詩)夜のナイフ
二つ折りの紙に冷たいナイフを入れる。きっちりと折った紙に。
まっすぐに切る。いや切りたいのだ。薄い紙は冷たいナイフに張り付く。
力を入れ冷たいナイフを動かすとナイフは意に反して少しずつ右にそれて
二つ折の紙の右側へ冷たいナイフがいく。
真っ直ぐに生きたいのだという思いとほんとうは右側にそれてしまいたいという思いが
冷たいナイフにはわかるのだ、きっと。
右にそれた冷たいナイフをもとに戻し二つ折りの紙を切る。
すうっと切れることを期待してナイフを動かすが
まるで心を読んだように冷たいナイフはギザギザに動く。
夜は深く長い。切れた紙の片一方がぶら下がり
落ちることもなく ぶらぶらと切り落とされるのを待っている。
この紙を切る意味はあるのか。
冷たいナイフは語らない。
わかってはいけない意味を
冷たいナイフがほんとうはどちらへいきたかったか
わからないふりをし続ける。
冷たいナイフは
一方の紙を無残に切り落とすと
刃先を僕に向ける。
傷をこわがって
痛みを恐れているのはだれ?と
問いかけてくる。
真っ直ぐに切らねばならない。
真っ直ぐに。
冷たいナイフを持ち直し
自分を
切り裂く
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