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Record.162 かえるくん

こないだ、ナカムーが

『村上春樹ってどんな文章書く人?知ってる?』

と言って来たので、

"神の子どもたちはみな踊る"を差し出した。

大好きな本だけど、15年以上前に読んだからもう内容を全く覚えていなかった。

全く覚えていないくせに、

『"かえるくん、東京を救う"がおもろいよ』

と、ナカムーに偉そうに言った。

『おれ短編集好きやねん、読むわ』




その夜、"かえるくん、東京を救う"を読んだナカムーが、

『あれ、呪術の話やん!』

と言って来た。

『えっ………そうやった?(´・ω・`)?』

すっかり内容を忘れていた私は、内容を逆に教えてもらう。

『かえるくん、東京を救う』は、東京地震から人間を救うために一緒に地下にいる"みみずくん"と闘ってくれと、巨大な"かえるくん"に頼まれた男の話だ。

『かえるくんは、実ちゃん。片桐は俺やん』

と、ナカムーは笑っていた。

かえるくんの言葉がとても印象的だったとナカムーは言った。

これは、責任と名誉の問題です。どんなに気が進まなくても、ぼくと片桐さんは地下に潜って、みみずくんに立ち向かうしかないのです。もし万が一闘いに負けて命を落としても、誰も同情してくれません。
もし首尾良くみみずくんを退治できたとしても、誰もほめてはくれません。足もとのずっと下の方でそんな闘いがあったということすら、人は知らないからです。それを知るのは、ぼくと片桐さんだけです。どう転んでも孤独な闘いです

"神の子どもたちはみな踊る"村上春樹より


かえるくんが、私達の"宇宙戦争"を代弁してくれていた。

この時期に、もう一度これを読む事になったのは神様の計らいかな。

しかもお話の最後は、かえるくんが死ぬ時、体中から蟲がわいて喰われていたんだよ。

呪術やん!……(笑)

なんだか他人事じゃなくって、かえるくんにシンパシー。

かえるくんは、混濁の中に帰って行った。

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