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もし、あなたの目の前に意識がない人が現れたら?

救急救命では、BLSと、ACLSというものがあります。
ACLSは二次救命処置という意味で、医療機関などの道具が揃ったところで行います。

皆さんに知って欲しいのは、1次救命処置であるBLSです。

一般市民がBLSの心得があるかどうかで、
目の前の意識不明の方を救えるかどうかが決まります。

BLSは意識不明の人を見つけて、AEDを使い、救急隊が到着するまでの流れです。


土俵から降りてください問題


記憶に新しいのがこの話題。


日本相撲協会は、京都府舞鶴市で春巡業を行った際、土俵上でのあいさつ中倒れた同市市長の応急処置にかかわった女性に対し、土俵から下りるよう促したことを謝罪した。大相撲では伝統的に女性が土俵に上がることを禁じているが、人命にかかわる状況でそうした価値観を優先させようとするのは不適切だとの批判が噴出していた。
出典:救命処置の女性に「土俵下りて」、相撲協会が「不適切」と謝罪(CNN)


これはまさに救急救命の心得がある人が一般人として春巡業を見にきていたから助かった事例ですよね。

こんな大きな舞台だったからこそ、医療従事者がいましたが、
もっと小さな組織だったらどうでしょう?

あなたはすぐさま行動にうつせるでしょうか?


なぜ救命処置を急ぐのか


一般に心臓マッサージが1分遅れるごとに
救命率が7〜10%低下すると言われています。

倒れて10分以上経過するとかなり絶望的な数字になってきます。


もし、あなたの目の前にいきなり大切な人が倒れたら?

「救急車呼ぶしかないよね?」

しかし、救急隊が救急要請された現場に到着するまで平均8.5分かかると言われていますので、発見〜救急隊に連絡〜救急隊が到着までの流れを見ると、10分以上はかかってしまい、救命はもう絶望的です。


なので、一般市民にも1次救命処置を覚えてもらうしかないのです。

自分の大切な人の命は自分で守る術を身につけないといけません。

いつどこで、誰が倒れるかわかりません。


草野球でボールが胸に当たって、心停止した際に周りがパニクって、AEDをうまく使えていなかったという事例も聞いたことがあります。


一時救命処置(BLS)の流れ

それでは、救命の流れにいきたいと思います。


様子がおかしいひとを見つけたら、
①両肩を両手で叩いて、「大丈夫ですか?」と大きな声で尋ねる。

これで反応の有無をチェックします。両手で叩くのは、麻痺があって右半分に感覚がないことがありえるから。ここで反応がなければ緊急事態として次のステップへいきます。


②大声で周囲に助けを求める。

一人ではできることが限られます。
反応がないと思った瞬間に大声で助けを求めましょう。
あなたはその場を離れてはいけません。
次のステップに行きます。


③呼吸と脈拍を確認。

胸の動きを見て、呼吸をしているかどうかを見ます。
呼吸がない、または死戦期呼吸と言って、いびきやうめき声に似た呼吸をすることがあります。この2つどちらかに当てはまるかを見ていきます。

脈拍は頸動脈を触知して確認します。10秒以内に脈拍が確認できなければ胸骨圧迫を始めます。いわゆる心臓マッサージです。


④心臓マッサージをする。

もしも自分以外に心臓マッサージを変われる人がいなかったら、救急隊が車でひたすら心臓マッサージです。複数人のサポートがいるなら心臓マッサージを交代しながら継続します。

ポイントは、
・胸部を強く早いテンポで圧迫すること。
・少なくとも5cm以上胸骨を圧迫する。
・速さは100〜120回/分のテンポで
・圧迫のたびに胸郭が完全に元に戻るまで待つ

経験者でない人が胸骨圧迫をする場合、3cm前後の深さでしか圧迫できていないことがほとんどなのだという。深すぎる圧迫は胸部外傷をきたすが、緊急事態で心臓マッサージをしてるのに、躊躇していたら救える命も救えません。

もしも、このような緊急の場面に遭遇したら、ビビってないで強く胸部圧迫です。少なくとも5cmの深さです。

ちなみに僕の指3本分が5cmなので、
仕事中に患者さんが急変して心臓マッサージする時は、有効な胸部圧迫ができているか、自分の手をかざして評価しています。


まとめ

この記事を読んで、そんな場面に遭遇することなんて一生ないでしょ。と、思うかもしれません。
でも、もしも遭遇したらどうしますか?

野球の練習でいえば、バックホームの練習。センターからショートに中継して、ショートがバックホームをする。
この精度を高める練習をめちゃくちゃやりますが、あれって1試合で何回あるでしょうか?
下手したら1回もないかもしれません。

それでもあんなに練習するのは、失点を食い止める大事なプレーだからです。

一時救命処置も人の命を救えるかもしれない大事な処置です。

一生のうちに遭遇しないかもしれませんが、大事な人を守る護衛術として覚えておいて損はないです。


おわり。



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