの栄養を吸収していますが、水にイオン化したミネラルはそのままでは小腸からの吸収は極めて悪いことが知られており、アミノ酸などと結合しキレート化されることによって吸収が促進されるのです。


これとは逆に、体内に吸収された有毒な物質を体外に排泄する目的でキレート剤が使われています。米国等では「キレーション療法」という方法が有毒ミネラルを体外に排泄するデトックス療法として盛んに行われています。キレーション療法とは、金属をキレート化するEDTAという薬剤を点滴し、このEDTAが水銀や鉛などの重金属とキレート化して結合し、体外への排泄を促進して血液を浄化する方法です。

金属性の必須ミネラルも一緒に排泄されるので、不足する必須ミネラルをサプリメントで補充すれば、差し引き勘定で、有毒ミネラルが減ることになります。米国ではすでに50年以上の歴史があり、1日に数十万人が受けているといわれています。
 
点滴のキレーション療法よりもっと簡単で経済的な方法として、IP6(フィチン酸)のサプリメントが役立つ可能性が検討されています。



【IP6はウラニウムをキレートして体外への排泄を促進する】

ウラニウムのような放射線物質による放射線被曝の治療法としてIP6の可能性を検討した研究報告があります。IP6(イノシトール-6-リン酸)が放射線物質のウラニウムに対して強い結合能を持つことが報告されています。以下のような論文があります。

Inositol hexaphosphate: a potential chelating agent for uranium(イノシトール-6リン酸:ウラニウムのキレート剤としての可能性)Radiat Prot Dosimetry (2007) 127 (1-4): 477-479.

【要旨】
放射線被曝に関連した危険性を低減する方法としてキレート療法は有効な治療法である。
ウラニウムの体内取り込みに対して、今までは1.4%炭酸水素ナトリウム(sodium bicarbonate)の点滴が治療に使用されていた。しかし、有効性はそれほど高くはなかった。この研究では、ウラニウムの体外排泄に有効な物質を探索する目的で、炭酸水素ナトリウム、クエン酸、ジエチレントリアミン5酢酸、エチドロン酸、イノシトール-6-リン酸について、ウラニウムをキレートする作用を検討した。
その結果、検討したキレート剤の中で、イノシトール-6-リン酸(フィチン酸)がウラニウムに対して最も強い親和性(affinity)を示した。したがって、イノシトール-6-リン酸はウラニウムを体外から排泄するキレート剤となる可能性が示唆された。
 

ウラニウム(ウラン)は核燃料として原子力発電に利用されている元素です。原子力発電はウラニウムの核分裂でエネルギーを得ています。原子力発電所では、ウラニウムはジルコニウムという金属によって被われているため、通常はウラニウムが原子炉の外に漏れ出ることはあり得ません。
 
12年前の福島原発の事故では、原子炉近辺の土壌からウラニウムが検出され、炉心の核燃料棒が融解を起こし、ウランを含んだ水蒸気が大気中に放出されていることを意味しています。
 
ウランは体内被曝を引き起こします。原子力発電所の事故などで飛散したウラニウムは、吸入して肺から取り込まれたり、傷口から体内に取り込まれ、血中に入り、一部は尿から排泄されますが、腎臓や骨に沈着して長い期間体内被曝を引き起こします。ウランの放射能の半減期は数億年ですので、体内に沈着すれば、体内被曝は一生続くことになります。
 
ウラニウムが体内に入った場合の治療法としては、キレート剤を使用して臓器や組織に沈着したウラニウムの尿中への排泄を促進する方法があります。
ウラニウムのキレート剤として、炭酸水素ナトリウム(重曹)があります。炭酸水素ナトリウムを投与すると尿のpHが上昇し(アルカリになる)、ウラニウムイオンは炭酸水素ナトリウムと結合して複合体を作り、尿中に排泄されます。しかし、炭酸水素ナトリウムの治療の効果はあまり高くありません。
 
そこで、ウラニウムに対してさらに効果が高いキレート剤が必要です。様々なキレート剤が研究され、その効果が試されていますが、現時点で人間での効果が期待できるものはありません。
 
この論文では、イノシトール-6-リン酸がウラニウムと強く結合(キレート)することを示し、このイノシトール-6-リン酸(フィチン酸)のキレート作用がウラニウムの体外排泄の促進に効果が期待できる可能性を報告しています。
 
イノシトール-6-リン酸は天然ではカルシウムやマグネシウムをキレート作用によって強く結合しています。このような金属に対する強いキレート作用がウラニウムやその他の有害なミネラル(放射線物質も含めて)にも利用できる可能性があります。したがって、IP6を多く摂取しながら、IP6のキレート作用で不足するかもしれない必須ミネラルをサプリメントで補うというのは、放射能汚染の一つの対策として有効性が期待できそうです。



【イノシトール-6-リン酸(IP6)をサプリメントで摂取するメリット】

食物繊維の豊富な食事はがん予防効果があることが報告されていますが、その理由の一つは、食物繊維に含まれるイノシトール-6-リン酸(フィチン酸)に抗がん活性があるからだと言われています。イノシトール-6-リン酸(IP6)は抗酸化作用や免疫力増強(ナチュラルキラー細胞活性の増強)、金属に対する強いキレート作用によって、がん予防効果や美容や健康増進効果が示唆されています。

IP6(イノシトール-6-リン酸)は神経機能を正常に保つ効果があります。イノシトールは、ホスファチジルイノシトールというリン脂質の構成成分です。リン脂質は細胞膜に含まれている成分で、特に神経細胞の膜に多く存在しています。リン脂質は脳細胞に栄養を供給したり、神経の働きを正常に保つ働きを担っています。したがって、リン脂質の構成要素であるイノシトールは、神経の伝達や脳の活動を正常に保つ上で欠かすことのできない成分といえます。

IP6は穀物やマメ類に豊富に含まれていますが、IP6をサプリメントとして摂取することは幾つかの利点があります。
 
まず第一に、穀物やマメ類に含まれるイノシトール6リン酸(フィチン酸)は、タンパク質やミネラル(カルシウム、マグネシウム、カリウムなど)と結合して複合体を形成しています。これをフィチンと言います。フィチンは水に不溶性で消化管からの吸収が極めて悪いのが特徴です。したがって、食物繊維の形で摂取してもイノシトール6リン酸(IP6)は体の中にほとんど吸収されません。精製したIP6は、食物繊維中のIP6より極めて吸収が良いことが多くの研究で明らかになっています。

イノシトールは、体内でグルコース(ブドウ糖)からも合成されますが、合成量には限界があり、それだけでは十分な量とはいえないため、毎日の食事やサプリメントでイノシトール6リン酸(IP6)を摂取する必要があります。
 
脂肪肝、肝硬変、高コレステロール血症、動脈硬化症などに対して効果を得るために1日に必要な摂取目安量は500~2000mgとされています。
 
安全性については、動物実験や人間による臨床試験が多く行われています。その結果、IP-6は極めて安全で、大量に摂取した場合でも副作用は報告されていません。
安価なサプリメントとしてインターネットで入手できます。

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