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【C100短編】飛んで跳ねるは不折の双翼
日を跨いで間もない頃。不意の電話に叩き起こされた俺は不機嫌そのものだった。
「あー、誰だよこんな時間に……」
横で寝ていた魔女が目をこすりながら起き上がるのを見て、自分の中の怒り感情がMAXになったことを自覚する。この子の安眠を妨げるとは七紫さんとて……まぁ状況によっては許すけど厳重注意してやる。それ以外だったら許さん。
「あー……誰ですかこんな夜中に。人としての常識をお持ちでない?」
【バレンタイン短編】姫殿下の甘い挑戦
噂によれば。
二月十四日という日付に対して、「女子が好意を寄せる相手へチョコレートを贈る日」なる意味合いが付与されたのは、鉄暦にして一九七〇年代の頭頃らしい。
鉄暦初頭のなんとかいう司祭の殉教に端を発するとか、古い神の祭日に関係するとか聞くけれど、実際の所は知ったところじゃない。鉄暦末期になってもその詳細な起源が明らかになることはなかったというのに、魔鉄暦にして二十五年も経ってしまった今、始
【バレンタイン短編】走ったからといって、間に合うとは限らない
「望、今日がなんの日か知っているか?」
「んー?」
伝統的な木造家屋。その縁側に、一組の男女が座っていた。
一人は、年齢不相応に鍛え上げられた巨体を作務衣で包んだ総髪の男。無名異七紫。
もう一人は、学校指定の黒セーラーの上にダッフルコートをまとった銀髪銀眼の少女、無名異望だ。
二人は揃って湯呑を手に持ち、のんびりと茶を啜っていた。
時刻は朝の七時半。そろそろ学校に行く支度を始める頃合いだ