銀髪合法黙示録(ぎんいろアポロリプス)
シェアードワールド作品「ユア・ブラッド・マイン」の世界を舞台に、季節イベントに合わせてメンバーが書いたりしたモノを詰め込んでいくマガジンです。
当サークルが手がけているシェアワールド「ユア・ブラッド・マイン」を舞台として、サークルメンバーが書いたりした短編・掌編を詰め込んでいくマガジンです。
日を跨いで間もない頃。不意の電話に叩き起こされた俺は不機嫌そのものだった。 「あー、誰だよこんな時間に……」 横で寝ていた魔女が目をこすりながら起き上がるのを見て、自分の中の怒り感情がMAXになったことを自覚する。この子の安眠を妨げるとは七紫さんとて……まぁ状況によっては許すけど厳重注意してやる。それ以外だったら許さん。 「あー……誰ですかこんな夜中に。人としての常識をお持ちでない?」 『すみません……。常識はずれなのはわかっているのですが緊急事態でして……』
噂によれば。 二月十四日という日付に対して、「女子が好意を寄せる相手へチョコレートを贈る日」なる意味合いが付与されたのは、鉄暦にして一九七〇年代の頭頃らしい。 鉄暦初頭のなんとかいう司祭の殉教に端を発するとか、古い神の祭日に関係するとか聞くけれど、実際の所は知ったところじゃない。鉄暦末期になってもその詳細な起源が明らかになることはなかったというのに、魔鉄暦にして二十五年も経ってしまった今、始まりなど探査のしようがないから。 重要なのはこの日に件の意味合いが付与されてい
目覚まし時計のやかましい音と共に、布団の中で人の形がうごうごと藻掻くように脈打つ。そして布団の中から細い腕が伸び、音源を探すように乱暴に畳敷きを叩いた。その手が目覚まし時計を掴むと、無造作に遠くへと投げ飛ばす。時計は部屋の端にあった机の角にジャストミートし、沈黙。机の上にあった削りかけの木像らしきものが、ぶつかった衝撃で大きく揺れた。 汚い部屋だった。そこら中にビールの空き缶が転がり、机の上には乱雑に置かれた木像の数々がある。なぜか、彫り具は一切見当たらない。そして机の周
アーリーモーニングティーというものをご存じだろうか。 その名の通り早朝に飲む紅茶のことを指すのだが、どうやら私はアーリーモーニングと呼ぶにも少し早すぎる時間に目覚めてしまったようだ。 まだかすかに日が昇りはじめ、薄暗く色付いた景色を眺めながらふと昔のことを思い出す。 この学園に入学して間もない私に世話を焼いてくれた彼女はいつも私よりも先に起き、仄かな紅茶の香りと共に私を眠りから呼び覚ましてくれた。 上級生であった彼女と過ごした時間は余り多くはなかったけれど、彼女から
「望、今日がなんの日か知っているか?」 「んー?」 伝統的な木造家屋。その縁側に、一組の男女が座っていた。 一人は、年齢不相応に鍛え上げられた巨体を作務衣で包んだ総髪の男。無名異七紫。 もう一人は、学校指定の黒セーラーの上にダッフルコートをまとった銀髪銀眼の少女、無名異望だ。 二人は揃って湯呑を手に持ち、のんびりと茶を啜っていた。 時刻は朝の七時半。そろそろ学校に行く支度を始める頃合いだが、今日の彼女はすでにそれを終え、いつでも出かけられる状態だった。えらく気合が入