仕事の上の役目で書く文章は、できれば書きたくないと思うくらい苦手。攻め方と攻め具合がわからないから。かつては攻めたい内容が、自分のステージと一致していたからいくらでも書いたけれど、この年齢になって微妙な立ち位置に立つようになって、うーしうーし泳がなくたって、いいじゃあねえかと思うようになった。 形のないものを残していくことは難しい。それこそ風が吹けばあっという間に消えてしまうから。どうせ残すんなら、ピンで胸の真ん中をさされた標本みたいなものじゃあダメで、その辺で動き回る形で残
海を見ない日も結構ある。 とはいえ、海から1キロメートル以上離れていることはほぼない。要するに、すぐそこに海がありながら、海と関係なく暮らしが成り立っている。通勤のルートを変えさえすれば、毎日海を見て暮らすことは容易い。そんなふうにしてみてもいいかなとも思うけれど、なかなか重い腰は上がらない。 ずっとずっと周りを見ずに暮らしてきて、気づいたら、いつのまにか一人になっていた。 ずっとずっと周りを見ずに暮らしてきて、気づいたら、いつのまにか季節が変わり、島の姿が変わっていた。 置
俳句をやっている。島へ越してから少しずつ遠のいてきているけれど、忘れた頃に催促が来て、催促していただけるうちが華と心得て、どうにかこうにか搾り出している。数が撃てないのでどうにもならないけれど昨年(2023年)の自選十句を選ぶとすれば以下のやうなところか。*写真はキヌサヤの花 2024.01.15 立春のものの芽のよくとんがれる 縫ひ物をまうしない母諸葛菜 ふるさとに使わぬ部屋の春障子 教室に鉢植えのある四月かな 踵三回鳴らして風の光りけり 船底にかます角材男梅雨 白南風や
黒根港を見下ろす高台に誓いの塔が立っている。島の恵みである自然を大切にして、島人の平穏な暮らしを願いつつ、この島を未来へ繋げていこうとする先人の誓いが、この塔を建てた。 近年、ことに2000年からこちら側の地震や台風などによる自然災害で、島の中は大きく変わった。かつてはもっと容易に分け入ることのできた山中も今はなかなか入りにくくなっている。山から回り込んで下った磯も、その道は今はない。 けれどそういうところへ通って島の自然を維持していこうとしている人たちもいる。または、現況を
島に戻って3年目の冬を迎えた。あいかわらず今日も吹いている。風の音しか聞こえない。 4、5日吹いて2、3日凪ぎて、吹いて凪ぎてを繰り返しながら、島は少しずつ、春に向かっていくのだけれど、さすがにこう吹いては、春に向かっている気配はまるで感じられない。 この年で島へ戻って、数年過ごすうちに、これから自分がこの島でしていかなくてはならないことや、していきたいことがなんとなく分かってきた。 これから、ここには、そんなことのメモを、少しずつ書いていこうと思う。 どこにたどり着くかはわ